Basic Japanese

Fuji-yama by Yamashita Kiyoshi

羅生門(らしょうもん)

(listening)

目 次

作品解説 作者紹介 原稿

作品と注 (1) (2) (3) (4) (5)

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作品解説

羅生門黒沢監督の作品であまりに有名になった物語だが、これはまず「今昔物語」にさかのぼる。羅城門(らじょうもん・らしょうもん)の名で平安京の時代(794年~)に作られ、台風などで倒壊し、できてから20年あまりしか建っていなかったそうだ。

都が荒れ盗賊が跋扈(ばっこ)する時代にはその内部には引き取り手のいない死体がごろごろしていたという。今昔でも、芥川でも、死人の髪を引き抜いていた老婆が盗賊に襲われる話では共通している。

きわめて短い物語だが、すさんだ世の中にうごめく加害者と被害者の一瞬のやりとりが見事に描写されている。黒沢監督による同名の作品はぜひ観ておきたい。

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作者紹介

芥川竜之介 1892‐1927(明治25‐昭和2)

芥川龍之介東京の生れ。生後7ヵ月にして母の発狂のため,その実家芥川家に養育され,幼少年期を下町の本所に過ごす。府立三中,一高を経て1916年,東大英文科を卒業後,海軍機関学校の英語教官として19年まで勤めた。

16年2月発刊の第4次《新思潮》に発表の《鼻》で文壇に登場。翌17年には第1創作集《羅生門》を刊行。短編の数々に独自の世界をひらき,大正文壇の新星となった。

その題材も《羅生門》(1915),《芋粥》(1916),《地獄変》(1918),《六の宮の姫君》(1922)など王朝の説話集に材をとった王朝もの,《奉教人の死》(1918)や《神神の微笑》(1922)のごとき切支丹もの,《戯作三昧》《或日の大石内蔵助》(以上1917)など江戸時代を舞台としたもの,《開化の殺人》(1918),《舞踏会》(1920)など明治初期に材をとった開化ものなどをはじめ多岐にわたる。さらに22年以後書き出される保吉もの(《保吉の手帳から》ほか)から《大導寺信輔の半生》(1925),《点鬼簿》(1926)などがある。

《玄鶴山房》や《河童》,珠玉の小品《蜃気楼》(以上1927)などに最後の輝きを見せ,やがて《或阿呆の一生》をはじめとする一連の遺稿の内にその作家的宿運の何たるかを語りつつ,27年7月24日未明,〈ぼんやりした不安〉の一句を遺書に残し,36年の生涯を閉じた。

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羅生門(その1)speaker

注;
  1. くれかた > 暮れ方 : 日の暮れる頃、夕暮れ。
  2. げにん > 下人 : 身分の低い者。
  3. にぬり > 丹塗り : 丹(赤土で染めた赤色の顔料)または朱(水銀を含んだ材料でつくり、黄味を帯びた赤色の顔料)で塗ったもの。
  4. すざくおおじ > 朱雀大路 : 平安京の朱雀門から羅生門までの南北に通ずる大路。
  5. いちめがさ > 市女笠 : 菅(すげ)または竹皮で編んだ笠、またはそれをかぶっている者。おもに女の商人。
  6. もみえぼし > 揉烏帽子 : 揉んでやわらかく作った烏帽子。烏帽子とはカラスの羽のように黒く塗った帽子。
  7. つじかぜ > 辻風 : つむじかぜ、旋風。
  8. らくちゅう > 洛中 : 京都の市中。
  9. きゅうき > 旧記 : 古い記録
  10. きんぎんのはく > 金銀の箔 :金や銀をごく薄く伸ばして木などの表面に塗りつけたもの。
  11. まきのしろ > 薪の料 : ”代”のことか。代わりのもの、代替品。
  12. こり > 狐狸 : 狐と狸、または悪人のこと。
  13. ひのめがみえなくなる > 日の目が見えなくなる : 日が暮れると。
  14. あしぶみをしない > 足ぶみをしない : その場所にとどまらない。
  15. しび > し尾 : 古代の瓦葺(かわらぶき)宮殿や仏殿の両端に取り付けた飾り。
  16. ついばみにくる > 啄ばむ : 鳥がくちばしでものをつついて食うこと。
  17. こくげん > 刻限 : 時刻。
  18. あおのしりをすえて > 襖の尻を据えて : 襖は”袷(あわせ)”または”わたいれ”のこと。下のほうをザブトン代わりに敷いて座っている。
  19. ひまをだされた > 暇を出された : クビになった。
  20. すいびしていた > 衰微していた : 衰えていた。衰退していた。
  21. よは > 余波 : 物事が終わったあともなおも周囲に及ぼす影響。
  22. センチメンタリズム > Sentimentalism : 感傷におぼれる態度。すぐに悲しくなったりさびしくなったりする気性。
  23. さるのこくさがり > 申の刻下がり : 午後4時ごろ以降。
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羅生門(その2)speaker

注;

  1. いらか > 甍 屋根の背
  2. ついぢ > 築土 土塀の上に屋根をふいたもの
  3. ていかい > 低徊 いろいろと考えめぐらすこと
  4. きょくしょ > 局所 ある限られた場所
  5. ほうちゃく > 逢着 でくわすこと
  6. くさめ > くしゃみ
  7. ひおけ > 火桶 丸型の木製の火鉢
  8. やまぶき > 山吹 黄色、黄金色
  9. かざみ > 汗取りの単(ひとえ)の短い衣
  10. うれえ > 患 憂鬱で心が晴れないこと
  11. ろう > 楼 高く構えた2階建ての建物、やぐら、ものみやぐら
  12. ひじりづか > 聖柄 さんこづかの剣;刀剣の柄を珊瑚(サンゴ)の形につくったもの
  13. たち > 太刀 人などを断ち切るのに使われる細長い刃物。
  14. さやばしらないように > 鞘走らないように 刀身が鞘から自然に抜け出る。
  15. やもり > 守宮 トカゲ目ヤモリ科の爬虫類。壁、天井などにいる。
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羅生門(その3)speaker

注;

  1. おし > 唖 口のきけない人のこと。現在では差別語ということになっている。
  2. ひはだ(=ひわだ)いろ > 檜肌色 ヒノキの樹皮。たては浅黄(あさぎ)の色、よこは赤い糸を用い織色。
  3. ろくぶ > 六分 全体の60%。
  4. ざんじは > 暫時は しばらくの間
  5. きゅうき > 旧記 古い記録
  6. きしゃ > 記者 筆者、著者
  7. とうしんのけもふとる > 頭身の毛も太る 不明。すっかりあることに夢中になっている状態ではないか。
  8. ごへい > 語弊 誤解を招きやすい言い方。

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羅生門(その4)speaker

注;

  1. いしゆみ > 石弓 ばねじかけで射る大きな弓。古代中国で考案された。小鳥などをとるパチンコの意味もある。「~にでもはじかれたように」というのは、大変勢いよく動いたことをあらわす。
  2. けびいしのちょう > 検非違使(の)庁 京中に平安初期からおかれた、裁判と警察を兼ねたような役、そしてその役所。
  3. にくしょくちょう > 肉食鳥 タカやワシのように肉を食べる鳥。猛禽類。
  4. けしき > 気色 ようす、ありさま、雰囲気
  5. ひき > 蟇 ヒキガエルのこと。醜く動作の鈍いものにたとえられる。

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羅生門(その5)speaker

注;

  1. しすんばかり > 四寸ばかり 12センチぐらい
  2. たてはき > 太刀帯 皇太子の護衛にあたった武官
  3. じん > 陣 詰所
  4. えやみ > 疫病 伝染病
  5. いんだ・いんでいた > 往んだ・往んでいた 行った、行っていた
  6. さいりょう > 菜料 おかず
  7. ひはぎ > 引剥 強盗
  8. よるのそこ > 夜の底 夜の暗闇の中
  9. こくとうこくとうたる > 黒洞黒洞たる 暗いことをあらわす形容詞
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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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