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無生物主語構文ー違和感を覚える形式 日本語の文は注意深く見ると、明示されているかいないかにかかわらず、すべて人間が主語になっている。「富士山が見える」の文でも話者があらわれていなくともはっきりとその存在を意識できる。「富士山が見られる」のような文は不自然で、一般には受け入れられない。これに対し英語では一つは受動態というものがあり、単なる機械的作業によって直ちに主語にもとの目的語を持ってくることができる。 英語にはもう一つの特殊な構文がある。あることが原因、理由、時、条件となって別の事柄にその影響を及ぼしてある結果を生むと、それを無生物または物主構文と呼ぶ。この名前は誤解を招きやすく、岩でも鉄でも主語であればいいと考える向きもあるが、実はそうではなく、ある原因または理由となるものが、名詞として主語の位置にあるものをいう。人間が主体でないとき、いやむしろ物事の成り行きをそのまま示したいときに、この表現方式が最も自然であるといえる。 例1
まず第一に可能、不可能の状況を示すための構文がある。人間を主語とする場合には多かれ少なかれ助動詞の助けを借りないと完全な表現ができない。「雨」だけだとか「飛行機」だけではその本人の行動がどう決定されたのかいまひとつ明らかでないからである。これに対し物主構文ではそれに用いられる動詞そのものに助動詞的意味を含んでいることが特徴といえる。 prevent 「妨げる」が不可能を表し、 enable 「できるようにする」が可能を示すことができるのである。人が主語ではさらに原因、理由を示すために前置詞や接続詞を動員しなければならない。 ところが物主構文では物事の始まり、つまり文頭に置くだけでそのことを示すことができる。このようなタイプの動詞にはほかに、 force, compel, oblige, cause, lead, leave, keep などがあげられる。これらの動詞の文型を見てみると SVOC ( C の部分は to不定詞や原形不定詞) SVOO そして SVO のあとに前置詞プラス ing形などの形を取っていることがわかる。目的語にあたるものはたいてい「人」が入り、そのあとの準動詞がその述語の役割を果たしていることがわかる。 例2
例2の文を見ると、あるまとまった意味内容が、それぞれの動詞の目的語のうしろに付いていることがわかる。このような形を取る動詞はこのほかに inform, convince, remind, tell, suggest などがある。これらは先に述べた動詞群とは違い、「動作」ではなく「情報」を伝える役割を果たしている。 最後に「移動」を示す動詞がある。 bring と take はその主語のつけかたが一風変わっている。最終的な場所は前置詞の to のうしろに来ることになっている。 例3
無生物主語を分類すると、このように3つに分けることができる。その文型は共通点が見られ、 O の部分に当事者が入ることになり、主語がすべての「発生源」となっている。このように動詞の文型を巧みに利用した物主構文は簡潔明瞭な表現が可能なのである。 否定の諸相ー日本人になじみにくいもの 英語の否定表現は日本語より豊富である。今回は日本人になじみにくい表現を中心にその多様性を一瞥してみる。 (1)否定語( no, not など)がない表現
(2)否定の副詞(句)によるもの
この最後の例のような実質的な否定を表す副詞が英語には多い。これらをたとえば「頻度表現」の中で位置づけてみると次のようになる。
(3)部分否定と完全(全部)否定 「全体」の意味を表す all, every, both が not と結びつくといわゆる部分否定になる。これは記憶しておくべきである。というのは日本語で考えると間違う場合があるからである。 The richest man can't buy everything.(どんな金持ちでもすべて買えるわけではない)のような例では常識的で間違えることはないが、 I didn't eat all the cakes. を「全部食べなかった」とすると一つも食べなかったのか、少しは食べたのかよくわからないからである。ところが英語では部分否定ということが決まっている。したがって日本語に訳してから意味を考えるのではなく、英語でまず内容を理解した上で日本語に移す必要がある。 部分否定、全部否定という文法用語も厳密に考えればおかしい。というのは通常論理的には全部の否定( not All )=部分( Some )であり、部分の否定( not Some )=全部の否定( =not Any )だから、これらの文法用語(部分否定、全部否定)は実質的内容と逆転しているわけである。こうしてみると英文法の用語はかなり感性的に用いられていることがわかる。 副詞による部分否定も重要である。使われる副詞は always, necessarily, altogether, exactly, entirely, quite, very much など。
(4)有名な not---because の例 not による否定がどこにかかるかが問題。
not は because 以下を否定している。これは She is crying not because she is sad but because she is happy. と書けばはっきりする。紛らわしいのは次の例だ。
これは「私が彼女と結婚したのは愛していたからではない」なのか、「私は彼女と結婚しなかった。なぜなら彼女を愛していたからだ」のどちらか?これは文脈(会話なら音調で)決まるが、前者は just because として文頭に移動し、後者は because の前にコンマを置くことによってはっきりさせることができる。 普段の現実の世界で用いる時制を直説法とすると、想像の世界の中での動詞は仮定法を用いる。その中でも「まだ実行に移されていないこと」に仮定法現在、「現在あり得ないこと」に仮定法過去、「過去に起こらなかったこと」に仮定法過去完了という名が付けられている。 例1
昔の英語では「雨が降るなら」という if の付いた条件文を表すときにその中に用いる動詞に仮定法現在、すなわち動詞の原形を用いたが現在では使われなくなり、そのかわり直説法の現在形や現在完了形が「未来における予想」として用いられている。だが、仮定法現在は別の形で生き続けている。それは that節の中だ。ふつう、 think, believe などという動詞のうしろには that節がついてもう一つの文章が続くが、それぞれ現実とか真実だと話者が確信していることであるから直説法、つまり現在形や過去形を用いる。expect や hope のような動詞の場合には未来のことを示しているから未来形を使うのが普通である。 例2
ところが、たとえば suggest という動詞を取り上げてみよう。これは一般に「提案する」という意味で使われている。これに that節が付くと、その内容は「提案されたこと」つまり話者が口に出していったにせよ、それが周りの人に伝えられたにせよ、「まだ実行されていないこと」が示されている。これは単なる未来や予想ではない。 例3
これらの例では常に that節の内容が原形で示されていることがわかる。英国では should も使うが世界的には米語である原形で表すことのほうが圧倒的に多い。現代における英語では、この形式を仮定法現在と呼ぶ。 例4
仮定法現在は特定の動詞のうしろの that節にだけ用いられるわけではない。 impossible, necessary, desireable のような形容詞のうしろや stipulation 「条件」との同格関係にある that節の中にも用いることがある。 例5
しかし仮定法現在でないこともある。例5では suggest は「暗に示す」、 insist は「主張する」という意味に用い、 that節の内容は「事実と思えること」だからである。同じ動詞でも内容によって仮定法を使ったり使わなかったりするので注意されたい。 例6
例6にある文に用いられている should も仮定法現在であろうか?実はそれと紛らわしいものの、別のカテゴリーに属する表現なのである。この二つの文は単に事実を述べているのに過ぎないので、普通の現在形(直説法)で gets, is と書くことは可能である。これに対し should が加わると、「・・・なのは当たり前」(1行目)「・・・なんて不思議だ」(2行目)というように、話者の判断や感情が強く入り込むようになる。これは原形で表すということはなく、英米共通に(感情強調の) should を用いる。仮定法現在と混同しやすいので注意が必要である。 仮定法現在の原形の形式は今でも新聞や週刊誌に広く用いられており、読者に単なる未来や予想ではなく、「現実になっていないこと」に注意を向けさせるため、今後も使い続けられるであろう。 冠詞について論じると一冊の本ができあがるという。専門家にとってはそれでもいいかもしれないが、英語を実用的に使いこなすことを目指している人にとってはそんな悠長なことはやっていられない。細かいことに言及すればきりがないが、 a も the も基本的な考え方が根本に横たわっており、さまざまな用法もそこから発展したものであるから、英語を母国語とする人たちは何ら文法書を読まなくともある程度の正確さをもって文章を作ることができているのである。 さて不定冠詞 a とは基本的には「(たくさんあるもののうちの)一つ」という考え方から出発している。不定とはどれでも任意のものを取り上げてよいという意味であり、あるグループ内に存在することが確認できれば、どれかと限定する必要はないことを示す。 例1
この例文では「(誰でも朝食はとるものだけど、たまたま)軽い朝食」という「種類」さえ確認できればよいとしている。固有名詞に a が付くとそれがよくわかる。ブラウン氏のようにどこにでもありふれている名前ならば、「・・・とかいう人」という数あるブラウン氏の一人を取り上げているにすぎないし、アインシュタインのような有名人であれば、本人は一人しかいないことは周知の事実であるから、他にいてもそれはその模倣にすぎないので「・・・のような人」という表現になるし、芸術家ならその作品一つを表すことも可能となり、行事ならある時(年)の一回のできごととなる。 例2
さらにあるものの総称にも「任意の一(匹)」を代表として a を用いることができるし(1行目)、偶然出会った「ある・・・」にもなるし(2行目)、ある性質を備えているのであれば、「どのような・・・( = any )」という意味にもなれる(3行目)。また何日も働くとすれば、給料を日数で割って平均値としての任意の一日の金額を出す、という考えに基づき、「それぞれ一日につき」という意味も a に与えることができる(4行目)。 例3
これに対し、 the はある名詞を限定するが形容詞というよりは、所有格の働きに近い。だから your flower は the flower に置き換えることが可能である。したがって目の前に見える窓も、 the room's window とか its window とは言わずに the window で示すことになる。このようにして一度意識にのぼったある客体はどこに属そうとも the の記号で示すことになる(1行目)。この限定の働きは、全体の中の特定の「部分」にも適用される(2、3行目)。 「その一日につき」という表現が the でも、 a とは出発点は違いながらも同じ意味にたどり着くことは興味深い。日数で割ることをせず、1日を「基点」にして掛けてゆく、という考え方なのである。だから前置詞 by を使うのだ(4行目)・・・受動態の by ではないから注意せよ。 形容詞までも the を付けられることにより、抽象概念や人々の「集合」を表す名詞の働きをさせられる。ここでの the は全体のまとめ役でもある。(4,5行目)。同様に総称も a が任意のものを取り出すのに対し、 the は一つのグループにまとめてしまうことによって表現している(6行目)・・・ただし単数で。これを複数にしてしまうと「その犬たち」ということになってしまう。 一方で the は「唯一」のものにまで限定を進め、地球のようにこの世に一つしかないものや、最上級によって必然的に一つしか存在しないものを示すのにも使われる(7,8行目)。 このように a と the はそれぞれ「任意」「特定」という正反対の性質をうまく生かして名詞の置かれている状態を巧みに表現して、全体としてはそれぞれ a は「一般論」を受け持ち、 the は「特殊論、各論」を受け持っているのだ。 英語に用いられているさまざまな熟語的表現のうち、比較を用いたものは頻繁に使われ、文章を作る上では欠かすことのできないものである。たとえば「最上級」によってあるもののうち一番のものを示すことができるが、これだけに飽きたらずにさまざまな類似表現が登場した。これを次の例文で見てみよう。 例1
これらの文で見られるように、「比較級」を用いても any other 「他のどんな」を組み合わせれば同じ意味になるし、no や never を用いて空集合、すなわち「ほかに匹敵するものがない」「今までにしたことがない」ことを示せば、やはり最上級の意味を示すことが可能である。特に下の二つの文では富士山の存在が前もってわかっているときには [ ] で示した部分を省略してしまうことすらできる。厳密に言うと、higher の方は「(同じ高さはあっても)それより上は存在しない」であり、 so/as high の方は「(同じ高さもないし)それより上も存在しない」という違いはあるが、無視してよい。 例2
成句 as 原級 as ...any の示し方は本来「劣らない」という意味であるから、論理的には最上級に限らないはずであるが、実際にはそのように用いられている。同様に as 原級 as...ever を使ったものは時間的な流れの中での最上級を示そうとしたものであることがわかる。なお、as 原級 as の中身は形容詞、副詞、形容詞+ (a) 名詞の3通りがある。 次に比較の表現を形容詞または副詞的に使ったものに目を向けてみよう。注意してほしいのは例1,例2は純粋な「比較文」であるが例3だけは単なる「修飾語」に過ぎないということだ。これらを混同する人が多い。 例3
この4つの例でみてみると、not は単に数字の上での最大限「せいぜい」と最小限「少なくとも」を機械的に示しているに過ぎないが、 no は more や less と打ち消し合って、プラスマイナスゼロと一見変化がないように見えても、実はそれぞれ感情の上で「多くない=たった(否定的)」、「少なくない=結構ある(肯定的)」を表している。 例4
したがってそれぞれ [ no + more またはそれに類する増大傾向の語 ]、[ no + less またはそれに類する減少傾向の語 ]というように組み合わせれば、いくらでも応用的な表現を考えつくことができるし、例3とは違って2つの文を比較した上で結合していることがわかる。その場合、 than のうしろの語ないし文は「比較の対象」または「たとえ」として大いに利用することができる。no less 「劣らず」と not less 「まさるとも劣らず」の違いに注目してほしい。また最後の二つの文の not と less との組み合わせは「これ以上少ないことはない=どん底状態だ」のことであり、not と more との組み合わせは「これ以上ない=満杯だ」のことである。 名詞でもいわゆる物質名詞、抽象名詞、固有名詞には不定冠詞はつかないし、複数形にもならない。しかしこれらの名詞が普通名詞として扱われると当然 a ( an ) がついたり複数形をとったりする。 例1
この場合普通名詞だから不定冠詞がつくとは考えず、不定冠詞が次に来るものを「名詞か」するとは考えるほうが実際的である。日本語と違って、英語では同一の単語が名詞や形容詞や動詞などに使われる。それで誤解が生じないのは、語順からチェックして統語的に明らかになるからである。 例2
中でも冠詞はそれがつけば必ず名詞と決まっているので、名詞化の働きを強く持つに至った。有名な話であるが、For you this is a must.「これはあなたに不可欠」という例がある。助動詞に a が付けられて must が名詞になってしまった。初出は1950年頃で街頭のポスターに現れたが、後にテレビのコマーシャルでおなじみになった。普通の表現で言えば You cannot go on living without this. (これなしにはあなたは生活していけない)とか For you this is an absolute necessity. (あなたにとってこれは絶対に必要なものです)であるが、 a must のほうが impact が強かったであろう。だからといって勝手に a can とか an ought と書いても通用しないが。 したがって冠詞は名詞につく単なる飾りではなく英語の一つの思考のプロセスになっていることを理解する必要がある。不定冠詞は「数えられるもの」の前につくと言われるが、実際の思考のプロセスは逆に、たとえば何か食べたいものがあれば I want to eat a ... として次に来る「数えられるもの」を頭の中で探していくということになる。この辺の事情は「日本人の英語」(岩波新書)に詳述されているので参照されたい。 単一動詞の代わりに句動詞を使う傾向が増大しているが、第1のタイプは動詞+ a +名詞、第2のタイプは動詞+名詞+前置詞( take care of など)という構造を持っている。第1のタイプは動詞に a を付けて名詞化が行われている。 例3
これらはいずれも一回の行為を表す(または瞬間的な相 aspect を表す)。 1回目に引き続き、比較表現と the との関係を見てみよう。「最上級」はそのうしろに名詞が存在するか、または存在すると想定されるときは、ただ一つのものと見立てて the を前に付けることは周知の通りである。これに対し「比較級」であっても二つしかないという想定のもとに「・・・な方」を示すときに、比較級の前に the をつける。最上級と比較級は代名詞に見られるように、二者と三者以上とをそれぞれ受け持っているのである。 例1
比較級に対する the の働きはもう一つある。それは副詞としての比較級を示している、程度のいわゆる「足がかり」を示す働きである。それを二組用意すれば、比例や反比例の関係を示すことができる。 例2
文の構成は基本的に倒置が起こる。比較級はもとは SVC のうちの C で、補語としての形容詞であっても、 V を修飾していた副詞であっても、すべて文頭に the と共に置くことになる。たとえば eager は I am eager to learn から抜き出して、前に移動したのである。また会話などでよく使う表現の場合には、最後の例のように SV の部分を省略してしまうことも多い。 もう一つの the の利用法としては「理由」を示す表現との結びつきである。 例3
公式としては SV + ( all ) the 比較級+理由の形で表すことができるが、この中で all は単なる強めなので、必ずしも必要でない。理由を表す手段としては、前置詞ならば for, owing to, because of などがあげられるし、接続詞ならば because が代表格といえよう。この結びつきの示すものはもとからあった性質に、さらにある理由が加わって、ますますその程度が高まるといういわゆる「上乗せ」表現である。 ところが例文の3番目にあるような否定の none を伴うものは、持つ意味が逆方向にうち消されて一種の2重否定になり、「少しも悪くなっていない」というように表現される。none the less も同様であるが、「それにも関わらず」「あいかわらず」というかたちでうしろに副詞や形容詞をつなぐ形式になっている。 最後に比較級を使った相関語句について述べておきたい。 例4
肯定文である事実が述べられるとき、それに関連したもっと当たり前の事実を付け加えるとき、1番目のような形式を用い、否定文によって示される事実のさらにもう一つの否定的な当然の事実を付け加えるとき、2番目のような形式をとる。ただし肯定にも否定にも共通して用いられるものもある( to say nothing of, let alone, not to speak of など)。 二つのものを秤にかけてより好ましいものを表現するのが3番目の例である。than の位置がわかれば、何と何とを比較しているのかをつかむことは難しくない。他に、more...than...のかたちもあるが、これは形容詞一語のような短いものを挟んで入れるのに適する。(他に as well as, not so much...as など)ただしこれらの表現で気を付けなければ活けないことは、二つのものを A と B とすると、その品詞(または句や節の表現形式)は同じものであるとする原則である。この種の表現はよく使われるだけあって非常にバリエーションが多い。 比較の第1回目では、不定冠詞による名詞化のことを話したが、さらに補足しておく。次の例を見てほしい。 例1 For the men in the convoy and an additional 10.000 withdrawn over the past two weeks, the war was over. (護送隊の兵士や過去2週間にわたってさらに撤退していった1万人にとり、戦争は終わったのである) 注; For で始まる副詞句は weeks まで続く、withdrawn は withdraw の過去分詞形で、「1万人」にかかる。 10.000のあとに men を補ってもよい。an は複数名詞についている形になるが、全部を一つにまとめる(名詞化する)働きをしている。 例2
これらは a (an)+ 形容詞+複数名詞という形であるが、不定冠詞が複数名詞を一つの単位としてまとめているのである。 定冠詞 the は形容詞、分詞について抽象名詞や複数普通名詞を作ることができる。 例3
これまでの例は、一つの単語を名詞化するものであったが、一つの文を名詞化するにはどうしたらよいか。代表的なのは that を付けることである。たとえば、「君が英語を勉強するのはよい考えだ」というのをそのまま、You study English is a good idea. とすることはできない。下線部分を主語として働かせるために、先頭に that を付けて、That you study English is a good idea. とするのである。通常これは It を使って、It is a good idea that you study English. とすることが多い。いわゆる仮主語の it である。 その他、疑問詞や接続詞はうしろに来る文をひとまとまりにして名詞節を作ることができる。 例4
that は固有の意味を持たず、ただうしろに来る文を一つにまとめるだけでいわば「無色」であるのに、他の接続詞や疑問詞はそれぞれ固有の色(意味)を名詞化に際して付け加えることになる。 ただしこれらがついて、名詞になるとは限らず、「副詞」的に使われることも多い。特に that節は多様なはたらきをする。 例5
結局 that はうしろに来る文をひとまとめにするための区切りのようなもので、そのひとまとまりのものが、名詞として働いたり、副詞になったりすると考えればよい。 最後に動名詞による文の名詞化を取り上げよう。文の中心となる述語を動名詞化することにより、文全体を一つの名詞にすることができるーーーこれが動名詞の最大の効用であろう(単に動詞を名詞に変えるものと考えてはいけないーーーそれまでついていた目的語、補語、副詞はそのまま保たれる) 例6
このような名詞化により、さらに大きな文の一部として使えるようになる。つまり文の中の文という「入れ子」構造ができる。特に前置詞のうしろによく使われる。 例7
前置詞は物、人、事象間の関係を表すものであるが、それは空間・時間関係という基本的なものから出発して、実にさまざまなものに及んでいる。個々の具体的な分析の前に、文法的なことを述べておこう。 (1)前置詞( preposition )はその名の示すとおり、名詞(あるいは名詞相当語句)の前に置かれるのが原則である。 例
しかし実際にはうしろに来るべき名詞がいろいろな事情で前に来て、前置詞のみがうしろに取り残されることも多い。このことが初心者に奇異な感じを与えるのであるが、十分慣れる必要がある。ここでは不定詞の例をあげておく。 (A) a house to live in (住む家)のような例であるが、これは (B) live in a house がひっくり返ったわけで、(A) タイプがよくわからなければ、いつも(B) の形に戻って考えればよい。最後の in はなくてもよさそうであるが、in のうしろに本来あるべきものがないので、その空白を埋めるべく、意識が前の名詞に引き戻されることにより、関係が明瞭となるのである。別の言い方をすると、(B) をかけ算とすると (A) はわり算のようなもので、あまりの前置詞がないと、等しくはならないようなものである。上の例は簡単であるが、
などは、cut the paper with a knife や carry things in the bag の下線部分を something に置き換えて前に持っていったと考えればよい。 次はやや難しいが考え方は同じ。これは make A of B ( B から A を作る)を思い出して考えればよい。下線のついた of の位置に注意。
take off the shirt (シャツを脱ぐ)のような例では take the shirt off のように off を最後に置いてもよい。目的語が代名詞であれば必ずそうしなければならない。このような off は一般に副詞と呼ばれているが、前置詞と区別せずに off の基本的意味である「分離」をよく理解しておくと、
というような順番で最後にイディオムができたことをたどることができる。 (2)前置詞+名詞の結合体は「句」の一種である。これは形容詞句か副詞句に使われるというのが基本である。名詞句に使われて、 After the sunset is the busiest time. (日没後が一番忙しい)のように主語になるのはまれである。 前置詞による句が形容詞として使われるときは、常に修飾する名詞のうしろに配置される。
したがって文頭に来る前置詞は必ず副詞句である。
(3)最後に前置詞が動詞的性格を強く持つ場合にふれておこう。この場合は単なる助詞のように(「から」とか「に」とか)訳さず、意味を明確にして訳すようにしたい。
これは次のような場合に特に顕著である。(普通、副詞句として分類されている)
前置詞の中でも of は中心的な働きをする。他の前置詞が主として場所を表すところから派生したのに対して、 of はもっと文法的な見地からさまざまな検討を加えることができる。ただ単に「・・・の」と訳せばいいというものではなく、その表現が生まれるもととなった関係を知っておくことが必要である。さもないと英語の文章を書くとき、ただ名詞と名詞を結びつけさえすればいいというだけで of を使うようなことになってしまう。 例1
いわゆる普通の「・・・の」の示す of とは、うしろの名詞と結びついて形容詞的な働きをして、前の名詞にかかるとされる。したがって「世界の人口」であり、「彼女の顔つき」と表現される。最もよく見られる例であり、the world's population のように所有格で置き換えられる場合が多い。 例2
ここで使われている of はうしろの名詞が前を修飾しているというよりは、前の名詞と of とのつながりで、形容詞の働きをして、うしろの名詞を特徴づけている。つまり例1とは逆の方向を向いている。上の例はコーヒーから「一杯の」コーヒーへと数えられない名詞を数えられるようにする「単位表現」であり、下の例は「一種の」というように、ある「範囲」に属することを示している。 例1との見分け方は、たとえば a cup of と coffee をそれぞれ一方を切り取ってみるとよい。a cup of をとっても全体の大勢に変化はないが、coffee がなくなったら、この文は壊滅してしまうことがわかるだろう。どちらの語が重要か一目瞭然だ。例1タイプでは of の左側が、例2タイプでは of の右側が重要なのだ。 例3
ところがこの二つの例を見ると、確かに「・・・の」で何とか訳せるものの、 of の前後にある関係が見えてくる。上の例では unerstand the universe であり、下の例では love nature である。すなわち他動詞と目的語の関係にあることがわかる。これを目的格の用法と呼んでいる。英文を読む人は、その関係を瞬時に判断できなければならない。 例4
この例の一つめを見ると、例3に習ってうっかり understand the students ととってしまいそうだが、そのうしろをよく見ると The students understand the subject という文章が変化していることがわかるつまり students は understand の主語だったのだ。。また、二番目の例でも All the people in the world are happy. という文章の意味がそのまま持ち越されていることがわかる。このように of のうしろにあるものが元の文章の主語と見なすことのできるものを主格の用法と呼ぶ。 普通の主語、動詞、目的語がしっかりした語順によって並べられている場合と違い、 of を使った文は読者がその前後関係をよく見極めないと正確な理解ができないという危険性がある。その点でゆけば of は乱用しないほうがよいのだが、名詞をつければよいという簡便さから、今日のような多様な用法が広まってしまった。辞書を見ると of には平均して15から20もの用法が細分化されて載っていることに驚くであろう。 今までの例は、of の前またはうしろに名詞がついて一種の形容詞のような働きをして of で結びついている他方の名詞を修飾しているような形になっているが、それが完全に熟語化して、多く用いられているのが次のような例である。(他に use, help がよく使われる) 例5
ここであげた例はいわゆる、 of + 抽象名詞の組み合わせである。それぞれ important, significant, valuable という形容詞を示している。それでもわざわざそれらの形容詞を用いず、単語にこの形式にしているのは、間にさまざまな形容詞( much, little,great, immence etc.)を入れて程度を示したり、 no を入れて完全否定にしてみるような表現の多様性が高まるからである。形容詞のままだと、それに見合うような副詞の種類はずっと限られれる。 |