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前置詞は日本語の助詞(別名後置詞)に似て、常に他のものと結びついて使われ、それだけで独立して使用されることはまれである。このようなものは容易にその個性(意味)を失い、巨大な機構(文章)の一歯車と化してしまう、かといって重要性がないわけではないが、不必要と思われればいつでも捨てられる(省略される)可能性がある。今回は前置詞がその固有の意味を失い、もっぱら機能的役割を持つようになったケースに焦点を当ててみる。 (1)前置詞+名詞の形で名詞や形容詞や副詞にしてしまう場合
以上の例では of には別に意味はなく、形容詞を作る機能しか持っていない。それで最後の例のように省略されるようにもなる。もっとも、of late (最近)= lately, of a Sunday (日曜などに), of necessity (必然的に)= necessarily, unavoidably のように副詞句になることもあるが、一般に「様態」を表すときは with + 名詞で副詞句を作るケースが多い。たとえば、 with ease (たやすく)= easily, with difficulty (苦労して), with fluency (流ちょうに)= fluently などである。with 以外では in, by なども使われる。たとえば、in safety (安全に)= safely, in earnest (熱心に)= earnestly, in comfort (楽に)= comfortably, by accident(偶然に)= accidentally などである。 (2)不定詞の意味上の主語を表すための前置詞、これは for が使われる。
この for は仮主語 it を使った It is + 形容詞 + for + 名詞の目的格 + to不定詞の形で頻出する。
for 以外にも不定詞の意味上の主語を表すものがある。それは of である。
これは人の行為に対する一時的な性格判断を表現するもので、「人間の性質」を表す形容詞( kind, clever, foolish, generous, naughty, sweet, cautious, careless, cruel, etc.)が使われる。またこのタイプは人間を主語にして You were kind to do so. と書き換えができるが、for を使った場合の文 It is important for you to go there. を You are important to go there. と書くことはできない。 (3)with による「付帯状況」を表す表現 まず例を上げると、
このような with には意味は別になく、最後の例のように省略されるようにもなる。すると文法的には「分詞構文」に近くなる。 英語でも日本語でもそうであるが、肝心の内容が始まる前にさまざまな出だしがある。それはこれから始まる内容を暗示するものもあれば、単なる著者の「構え」を示すだけであるかもしれない。しかしそれらはあくまでも決まり文句的なものであり、それらを知らない人がその部分にかかりきりになり、大切な内容の把握がおろそかになるようでは困る。従ってよく知られたものを、 that節を伴うものに限っていくつか紹介してみよう。 例1
これらはいずれも it ~ that 構文を利用した形態である。この特徴は受動態であり、3つ目の例文のように主語を前に持ってきて to不定詞で書き換えることが可能で在る。他に be known, be believed, be thought などがある。この形式は一般的状況を「言われている」「知られている」「報告されている」など、客観的に述べたものである。 例2
次の部類は話者の主観的な態度が入り込んでいるが、単なる様相や可能性を示しているだけで、断定的な意味は含まれていない。seem の他に appear そして形容詞の likely, unlikely も用いられ、例1と同じように to不定詞で書き換えが可能である。 例3
次のタイプは話者の主観的態度をはっきりと反映している。このほかの形容詞としては necessary, impossible, natural, doubtful などをよく目にする。2つ目は熟語的表現を中心にしたもので、やはり話者の態度が示されている。他に be no wonder, be a pity ( pities ) などがある。 例4
出だしは it 以外にも普通の名詞を使ったもの(「たぶん・・・だろう」「・・・な感じだ」)や there be のあとに抽象的性質を持つ名詞を置いて、うしろを同格関係(ここでは that )を使って内容を示すもの、いわゆる強調構文として it と that との間に not や but をはさんで置くものもある(「・・・とうことではなく・・・問うことだ」)。この場合の that は弱い because といってもよい。この類としては It may be that (「・・・ということかもしれない」)というのもしばしば用いられる。最後の I think や I imagine などはなじみ深いものだ。 最後に美麗字句としかいいようのないものを紹介しよう。 例5
「計画は失敗した」というためにこんなに回りくどい言い方をする著者も多いのである。我々も一つここではがまんして、彼らの表現術に脱帽することにしよう。 決まり文句としての出だしは、文全体の中では「副詞的」働きをしているといえる。従って速読の際のコツはいち早く文の中のアクセサリーとして主要な内容の方向付けをとらえておく必要がある。最後の例のように出だしの部分を凝る人は多いが、あくまでも本文のほうが大切で、そちらの方に注意を集中させておかなければならない。 英語がはっきりした語順をもとにできているので、動詞とその目的語との関係もいくつかのパターンに分けることができるほどしっかり決まっている。目的語といえば、その動詞の働きの対象と理解され、名詞または名詞相当語句といわれている。しかしそれだけでなく、別のカテゴリーでも分類することが可能である。次の例を見てみよう。 例1
他動詞は実は、その目的語として「人」と「もの」に大別することができる。それぞれの動詞の持つ性質によってその構成が固定されているといえよう。例1であげたのは動詞+「もの」+前置詞+「人」の語順である。これらの動詞の性質、例えば「説明する」を考えてみると、動詞のすぐうしろに来る目的語を見て「人」より「もの」を優先した意味を持っていると考えられる。explain, say, suggest は実際そのような動詞群なのである。日本語では一般に「人」に重点が置かれているので、 explain us としても不自然な感じはしないが、実は間違いなのである。なお3番目の例文では「もの」に当たる語がわからないために疑問代名詞の what となり、文頭に持ってこられている。 例2
この例では例1とは逆に、「人」が中心に置かれているのがわかるであろう。「思い出させる」のも、「知らせる」のも、「話してきかせる」のも、人間が相手だからだ。 例3
「与える、供給する」というような動詞では、「人」「もの」の優先順位をつけにくいので、どちらも可能である。ただそのうしろに来るものに応じて前置詞を付け替える。また give, send, offer のような、いわゆる4文型(授与動詞)では、「人」が先、「もの」がうしろと語順が決まっている。 このような事実を逆に考えると、一つの動詞に付く目的語に応じて、その動詞の持つ意味が次々と変わるのは当然である。次の他動詞 miss を例にあげてみよう。 例4
この例に見られるように、たとえ根本的な意味は同じでも、miss は「人」が目的語になると「いなくてさびしい」という意味になるし、「もの」であれば、「欲しい」だし、「乗り物」であれば「乗り遅れる」であり、「偶発的な出来事」であれば「避ける」意味になる。 最後に名詞節と呼ばれる目的語をあげてみよう。これらは主語にも用いられるのだが、動詞によって決定されてしまうのは目的(節)の方である。 例5
これらの代表格は that である。他に、 whether, why, where, when などがあるが、大きくわけて think タイプのようにある考えた内容を示すときは that を使い、 wonder, doubt タイプのように、どちらにするか迷っていることを示しているとき(二者選択)では、 if, whether を中心に使い、know, ask タイプのように未知のものを決めるときは、 how, wh- で始まる疑問詞を多用することになる。これらもそれぞれの動詞で決まっているから、その用い方に精通しなければならない。 名詞とそれとつながりを持つ部分との関係は、慣れないと「主語と述語」(叙述)なのか、「名詞を修飾している」(限定}のかよくわからないことがある。ここではその違いをはっきりさせてみよう。「花は赤い」と「赤い花」は違うのだ。 例1
最初の文は「さまざまな場所に住む少女」のいるうちで、たまたま「大阪に住む」という<限定>をしている。ところが次の文では、父はただ一人しかいないので、そのような場合はそれについて説明する文を続けるだけで限定をしても無意味である。これを、<非限定>と呼び、原則としてコンマで切ることになっている。 <非限定>の文は主語述語の形式、つまり「叙述」文を作っても、伝える内容はほぼ同じことになるし、むしろ自然である。このような観点から見ると、例2から例6までは上段が叙述的、下段が限定的になっていることがわかるだろう。 例2
いわゆる第五文型の形を伴う知覚動詞であり、 see という動詞はものを「見る」のみならず、行動全体を「見る」こともできる。従って、まずある少女を見たのであり、その娘がたまたま英語を習っていたのを見たのであり、後者の訳のように、多くの少女の中から特別に英語を習っている娘を見た(に会った)というのは特定の状況であって、普通は考えにくい。中段のようにa girl の代わりに her や固有名詞がある場合は限定できないことが確実となる。 しかし下段は前置詞 for によって確定された名詞 girl をうしろから修飾している。この本は、「英語を学んでいない少女」には役立たないわけで、この場合は「限定」することに大いに意味がある。 例3
これも5文型であるが、例1とは違い、 to不定詞になっている。「芸のできる動物」にさらに訓練を加えることよりも、前半の訳のように、「白紙の状態にある動物」に初めて訓練を施して芸ができるようにすると考えるほうが自然であろう。 下段はanimals が「飼う」という意味の動詞 keep の目的語として確定されているので、 to不定詞は animals を修飾する格好となっている。 例4
there で始まるものは単に存在を示すだけなので文中では意味を持たず、最初に人々がいて(主語の働き)そしてその人々が何々をする(述語の働き)という形になる。ただいるというだけであれば、他に「公園には運動しない人々もいる」ことをわざわざ示す必然性はない。つまり限定にする必要はないのだ。下段は like によって確定された people がうしろから修飾されている。 例5
with は「付帯状況」と言って、そのうしろの名詞(主語の働き)だけでなく、そのうしろに来る部分(述語の働き)も包括して、主節と同時に行われていることを示す。下段では動詞 touch と目的語 hand が結びつき in 以下は hand を修飾するのみとなる。 例6
ここでわれわれが驚いているのは、「犬の能力」ではなく、むしろ「(犬が)匂いでかぎ出す能力」である。したがって smell が主体なわけで、必ずしも dogs に従属するわけではない。タヌキでもキツネでもかぎ当てる力はあるだろう。これに対し下段では、for により dogs がまず決まり、そのうしろに修飾するための to 以下がついてくる。 前置詞がその固有の意味を失って単に機能的役割しか持たない場合については以前述べたが、前置詞が表す固有の意味を体系的に述べることは難しい。しかし、その多様な意味の中で、時間と空間に関するものが最も顕著でしかも重要であろう。今回はこの種類の前置詞を整理してみたい。 まずおおざっぱであるが空間を次元で分類するとして、点を表すのが at 、二次的平面を表すのが on 、三次元的空間を表すのは in である。 例1
しかし点を見るか、広がりのあるものと見るかは見方によるので、同じ場所でも例えば、 例2
のようになる。後者は地図上の一点としてみている。時間的には at は時間軸上の一点、つまり時刻を表す。.同様に値段、速度、温度など計器で示されるような場合も at が使われる。 例3
これら基本的意味から種々の比喩的用法が生まれてくる。行為の目標点は at で示す。人間が行動しているときはある一点に集中している。 例4
on は基本的に、二次的平面との接触を示す。 例5
on は接触の意味が顕著で、分離を表す off と好対照である。 例6
接触の意味は、拡大され近接している場合も使われる。 例7
about (・・・に関して)の意味もある話題にふれることから生じている。さらに支点、根拠、依存などの意味が生じてくるのは理解しやすい。 例8
時間的には at が時点を表し、 in が幅のある期間につけられる(・・・の間)。 例9
それに対し on はこの二つの中間にあるといえる。ただし、特定の日や、修飾詞がつく場合は on が使われる。また時間的近接(接触)も on で表す。 例10
in は空間内に囲まれていること、つまり「・・・の中に」「・・・において」を表す。着用の意味、「・・・を身につけて」もここから来る。またこの「・・・の中に」がある状態になっていることも意味するようになる。 例11
その他種々の用法があるが、ここから先はもとの意味から遠く離れているものが多く、それらは想像をたくましくして覚える工夫をしよう。 単文中での時制はそれぞれ状況に応じて決定することができるが、複文または to不定詞、動名詞、分詞などの準動詞との組み合わせの時には、それぞれある規則により時制を決めてゆく。 まず第一の区分けの方法は「同時」と「主動詞以前」の二つに大きく分けることができる。 例1
この例のように、まず主動詞が現在形に対し従動詞の時制は現在形(進行形を含む)または未来形が、また主動詞が過去形に対し従動詞に過去形の組み合わせが考えられるが、それらはそれぞれ現在や過去を起点にした場合には時間的に同じ部類に属すと考えられる。これと同じことが to不定詞や動名詞や分詞構文などの準動詞にもあてはまる。 例2
ところがこれらの文で見る時制の組み合わせは現在と過去または現在完了そして過去と過去完了が示されている。これらのつながりは明らかに時間のズレが見いだされる。それらはそのうしろの準動詞においても同様である。 準動詞でははっきりした時制を示す形式がないので、それぞれ to have + p.p. や having p.p.の形を使った「完了形」というものですべてを代表している。だから例えば、現在形の主動詞のうしろにある準動詞の「完了形」は、過去を示すものか現在完了を示すものかは読む人が文脈から判断するほかはない。 例3
時を示す接続詞を用いた文と、主節との組み合わせではどのような点に着目すべきだろうか。<現在形、過去形、未来形は時間の中の「点」である。現在完了、過去完了、未来完了は時間の中の「線(的影響)」である>このような割り切り方をすると、これらの例文がよくわかる。 when や by the time で「起点」をつくり、それまでの「経過」を示すのに完了形を使っている。また完了形でよく用いられる since は「出発点」を、 for は「期間」を示し、 before は「起点から」の離れ具合を示すこともわかるだろう。 例4
進行形との組み合わせは「点」との重ね合わせになるので広く用いられている。進行形は点と交わるいわば、「短い線」で、二つのことが同時に行われていることを示す。 次の once や because の例文は例3とは逆に、接続詞のついている方に完了形を用い、その「線」の及ぼす効果が主節にまで至っていることを示す。 例5
主節が未来のことを述べるときは、当然それに付属する「時」や「条件」の接続詞のついた文も同じく未来形になりそうであるが、「・・・するとき」とか「・・・するなら」という表現は、実は未来の予測ではなく、話者が心の中で勝手に設定したものであるから、「現在の心の状態」を示すということで、未来形の変わりに現在形、そして完了的なものを示すときは未来完了の代わりに現在完了を用いる。<重要な規則> 名詞節とは何かー始まる目印は二種類 名詞節は「文の中の文」の一種であり、主語として、目的語として、 be動詞のあと、前置詞のあとに現れる。それらは文中の位置で判断するしかないが、その始まる目印は大きく二つに分けられることを知っておく必要がある。(例文では斜線部が名詞節である) 例1
この例文で見るとおり、普通の文章は that によって始めることができる。この that は普通、接続詞と呼ばれるが、この場合は名詞節の始まる目印である。ただ他の that の働きと違うのは、それが believe のうしろ、つまり目的語であるとか、 is の前、つまり主語であるとか、さらにその部分が長いときには、とりあえず仮の主語 it で代用し、あとでうしろの方でゆっくり本物の主語(真主語)を that で始めるというかたちを取ることもある。 例2
この例のように二者選択を要求するような動詞には、接続詞の if や whether を that の代わりに用いるが、名詞節を始めるという基本的な働きは変わらない。なお二番目の例文のように、少数ながら前置詞のうしろに名詞節が来ることもある(ここでは as to )。 例3
これらは疑問副詞と呼ばれるものであるが、すべてそれぞれ特定の意味を持つことを除いては that と使い方は共通である。もちろん動詞一つ一つには癖があって that しか受け付けないものが多い。 例4
ところが第二のタイプでは was, is の前や gave her のうしろにあるということは、前と同じだが、1,2行目では I saw something の something にあたるものが what として前にいっているし、you have に対する whatever の場合でも同様である。3行目では something is not unclear の something にあたる部分がやはり what で肩代わりされている。つまり前者では目的語、後者では主語の役割を果たしているのである(目的格、主格) 最後の行では something にあたるものが what little love の三つがまとまって、やはり had の目的語となっている。このように、what とは something (または a thing, all the things )の代わりをしながら先頭に立って名詞節を作っている。なお what を「何・・・?」(疑問代名詞)か、ここの例文のように「・・・なこと、・・・なすべて」(関係代名詞)ととるかは文脈による。 例5
what と同じ用法は、人を表す who(m), whose + 名詞、選択を示す which に見られる。これらもすべて主語か目的語の肩代わりをしており、疑問代名詞と呼ばれる。なお、 what, who, whom, whose, which のうしろに ever がついても譲歩的な「・・・でも」の意味が付け加わるだけで、使い方は同じである。 「動作」か「状態」かー動詞による時制の設定 動詞は「状態」を示すものと、「動作」を示すものとに分けられるということはよく耳にする。この分け方は進行形や完了形を設定する目安として、大変便利ではあるが、つっこんだ理解がなければかえって誤った文を作るもとになってしまうであろう。はっきり「状態」か「動作」かと分かれているものは全体から見ると実は少数であり、たいていは一つの単語の中に二つがそれに応じた意味によって混じり合っているのが普通である。 例1
最初の2行はそれぞれ精神状態や always による継続状況の明示により現在形と現在進行形とを決定できる。ところが典型的な「動作」動詞である watch を使った3行目の文を見ると、「習慣」としてテレビを見るという印象を受ける。すなわち現実感がなく、今の状態を示していない。これに対して4行目のように進行形にするとはじめて、今しているという感覚がわいてくる。このように「動作」を示す動詞は進行形にしてやらないと「状態」を浮かび上がらせることができないのである。 例2
be動詞の場合、うしろに形容詞や過去分詞がつくと「状態」を示すのが基本であるが、これを get に置き換えると、「動作」が強調される。さらにこれを進行形にすると、今行われていることがさらに強まり、これから取りかかろうとするさま、すなわち be going to のように近未来や確定未来を表すことになる。 例3
この4つの例文の内容を日本語で忠実に再現するのはむずかしい。 come のような動詞は「来る」の多様な側面を含んでいるからである。1行目は「来るのだ」と習慣としての事実、または未来の予想を示す。2行目の進行形は例2の場合と同じく近未来や確定未来をさす。 3行目になってはじめて、日本語の「来た」に一番近い意味になったといえよう。現在完了形では「来た」という事実の他に今「在宅」していることも同時に示すからである。ここで just を含めれば、「来たばかりだ」となり、現在完了形のもう一つの使い方の、「来たことがある」という経験的な意味にとられる心配はない。 4行目では、彼は過去のある時間に「来た」のだが、もう去っていったか、まだいるかについての言及はまったくない。このような時制との関係は、特に「往・来・発・着」を示す動詞、 go, arrive, leave, start, reach などに見られる特徴である。 例4
存在を示す be動詞は、完了形 been の時におもしろい働きをする。1行目は「行って来たところだ」と表すけれども、このことは went (行った), was (居た)came (来た)の三つを合わせた働きをしていることがわかる。 これに対して2行目の「行ってしまった」とは、行きっぱなしでどこか離れた場所にいることも同時に示す。戻って来てはいないわけだ。ちょうど例3の have come と正反対である。 3行目では to を使っていることは1行目と同じであるので、just 「したところだ」の代わりの ever 「今まで」によって同じ延長線上でスケールが大きくなっているだけだ。この違いはその行き先による。「郵便局に行って来たところ」と「郵便局に行ったことがある」とではずいぶん違うが、一番近い郵便局まで30キロも離れているような場所に住んでいる人々にとっては後者があてはまることになる。 なお、最後の4行目にあるように、 to の代わりに in を使うと、live in の意味を持つようになるが、3つの機能を含んでいること(つまり今は現地を離れて戻って来ていること)は同じである。 ヨーロッパ言語なら、みな BE動詞に相当するものがあるようである。中国語にも「是」というそれらしいものがある。働きを大きく二つに分けると、「主述関係」を結びつけるものと、「存在」を示すものになる。 例1
BE動詞はその前にある部分が名詞か名詞相当語句であり、BE動詞のうしろがそれと論理的に「等しい」ものが入る。ここでは That 以下と the fact 以下が等しいのである。 これに対し存在を示す場合は、BE動詞だけで済ませることは理論上は可能でも、そのような場合は別の動詞 exist, live, lie などに任せ、普通はそのうしろに場所を示す副詞相当語句をつける。ここでは at という前置詞によってそれを示している。 また、3番目の例のように、さらにそれを敷衍して状態を示すことも可能。ここでは in という前置詞によってそれを示している。 例2
主述関係で問題になるのは、どのようにして等しい関係に持ってゆくかということである。「彼は重要な(人物)だ」と述べる場合、形容詞を使うが、これはその人の属性を包み込むことができるからだ。ところが一つ間違って名詞にしてしまうと、これは抽象名詞であるから彼という「人」とは等しくなくなってしまう。 ところが「美しい」というような場合、それを名詞にしても抽象名詞としてだけでなく、ここで a がついているのでもわかるとおり、普通名詞の「美人」という意味であれば she と等しくなる。また、抽象名詞であっても itself をつけて強調するのであれば、特例として許される。 例3
仮主語を用いた it~to や it~that の構文では、 BE動詞は to や that 以下を主語とし、 it のあとに来る(主として)形容詞が述語としてつながっているが、ここでも等しい関係は貫かれなければならない。 possible は to の時は for はあってもなくても「できる」の意味が強く、 that の時は「あり得る」の意味が強く出る。したがってそのような意味に合わせれば例文の1,2行目は問題がない。 ところが「本当だ」という意味では that の内容は一つの内容を持った「事実」として認めることができるものの、これを to で始めると「彼女を愛する」だけで、事実としては足りない。for は to の主語の役割をすることはできるのだが、もともとは「・・・にとって」の意味であるから、事実としてやはり不完全である。 easy の場合は逆のことがいえる。 easy と that を is で結びつけてしまうと、やはりある事実が「易しい」ことになってしまう。これを to にすると、「行動」を示すようになるから easy とバランスがとれるようになる。 一般動詞がそのうしろに続くものが文型によって決まっているのと違い、このように主語と形容詞を BE動詞と結びつけるときは、今述べたような possible, true, easy の3つのどのタイプに属するかを我々のように英語を母国語にしない者は注意していなければならない。 動詞句は前置詞または副詞との組み合わせが大半を占めている。特に前置詞は、動詞を他動詞化したり、二つの名詞を関係づけたりする、大変重要な働きをする。 大別して、 V + 前置詞 + O (他動詞第3文型タイプ)、V + O¹ + 前置詞 + O² (他動詞第4文型タイプ)の2種類ある。動詞句を熟語として覚える場合、それに伴う前置詞の性質をよく飲み込んでおくと、その成り立ちがよくわかって記憶の持ちがいいし、同意語とまではいわないまでも、よく似た意味を持つことがわかる。 さらに未知の動詞句が出てきたとき、前置詞だけを見てその持っている意味を推定することができるかもしれない。ここでは代表的な前置詞をいくつか選んでみた。 例1
普通 for は「・・・のため」という目的を示すことが多いが、動詞句では最初のブロックにあるように「求める」という意味と、2番目のブロックでの金と品物、代用品での「交換」、そして3番目のブロックでの「・・・のために(理由)」が代表的である。 例2
with は「・・・と一緒に」という意味でよく用いられるが、動詞句の場合でも「与える」の意味や2番目のブロックでの「・・・で(満足)」というように大きな意味の変化はない。 例3
on はまず「依存」を表し、1ブロック目の4つの動詞はほとんど同意語といってよい。2番目のブロックは「対象」で、金を使う対象、責める対象などいろいろである。 例4
give でもよく知られているとおり、 to は「経路・付与」を示す。あまりもとの意味から離れていない。 from も「発生源・起源」を示すだけなのでわかりやすい。 例5
of は名詞同士をつなぐ重要な働き以外に思いもかけない意味を持っている。一つは「剥奪・除外」であり、財布を奪ったり、雪を取り除いたりするのに用いる。もう一つは「内容伝達」であり、あることがらを納得させたり、伝えたり、思い出させたりする。 例6
into は out of と対になっていて、「・・・の中に」「・・・の外へ」という基本的な意味を持っているが、 talk や persuade に into をつなげば、説得して何かをさせることになるし、 out of を使えばその反対であるから、やめさせることになる。 into はそのほかに状態の「変化」を示すのに重要である。色の変化、翻訳などに応用がきく。 |