(2019年11月)

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目次

PAGE 1

マレーシアへ

クアラルンプール市内

マラッカ日帰り

イポー日帰り

PAGE 2

シンガポールへ

バスによる国境越え

シンガポール植物園

市内散策

記 録 総まとめ

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シンガポールへ 

 マレーシアとシンガポール 

戦後ほぼ同じ時期にイギリスから独立したこの二つの国は、一方が普通の国土を持ち、もう一方は典型的な都市国家として、人種構成はかなり似ていながら、違った方向へ進み、現在に至っている。

マレーシアは隣のタイやインドネシアと同じく、普通の開発途上国と言っていい。民主的なシステムの上に社会を築き上げようとしているが、腐敗や非能率が足かせとなって、なかなか思うような国づくりが進まない。

マレーシアでは、かつてマハティール首相という強力な政治家が手腕をふるっていて、シンガポールに追いつき追い越せという勢いで進んできたが、長期政権のもたらす腐敗や非能率化が表面に出て、しかもなりふり構わぬ経済成長政策のために自然が大きく破壊され、例えばアブラヤシのプランテーションが至る所にできてしまった。

一方、シンガポールではそのもともと小さい島という制限を逆手に取って一大商業センターを作り上げることに成功した。国家というものは大国ではなく、また資源や軍事力に依存するのではなく、身軽に立ち回れる都市国家の形式が最も向いていることを示す教科書的な例となった。

振り返るとフェニキア人、ベネチア人、そして今の香港人などいずれも同じ流れを見出すことができる。統治地域が都市面積だけだということは、独裁政権の誕生を困難にする。また市民の教育も行き届くようになる。貿易や通商が主体なので、国際関係に敏感な人々が育ってくる。

大きな国では、「都会人」と「田舎者」との大きな隔たりがしばしば国全体の統一を難しくしてきた。独裁者は田舎者の無知をいいことに、彼らに利益を与えて自分の政権を保たせようとする。国内にこうして分断が生じやすいが、それを防ぐために、中央集権的な体制を一層、締め付けの強いものに変えていかなければならない。

シンガポールの現体制は必ずしも民主的、温情的であるとは言いかねるが、規模が小さい分だけ変革が容易であり、現在権力を担当している者たちがその座を譲るときが来れば、新しい体制が生まれることが予測される。

バスによる国境越え

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 クアラルンプールのバスターミナルTBSからは、国内各地とを結ぶだけでなく、国際バスも多数発着している。その中でも特にシンガポールとの間には数多くの会社が運行に参加しており、単純計算で30分に一本の割合で出ている時間帯もある。ただし、到着まで6時間かかるため、朝の便の出発が最も適している。問題はクアラルンプールに至る高速道路の渋滞だ。マラッカ、イポー、そして今回の移動の際も、遅れが出た。それも到着の遅れだけでなく、信じられないことだが、出発の遅れでもあったのだ。これはバスが2か所をシャトルとして運転手は交代しながらも、バスの車体自体がひっきりなしに往復しているせいだと思われる。

今回利用したバスは、上の写真の赤いバスだが、中小の会社で、バス車体がボロボロで高速走行中、異常に騒音が大きいなと思っていたところ、あるパーキングエリアで、同社の別の車両に乗り換えさせられた。ま、旅は急いではならない。よくあることだ。

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 マレー半島の最南端の都市はジョホールバルであるが、バスはその市街地を迂回してシンガポールにかかる2本の橋のうち、西側の橋を渡ってジョホール水道を渡る。写真はその水道を渡り始めたところで、向こうに見える低い土地がシンガポール領だ。

シンガポールのマレーシアとの国境管理はかなり厳重で、貨物トラックは長蛇の列になっているし、海岸には鉄条網が張ってあり、より高い収入を求めて入ってこようとする人々にかなり神経を使っているようだ。移民についてはメキシコとアメリカ合衆国との関係に似ている。

バスは専門の建物に入っていき、乗客はすべて荷物をもって降りなければならない。時間帯によって異なると思うがこのときは夕方5時ごろで、すべて終わるのに2時間半かかるほどののろい進み方だった。日本人である私はあっという間に終わったが、中国人やインド人では指紋認証がうまくいかないのか、“別室”に連れていかれるのがかなりいた。そのとばっちりを受けて実に長い時間耐えたのである。一方シンガポール市民は実にスムーズに出入りできる。

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 ようやく入国審査が終わり、下の階に降りてみると、我々を乗せてきたバスが辛抱強く待っていた。私が最後になったのだが、それは私のせいではなく、運悪くその前にいた人たちが大いにもめたためだ。

さて、「シンガポール行き」といっても単純ではない。シンガポールの中の、Beach Road, Woodland など、5か所ぐらいの中から選ばなければならないのだ。今回の宿の位置を考え、文字どおり海岸通りである、Beach Road 行きを選んだが、そこから15分ほど歩いて Begis という地下鉄の駅にたどり着いた。

Begis駅は市内でも大規模駅で、Tourist Pass を販売している。どこの観光都市でも出しているように、これを持っていれば終日市内の電車やバスが乗り放題なのだ。2日分を買う。ところが駅の窓口で支払いをする段になって、クレジットカードは JCB と Master Card だけで、VISAは受けつけないとのこと。びっくりして近くのATMで現金を引き出したが、こんな事態は今まで世界を旅していて初めてだ。後で調べてみるとレストランや土産物屋でも、大多数がVISAを受け入れていない(2019年11月現在)。金融の町シンガポールはなにかVISAの会社ともめごとでもあったのかな?

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 パスをもって Downtown Line (下町線?)にのり、Chinatown 駅で下車。クアラルンプールと同じく、駅からすぐそばで、今度は値段も3倍以上だが、ぐっときれいな部屋に入った。とにかくシンガポールは物価が高い。ニューヨーク、パリ、東京を抑えて世界一だという。だが、それは住民の給料水準が高いからでもある。

クアラルンプールと賑わいは同じだが、ずっと清潔である。でも中華街の持つ独特の雰囲気は変わっていない。私の泊った宿のある Temple street など、駅から4本ぐらい並行して東に延びているのがチャイナタウンの心臓部だ。とにかく何でも売っている。インド人やマレー人が好みそうなものも含めて。

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 四川料理は中華式の中でも辛いことで有名だが、日本で食べてもちょっと辛いかなという具合に和らげてあるのが大多数だ。ところがこの店の四川式は妥協なしのいわゆる”激辛カレー”に相当する辛さ。写真に盛ってある料理は赤っぽいが、これは赤トウガラシだ。中の具は鶏の皮なのだが、味は大変優れている。しかしその晩は胃が痛くなって目が覚めた。緑の瓶の青島ビールがなかったら、胃はただれていただろう。
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胃への刺激を和らげるために、甘味処に入る。注文したのは白玉(らしい白い球、タピオカかもしれない)のはいったお汁粉である。まわりが氷水をすする中、私だけがこの熱い汁を飲んだ。
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 マレーシアでもシンガポールでも壁画は大いに好まれているようだ。このチャイナタウンの狭い横町にあった壁画はずいぶんと家庭的である。
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 ねぷたのように内側に明かりをともして見せる仕掛け。昼間は気づかないが、夜になるとチャイナタウンの顔になる。
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 少子高齢化社会ではないから、夜になると若者が町にあふれ出る。ここは駅と反対側の中華街の東のはずれ。やはり赤い門は外せない。

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シンガポール植物園

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シンガポールでの最大の見所は何か?近年シンガポール政府は、かつてのローマ皇帝が「パンとサーカス」を人民に与えた故事を思い出したわけであるまいが、ディズニーランドのような遊戯施設がやたら多い。仕事に疲れたシンガポール市民は主体的に遊ぶことを忘れ、高い入場料を払って受動的に時を過ごすのかもしれない。

それはともかく、最も古いシンガポールの公共施設と言えば、「シンガポール植物園」であろう。ロンドンの「キューガーデン」と並ぶ世界的な植物種の収集、特に熱帯植物に関しては世界一だろう。マレー半島にゴムの木が移入されたのもここを通してである。

Downtown Line のBotanic Gardens 駅下車。入場料は無料であり、「ラン園」だけが有料で入る。まさに都会の真ん中なのだが、まるで突然原生林が出現したかのような雰囲気だが、フェンス越しに都会の高層ビルがちらりと見える。動物園に比べれば“動きがない”という理由で地味であるが、かつて福岡市の植物園を訪れて以来、すっかりファンになった。それに今は地球の種の絶滅が目前に迫っているからなおさらである。

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 創立以来100年を過ぎているので、こんな途方もない背の高い木があちらこちらに生えている。
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ランに興味のない人でも、ここを訪れれば、その多様さ、複雑さに魅了されるだろう。ランの花弁は途方もなく細やかで複雑だ。人類の文明は画一化を好み、自然は多様化を好むことがよくわかる。
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ここが「ラン園」の入り口。
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我々は熱帯雨林の危機を毎日のように耳にするが、そもそも「熱帯雨林」とはどんなところなのか具体的に知らないし、しっかり見たこともない。ここではこの小道を歩くだけで、その様子が手に取るようにわかる。
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熱帯雨林における”天蓋”、つまり背の高い木が葉を広げて傘のようになっている部分も実際に観察できる。世界中の人々が、ただ金儲けのために、これらをどんどん切り倒しているのだ。
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植物園は学習の場でもある。この掲示板は人々が“薬草”を発見するまでの過程を説明している。左から順に(1)ある人が未知の病気にかかり、治療方法を探し求める(2)似たような症状を持つ動物がおり、何らかの植物を食べて回復するのを観察する(3)治ることを願って、その病気にかかった人もその植物を食べてみる。(4)しばらく経つうち、その病気の人は回復し、その植物が回復のもとだったのだと確信する。(5)その植物の効能のうわさが広がり、その部族の集団的知識の一部となる。
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昼の時間になった。ランチセット20シンガポールドルを注文してみる。パスタ、スープ、レモンティーの組み合わせ。園内のところどころに軽食レストランがある。
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 貴重な写真をとることができた。この鳥がハチドリかどうかは定かではないが、園内のこの花にとまってしきりに蜜を吸い始めたのだ。このほかにも、野生のような鶏(一説に鶏の祖先は東南アジアであるという)、そして池のそばではヤモリ(それともトカゲ?)を観察する機会に恵まれた。

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市内 散策

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植物園の大半を歩き回り、3時間近く過ごした。例の乗り放題パスを使って、今度はシンガポールの銀座であるオーチャードロード近辺を散策する。不思議なことにシンガポールの高層ビルは、クアラルンプール程ではない。何かもっと落ち着いた雰囲気だ。

超高層ビルはほとんどないし、ツインタワーのような派手なビルも少ない。これは地震が起こりやすいというような地質に関係するからだろうか?地下鉄Orchard駅に下車すると、地下道が張り巡らされ、ショッピングが楽しみの人には天国のように見える。賑わいだけはクアラルンプールに負けない。

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次なる駅はEast West Line のRaffles Place駅。金融と高級ショッピング街で有名だが、すぐ前がお台場のような海浜公園になっていて、散歩にも、リバークルーズにも人々はやって来る。水辺に沿って居酒屋がずらっと並び、たまたま午後3時近くであったので、どこの店でも HAPPY HOUR と称してビールを激安で飲ませてくれる。しかしここで酔いつぶれては今晩の飛行機に間に合わなくなるかもしれないから、ぐっと我慢する。
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橋を渡って対岸には、このイギリス人植民者 Thomas Raffles の彫像が高層ビルを背景に映える。

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さらに北に歩くと、巨大モール、市役所があり、その先に5つ星ホテルRaffles Hotel がある。まわりの高層ビルに囲まれて、高さは3階どまりであるものの、コロニアル風建築と、かつてのバンガローの雰囲気を強く残している。このあと、East West Line の City Hall 駅から乗車。

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 今度は North South Line の終点である Marina South Pier駅で下車。シンガポール港の一部が見える。そしてここには大小の島々に行くフェリーの乗り場でもあるのだ。
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さらに Downtown Line で Little India 駅下車。降りてすぐには、ただまわりが高層ビルだとしかわからなかったが、しばらく行くと見えてきた。中華街の向こうを張ってきらびやかなインド式装飾に包まれた門が見えてきたのだ。

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インド式食堂の入っている市場に入り込む。カメラを向けると右端のおじさんが警戒の目を見せる。とたんにヒンディーの世界だ。生臭い肉の漂う中、インド料理に舌鼓をうつ大勢のインド系の人々が食事をしている。奥の肉屋では羊の肩をぶつ切りにしたものを売っており、金のない若者がたんぱく質の補給のため沢山買い求めている。
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そろそろ6時だ。宿泊したホテルに預けてあった荷物を取りにChinatown 駅にむかう。そしてその前に昨日お汁粉を食べた店に立ち寄り、今度は今日一日の暑気払いをするため、マンゴーを垂らし、タピオカらしきものをまぶした氷デザートをいただく。日本の氷よりずっときめが細かく、クリーミーなのだ。店のおばさんに、「あんた昨日ここでお汁粉食べたでしょ、覚えているよ」と言われた。

荷物を宿で受け取って、再びDowntown Line にのり、Changi 空港をめざす。午後8時45分の出発には十分間に合う。

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記 録

<旅行期間> 2019年11月21日より11月28日まで

11月21日(木曜) 成田空港よりベトナム航空 VN301便にて 0930発 Tan Son Nhat 空港 1415着1520発 Kuala Lumpur 空港 1830着 Amigo Hotel にて宿泊

11月22日(金曜) クアラルンプール市内移動 Amigo Hotel にて宿泊

11月23日(土曜) クアラルンプールTBS駅発 バスにて マラッカ往復日帰り Amigo Hotel にて宿泊

11月24日(日曜) クアラルンプールKL Sentral駅発 鉄道にて イポー往復日帰り 帰りはバス TBS着 Amigo Hotel にて宿泊

11月25日(月曜) クアラルンプール市内移動 Amigo Hotel にて宿泊

11月26日(火曜) クアラルンプールTBS発 バスにて シンガポール着 The Inn at Temple Street にて宿泊

11月27日(水曜) Changi 空港より VN656便にて 2045発 Tan Son Nhat 空港 2155着 空港内泊

11月28日(木曜) Tan Son Nhat 空港 0610発 成田空港 1345着

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