元明天皇が710年、平城京を造営して以来、奈良の町は、都市計画、荒廃、神社仏閣の成立と衰退、近代都市への変身、と目まぐるしく変わってきた。1000年以上にわたるこの変化の集積が現在の奈良である。その痕跡は、街角に、路地に、人の訪れないひっそりした山間部に発見することができる。
それらを目撃したければ、歩くしかない。時速4,5キロのスピードなら、周囲のものをあまり見逃すこともなく捕まえることができよう。しかも、巨大な京都の町と比べ、奈良はずっとこじんまりしている。今回(2022年4月16日~20日)の歩きは2021年に次ぐ、第3回目のものである。
馬見丘陵公園 2022/04/16
フェリーは名古屋港に少し早めに到着したので、宿泊地である王寺にも午後3時頃には行けるだろうと思っていた。ところが関西本線の木津駅にさしかかったころ、急停車。「トーチク」があったとのこと。”倒木”ではなく”倒竹”のために線路がふさがったのである。竹林の生育が盛んな関西のことだけある。
列車はダイヤを45分も遅れてしまい、せっかくの予定も狂ってしまった。午後4時から2時間程を有効に使うには、王寺から遠くへ行くわけにはいかない。近鉄新王寺からわずかの近鉄田原本線にある近鉄箸尾(はしお)駅から歩けるルート上にある「馬見丘陵公園」に急遽、向かうことにした。
ここは飛鳥時代を中心とすて、さまざまな地位の豪族たちの墓がいくつもあるところなのだ。実際に行ってみると、土曜日のせいで家族連れでいっぱいで普通の公園と変わらない。ところが散歩道沿いにたくさんの墳墓が並んでいるのだ。
古墳はすべてが緑に包まれた半球に見える。残念ながら案内板があまり充実していないこともあり、見学に手間どったが、南北に細長いこの公園を縦に通り抜け、園外に出てもまだ古墳の行列はつづく。
帰りはどこともしれぬバス停で心細い思いをしながらバスを待つ、関西の春も夕方になると急に冷え込んできて寒さに震えた。バスは近鉄大阪線五位堂駅行きで、降りてから更にJR五位堂駅まで移動して、ようやく帰途につく。第1日目にして12キロ歩いた。
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「馬見丘陵公園」は広陵町の中にあり、近鉄「箸尾(はしお)駅」から市街地を抜けて西へ進むと田園地帯の中にある。 |
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これが近鉄「箸尾駅」。駅前から、木造の住宅が続く。 |
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駅からすぐの「地蔵堂」。おばあさんが一人参拝している。 |
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昔ながらの狭い道とその両端に続く石塀。 |
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公園内に入った。周りの田園風景とあまり違いがない。ただ、集中的にチューリップが植えられているところがあった。 |
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盛り上がりから、そこが古墳だとわかる。建設当時はそれとわかっても、長い年月の間にすっかり自然に帰ってしまっているのだ。 |
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「乙女山古墳」。竹林の中を入っていくと、その奥にこんもりと小山のようなものが見える。 |
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「一本松古墳」。下手するとゴルフコースと間違ってしまいそうだ。 |
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「倉塚古墳(スベリ山古墳)」。 |
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これは何だろう?廃棄されたサイロではないかと思うのだが・・・これも公園内にある。 |
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そろそろ夕方で日が傾いてきた。夕日の中に「巣山古墳」が見える。大型で周りに濠が取り囲んでいる。 |
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南の端に来た。ここから「竹取公園」に入る。排気塔のように見えるこの竹の形を模した円筒形は実はトイレなのだ。 |
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珠をくわえて水面から顔を出す竜。ここ広陵町はかぐや姫の舞台であるから、この公園ができたのだそうだ。 |
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竹取公園内には、斜面を滑り降りることのできる「ちびっこゲレンデ」がある。 |
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広い池に出た、と思ったのは「新木山(にきやま)古墳」の濠だった。宮内庁の管理する陵墓参考地で、立ち入りを禁止する立札が立っている。 |
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今日の行程の最後の古墳は「三吉(みつよし)石塚古墳」。上から見るとホタテガイの形をしているのだが、沈む夕日を背景にするとまるで古代ピラミッドのようだ。 |
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「三吉(みつよし)石塚古墳」のてっぺんに上って南西の方角を見ると夕日に反射して光り輝く教会堂のようなものが見えた。何なのかは不明(unidentified building ???)。 |
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「三吉(みつよし)石塚古墳」のてっぺんから東の方向を向くと「新木山(にきやま)古墳」とその濠が見える。ここが今日のルートの終点。このあと10分ほど歩くと広いバス道路に出て「馬見中二丁目」というバス停から「JR五位堂行き」に乗って帰路につく。古墳ファンであれば、だれでも行ったであろう有名ルートであった。 |
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馬見丘陵公園→山の辺の道→多武峰・桜井→秋篠寺・西ノ京
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