映画の世界

コメント集(19)

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  1. Fanfan 恋人たちのアパルトマン
  2. Les Quatre Cent Coup 大人は判ってくれない
  3. Les Mistons あこがれ
  4. Un dimanche á la compagne 田舎の日曜日
  5. さよなら銀河鉄道999アンドロメダ終着駅
  6. Belle de jour 昼顔
  7. 君の名は
  8. Pépe le Moko 望郷
  9. 禁じられた遊び
  10. 野良犬
  11. 生きる
  12. 上海グランド

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H O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(19)

今年見た映画(2003年)

Fanfan 恋人たちのアパルトマン March 14, 2003

Fanfan最初の場面でピンクを背景にして二人の男女がガムを口にくわえて引っ張り合うシーンがある。ガムの糸をたぐってお互いにくっつこうとするのだが、うまくいかず最後に男の方がはさみでガムの糸をチョン切ってしまう。糸を切られて女の方がうなだれる。

ファンファンは、サーカスのブランコ乗りで、身軽さでは誰にも負けない。その若さと俊敏な動きはまるで妖精のようだ。たまたま彼女と知り合った医学生のアレクサンドルが彼女に惹かれたのも無理はない。

だが、アレクサンドルにはフィアンセがいて、結婚式の日取りも着々と進行中だった。フィアンセは、葬儀屋の娘で、父親は母親の料理でぶくぶくに太り、アレクサンドルも未来の奥さんにたくさん食べさせられる運命にある。

なおも悪いことに、彼女からのバレンタインの贈り物といえば、スリッパだった。こんな生活だから、アレクサンドルが、ファンファンの天衣無縫な性格にすっかり参ってしまったのだ。

だが、アレクサンドルは、最初の日の出会いから、ファンファンには指一本触れまいと心に決めていた。すでにフィアンセとは半分同棲の生活をしており、ファンファンを究極のプラトニックな対象にしようと決心した。

ファンファンの方もアレクサンドルに少しずつ傾いていく。他人の家に上がり込み、勝手にディナーを食べる発想。友達の映画スタジオを借りて、二人でウィーンに行ったつもりでワルツを踊るという思いつき。こんなアレクサンドルをファンファンは好きになってしまう。

だが、自分に指一本触れようとしないアレクサンドルに、ファンファンはいらだつ。もう少しで自分の乳房にアレクサンドルに触れてもらおうとした直前、フィアンセが乗り込んできたりして、二人の間は少しもうまくいかなくなった。

だが、一方でこれを機にアレクサンドルとフィアンセの間の断絶は決定的となり、自由の身となったアレクサンドルは、ファンファンの新しいアパルトマンの隣の部屋を借りる。

しかも彼女が旅行に行っている間に、あいだの壁をぶち抜いてマジックミラーを取り付ける。まるで気づいていないファンファンの一日を眺めながら、アレクサンドルは彼女との共同生活の気分を味わっていた。

だが、このマジックミラーこそ、彼の幼い頃の傷を表す、自分を守る「殻」だったのだ。彼が小さい頃、自分の母親の寝室には男たちが入れ替わり立ち替わり出入りしていた。その辛い記憶が、フィアンセのロールと手を切ったことも相まって、ファンファンにキスすらできない、不感症の男にしてしまっていた。

もちろんこのミラーのことはすぐにファンファンにばれた。ファンファンは自分に触れて欲しいのに、アレクサンドルにはそれができない。がっかりしたファンファンは「妹の所へいく」と言って姿を消してしまう・・・(1993年)

それにしてもソフィー・マルソーの魅力はどうだ。その小柄で引き締まり良く動くからだ。可憐な顔。全身にあふれる生気。

Directed by Alexandre Jardin Writing credits Alexandre Jardin (also novel) Cast:Sophie Marceau .... Fanfan / Vincent Perez .... Alexandre / Marine Delterme .... Laure / Ge'rard Se'ty .... Ti / Bruno Todeschini .... Paul リスニング;フランス語、ちょっと早口で内容が多いが、二人の会話はウィットに富んでいる。

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Les Quatre Cents Coup 大人は判ってくれない March 22, 2003 (再)November 14, 2012 (再)September 28, 2021 (再)2023/08/02

大人は判ってくれない少年映画と言えば、すぐに思い浮かぶのは Stand by Me だろう。フランスのトリュフォー監督も、その駆け出しのころに優れた作品を作った。そのうちの一つが、この作品の原題は「400発の打撃」といい、coup は「殴った一発」というよりは「災難・不幸」のことではないか。英語版では、写真にあるように The 400 Blows である。

少年ドワネルは日本で言えば、中学生だ。母親は堕ろすことを考えていたが、彼の祖母が反対して未婚で産んだ子供で、連れ子で結婚し、共稼ぎの家庭である。母親は仕事の疲れというよりは自分の浮気のじゃまになるので、ドワネルを邪険に扱う。夫を妻は馬鹿にしているので、家の中では今ひとつしっくりいかない。

こんな家庭だから、ドワネルが学校で反抗的な態度になるのも無理からぬこと。授業中に先生に捕まることから始まって次第にエスカレートし、ついには家出を決行する。友達の家に泊まり込んだり、工場の中で夜を明かしたり、牛乳を盗んだりして自分の家のいやな雰囲気からなんとか逃げ出したいと思っている。

母親から優秀であれば1000フランもらえると思って意気込んで書いた論文も、教師から剽窃だとののしられ、ついには停学処分を食らってしまう。金に困ったドワネルは友達と共謀して、自分の父親の会社からタイプライターを盗み出し、これを盗品市場で売りに出すことを考える。

だが、売却に失敗し再びこれを元に戻そうとしたところで発見され、両親はドワネルを少年鑑別所に送り、矯正してもらうように依頼する。フランスでは、少年も普通の犯罪人と同じ留置場に入れられ、護送車で運ばれて供述書を取られる。

彼を待ち受けていた施設は、全国から集まってきたさまざまな犯罪を犯した少年たちが厳しい監視のもとで生活を送っていた。ドワネルはしばらく観察処分を受けるが、この施設の雰囲気になじむはずもなく、最後にはバスケットボールをしている最中にフェンスをくぐり抜けて脱走する。

彼は走る。走る。走りまくる。どこまでも走る。どこへ行きたいのか。行く手には河口があり、そこをさらに進むと海岸に出た。波打ち際に走り寄ると、ドワネルはこちらを振り返った。ここで唐突に映画は終わる。(1959年)

ドワネル役のJean-Pierre Le'audはこの作品を含めてトリュフォーの作った5本の作品の主人公となる。この作品の時は中高生だった彼も次第に成長し恋をし結婚し仕事を見つけていろいろな経験をするが、すべて同じドワネルの人生の一部であり、監督の作った作品と彼の成長が一致している。これは「男はつらいよ」における山田洋次監督と吉岡秀隆の場合に似ている。・・・資料外部リンク

Directed by François Truffaut Writing credits François Truffaut (story) Cast :Jean-Pierre Le'aud .... Antoine Doinel / Claire Maurier .... Gilberte Doinel, the Mother / Albert Re'my .... Julien Doinel / Guy Decomble .... 'Petite Feuille', the French teacher / Georges Flamant .... Mr. Bigey / Patrick Auffray .... Rene リスニング;フランス語、ドワネルの母親の早口には閉口する。

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Les Mistons あこがれ March 22, 2003 (再)2013/01/21 (再)2023/08/10

あこがれわずか20数分の映画だが、これも少年たちを描いたトリュフォー監督の秀作だ。「あこがれ」というより、原題の「はやし立てる少年たち」とか「いたずらがきども」のほうが内容に合っている。まだ性的に未熟だが、性欲だけはどんどん昂進してきている年齢の少年たちが生々しい。

近所の若い娘、ベルナデットはとても魅力的で、少年たちの羨望の的だ。彼女がさわやかな風を切って丘を颯爽と自転車をこいでスカートが風に翻ると、恋心のまだ判らない少年たちはひたすら見つめるのだった。

いや、見つめるだけでは気が済まない。彼女の自転車が木に立てかけてあると、少年たちがやってきてサドルに残った彼女の下半身のほのかな匂いを嗅ぐのだった。そして覗き見に熱中する。

その動物的な衝動を恋に昇華することもできない彼らはベルナデットをはやし立て、いたずらの目標にすることになった。彼女には恋人ジェラルドがおり、二人はしばしば人気のいないところで逢っていたが、ここにもしつこく少年たちはつけてきて二人を困惑させるようないたずらを次から次へと考えるのだった。

だが、その二人の恋は、ジェラルドが登山で事故死をしたために突然終わりを告げる。裸の写真をベルナデットに送りつけた少年たちは、時期的にまずかったことが、苦い思い出を残すことになった。(1957年)

Directed by Franc,ois Truffaut Writing credits Maurice Pons (novel)Cast: Ge'rard Blain .... Gerard / Michel Franc,ois (I) .... Voice / Bernadette Lafont .... Bernadette Jouve リスニング;フランス語。ナレーションのみ。登場人物たちの会話はない。・・・資料外部リンク

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Un dimanche á la compagne 田舎の日曜日 2003年04月04日

田舎の日曜日田舎に住むおじいちゃんの所に、息子夫婦と子供たち、息子の妹にあたる娘が日曜日に集まる、どこの家庭にもありそうな話なのだが、それを見事な作品にしてしまうところがフランス映画の懐の深さだろう。最高の作品は平凡なホームドラマであると誰かが言っていた。

パリから列車で1時間ぐらいの所に住む、画家のラドミラル氏は朝からそわそわしている。今日は息子夫婦と二人の男の子の孫がパリからやってくるのだ。70歳になるラドミラル氏は、すっかり老人になっているが、意気軒昂だ。家政婦のメルセデスが歩くスピードが落ちているから早めに家を出るようにと言っているのに、また駅に出迎えるのに遅刻してしまった。

息子のゴンザーグは、すでに中年で家庭の責任を全部背負い込んでいる。妻のマリー・テレーズは専業主婦だが、その気楽な位置のおかげでのびのびと家庭生活を楽しんでいる。息子たちは小中学生ぐらいだが、いたずら盛りでこの田舎にやってきてもそれは止まらないが、都会の子供らしく木登りや動物の扱い方はへたで、大人たちを冷や冷やさせる。末娘は体が弱く、乗ってきた列車では吐いたばかりだ。

ゴンザーグは妻を亡くした父親のことが心配でしばしば訪ねてくるが、ラドミラル氏にとっては滅多にやってこない未だに独身のゴンザーグの妹にあたるイレーヌのほうが気になってしょうがない。今日はたまたまイレーヌが自分の車を運転して転がり込んできたのでラドミラル氏は大喜び。

ラドミラル氏は広大な敷地を所有し、その美しい庭園の中で子供や孫たちが遊びながら一日が過ぎてゆく。不思議なことにラドミラル氏の目に、自分の敷地の内外で二人の幼女が遊んでいるのがしばしば目にはいる。

死んだ妻が自分の居間に現れてイレーヌにあまり干渉せぬよう忠告したりもする。ラドミラル氏は妻の死後、寄る年波と寂しさで子供や孫たちの訪問が何よりも楽しくなっているのだ。もう彼もそれほど先は長くない。息子のゴンザーグもふと父親が帰らぬ人になってしまった光景を想像したりする。

イレーヌは自分の恋人とうまくいっていないみたいだ。実家にやってきてもいつも気になって何度もその相手に電話をしている。父親はいつまでも娘を自分の手元に置きたいが、そうもいかないだろう。早く結婚させねばならないのだ。イレーヌの運転する車に乗って屋外酒場に出向く。イレーヌを前にしてラドミラル氏は、自分の画家としての将来を語り、一緒にダンスをする。この年になっても自分の画家としての行き先を考えているのだ。

夕方になり、イレーヌは恋人からの電話で突然帰ってゆく。息子夫婦も列車に乗ってあわただしく帰っていった。日曜日はもう終わろうとしている。ひとり自分のアトリエに戻ったラドミラル氏は、イーゼルからそれまで描いてきたソファの絵をはずし、真新しいキャンバスにとりかえた。(1984年)

Directed by Bertrand Tavernier Writing credits Pierre Bost (novel) Bertrand Tavernier Cast: Louis Ducreux .... Monsieur / LadmiralMichel Aumont .... Gonzague / Sabine Aze'ma .... Ire`ne / Genevie`ve Mnich .... Marie-The're`se / Monique Chaumette .... Mercedes / Thomas Duval (I) .... Emile / Quentin Ogier .... Lucien / Katia Wostrikoff .... Mireille / Claude Winter (I) .... Madame Ladmiral リスニング;フランス語。家族同士の会話がはずむ。ナレーションつき。

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さよなら銀河鉄道999・アンドロメダ終着駅 2003年04月07日

さよなら銀河鉄道999前編に対する完結編になる。鉄郎が惑星メーテルを壊滅させ地球に戻りほどなくして、再び宇宙は新しいタイプの機械化人によって蹂躙されるようになった。こんどは、アンドロメダの彼方から送られてくる、小さなカプセルをエネルギー源とする。

地球では、機械化を拒否する人間たちが宇宙の他の地域と同じく激しいゲリラ戦を続けていたが、戦いは人間たちに不利で次第に追いつめられていた。そこへある日突然999が現れ、崩れ果てた地球の駅に到着する。鉄郎はメーテルの「999に乗りなさい」というメッセージを聞き、直ちに乗車しようとするが、機械化人に占拠された駅にたどり着くのは並大抵ではなく、仲間が鉄郎を送り届けるのにグループ全員の血が流れた。

最年少だった鉄郎は、命を犠牲にした仲間たちのためにも、機械化人を倒すべくアンドロメダに向かう。途中、強引な幽霊列車が999を支線に入れて追い越していった。停車駅のラーメタル星は、メーテルの生まれ故郷だという。ここでも機械化人との戦いが行われており、鉄郎は命を救ってくれた少年ミャウダーと友情を結ぶ。

この星の古城に、メーテルと母親プロメシュームそっくりの肖像画を発見して鉄郎は、二人がここから宇宙へ旅だったことを知る。しかも、噂によればメーテルは母親の跡を継いで機械帝国の女王になったのだという。鉄郎は駅まで送っていってもらい、ミャウダーと別れを告げる

ラーメタル星を出発する間際にメーテルが999に乗車した。メーテルとの出会いに心が躍る鉄郎だったが、999の行き先も、自分を呼んだ意図も、本当にメーテルが機械帝国の跡を継いだのかも判らないまま不安な思いに駆られる。実はあのメッセージはメーテルが出したものではなかった。

再び999は、鉄道管理局でない筋から命令を受け、中央管理センターへ行かされる。ここで鉄郎はプロメシュームの腹心であり謎の人物、黒騎士に出会う。黒騎士は鉄郎を眺め、「おまえは多くのことを学んだ」とつぶやく。

さよなら銀河鉄道999アンドロメダの入り口にある小さな惑星に999は停車する。メーテルは自分とここで降りて一緒に暮らしてもよいと言い出すが、地球で自分のために命を落とした仲間のこともあり、生きて帰れないことが判っていても終着駅へ向かう鉄郎の決心は固い。

ついに終着駅に到着した。鉄郎の憤懣やるかたないことに、メーテルは母親と和解し女王の地位につく。だがそれは鉄郎にこの惑星の重大な秘密を見せるための方便だったのだ。

機械化人のエネルギー源は、半殺しにした人間から「命の火」を吸い取り、これをカプセルに詰めることによって得ていたのだ。機械化帝国の繁栄は、無数の人間の命の犠牲のもとに保たれていた。親友のミャウダーも幽霊列車に乗せて運ばれ、屍となって積まれていた。

鉄郎がこれに黙っているはずがない。ただちに激しい戦闘が始まった。プロメシュームは娘の裏切りに怒り狂い、黒騎士に二人の殺害を命じる。もしこのまま事態が推移したら鉄郎はもちろん生きて帰ることができなかったろう。

だが、機械化帝国は「天災」によって滅ぼされた。宇宙空間に機械エネルギーを充満させたため、彼方にあるブラックホールのような巨大重力が引き寄せられて、機械エネルギーで動く何もかも奈落の底に吸い込み始めたのだ。

999もただちにエンジンを止め、手動に切り替えてなんとか重力の吸引から逃れようとする。列車にはひとりでも機械人間が乗っていたら引き込まれてしまうのだ。列車のウエイトレス、メタルメナも機械人間だったが、鉄郎によってその浅はかさを知り、列車から身を投げる。

大混乱の宇宙空間に浮かぶ999の中に突如現れた黒騎士。実は鉄郎の父親だった。かつてはキャプテン・ハーロックらと共に機械化世界と戦う勇士だったが、途中でたもとを分かち、機械化世界の側についた。

今彼が、そうとは知らない息子と対決しようとしている。自分が鬼だと判っていても、この決着はどうしてもつけなければいけない。鉄郎は暗闇の中で黒騎士の頭部を打ち抜く。「鉄郎、強くなったな」と言い残して父親は列車から離れ、宇宙の彼方に吸い込まれていった。

鉄郎は黒騎士が自分の父親だったことも、999に乗りなさいというメーテルのメッセージが父親が鉄郎を呼び寄せるために使った手段だったことも知らない。鉄郎は若者のもつ情熱で自分が正しいと思ったことに命を賭けただけなのだ。

このストーリーは、前作と同じく、永遠の命を機械化によって得ようとする勢力と、限られた命で精一杯生き、子孫へつないでいくことによる永遠の命を求める人々との戦いを描いたものだ。強大な機械文明は、超大国がテクノロジー信仰に走り、弱小民族を犠牲にして自分たちの利益を吸い取る図式を彷彿とさせる。(1981年)

製作総指揮.: 今田智憲 企画.:松本零士 有賀健 高見義雄 監督:りんたろう 作画監督:小松原一男 脚本:山浦弘靖 構成.:松本零士 原作:松本零士 ナレーター:城達也 声の出演:野沢雅子 池田昌子 麻上洋子 肝付兼太 井上真樹夫 田島令子 富山敬 来宮良子 森山周一郎 江守徹

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Belle de jour 昼顔 2003年04月12日 (再) 2013/12/19

昼顔人妻であるセベリーヌは医師の夫ピエールとの結婚生活に何一つ文句のつけどころがなかったはずだ。物質的にも恵まれ、ピエールは寛大で優しい。

だが、セベリーヌは不思議な夢を見る。自分が不感症で、ピエールやその召使いたちによって木につり下げられて何度もむち打たれるというものだ。

ある日、ピエールの友だちであり稀代の色男のアンリから、自分が若い頃頻繁に通ったある売春宿の話を聞く。セベリーヌは決して金に困っていたわけではないのに、足がその方向に向いていってしまう。応対に出たのはアナイス夫人で、彼女は若い女を自分のアパルトマンの小部屋において客の相手をさせていた。

セベリーヌは何度もためらうが、結局アナイス夫人のもとで「働く」ことになる。もともとその美しさと清楚さには定評があり、たちまち客の人気の的になる。夕方5時になったら必ず帰るので、自分を「昼顔 Belle de jour 」と呼んでもらうことにした。

セベリーヌは、罪悪感から不思議な夢を何度も見るようになる。だが客との交渉の中で性の新しい喜びを覚えてゆく。それまではピエールに対しても交渉を避けているようだったのが、次第に夫婦の間でも情熱を取り戻してゆく。だが、営業中にアンリがふと宿を訪れ自分の行為がばれてしまう。アンリは決してピエールには言わないと言っていたが・・・

ある日チンピラが宿にやってきた。彼は一目見てセベリーヌが好きになり、頻繁に通うようになる。これがしつこい男で、昼だけでなく夜にも相手をするようにと迫る。ついには自宅までやってくるが、セベリーヌが断ったために、ピエールが帰るのを待ち受け、銃で撃って逃走する。しかしあえなく警官に射殺された。

ピエールは、半身不随となり、目もほとんど見えなくなった。セベリーヌは本当のことは黙ったままで、献身的にピエールに尽くす。ある日アンリがやってくる。彼はピエールの見舞いに来たのだが、セベリーヌに向かって本当のことをすべてピエールに洗いざらい告げるつもりだという・・・(1967年)

これを高校2年の時に見たときはほとんど内容が理解できなかった。しかし人生の経験を積むと、これが単なるポルノ小説でもよろめき小説でもないことがはっきりしてくる。

女の奥底に秘められた「性・さが」というようなものが描かれており、それらは道徳とか善悪論ではとうてい片が付かない深さをもっているのだ。別に大スペクタクルでも、特撮を使っているわけでも、遠くの国までロケーションに出たわけでもなく、パリの小さなアパルトマンを出入りする男と女のことを描くだけで、心理の奥底まで立ち入った一本の映画ができてしまうのがすごい。

ドヌーブの演技力もすごい。売春宿へ入る時のためらいは、ハイヒールの動きだけで見事に表現されている。また、金持ちの太った東洋人との行為が終わったあと、ベッドにぐったり横たわり、掃除女に向かって「最高に感じたわ」とつぶやくときの顔つきがすべてを物語っている。原作はジョーゼフ・ケッセルの同名の小説。・・・資料外部リンク

Directed by Luis Buñuel Writing credits Luis Buñuel / Jean-Claude Carrie`re Cast:Catherine Deneuve .... Se'verine Serizy / Jean Sorel .... Pierre Serizy / Michel Piccoli .... Henri Husson / Genevie`ve Page .... Madame Anais / Pierre Cle'menti .... Marcel / Franc,oise Fabian .... Charlotte リスニング;フランス語、会話内容は多岐にわたり、かなり高度な表現も多い。

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君の名は 2003年04月19日

君の名は終戦間近、東京の有楽町にある数寄屋橋(すきやばし)のたもと。若い女性の真知子は、激しい空襲にあう。そこへ春樹という若い男性がとなりにやってきて、夜明けまで一緒に火の粉の中を逃げまどった。やがて朝になり空襲はやんだ。

二人は挨拶を交わして別れようとするが、春樹は何を思ったのか、半年後、そして来年の11月24日に、もし二人とも生きていたら再会しないかと提案する。何か感じるところがあって、真知子は承諾する。だが再び空襲警報が鳴り、春樹は「君の名は・・・」と言いかけたところで、離ればなれになってしまう。

二人の出会いはここから始まった。しかし数奇な運命が二人を翻弄してゆく。戦後、真知子は実家のある佐渡へ戻り、親代わりの伯父伯母夫婦のもとで、浜口という男への縁談を勧められる。だが真知子は気乗りしない。伯父の許可が下りず半年後の再会ができなかったこともあって、数寄屋橋でのあの出会いが忘れられないのだ。

彼女は、佐渡への連絡船の中で知り合った女将のおかげで、自分との出会いを雑誌に投稿していた春樹の名前と、彼が生きていることを知り、探し求める。

だが鳥羽にいる彼の姉の所まで行っても、春樹の行方はつかめなかった。浜口が一緒に探してくれたのだが、真知子は春樹のことはもう見つからないだろうとあきらめて、探すのを手伝ってくれた浜口との結婚を承諾する。

だが、空襲の日から1年半後、自分の結婚式の前日ふと数寄屋橋を訪れた真知子はそこに春樹の姿を見つけるのだった。せっかく再会することができたのにそれが二人にとっての別れの日であったのだ。

君の名は浜口は役人として出世街道を進んでいたが、彼には母親がしっかりつき、何かにつけ真知子をいじめた。しかも偶然にも春樹が浜口の職場にはいることになってしまい、浜口は真知子と春樹の再会を知って嫉妬する。

そのいじめ方は尋常でなく、真知子は腹に子を宿しながらも佐渡の伯父伯母夫婦のもとに逃げ帰る。女将の連絡で、急ぎ佐渡にわたった春樹だったが、妊娠していることを知ると、真知子に婚家へ戻るように言う。(第1部・1953年)

春樹は東京の職場を辞め、北海道の牧場へ手伝いにゆくが、アイヌの娘に一目惚れされ結婚を考える。一方、傷心の真知子は流産する。これでますます浜口の母親からいじめを受ける。北海道へ渡った真知子は、春樹と再会し二人の愛を誓い合うが、これを見ていたアイヌの娘は摩周湖に身を投げてしまう。浜口は、二人の関係が変わらないのを知ってますます腹を立て、真知子を裁判所に訴え同居請求を出す。(第2部・1953年))

だが、真知子はどうしても浜口と暮らすことには耐えられず、離婚訴訟は難航するが、浜口の上司が冷却期間をおくために、自分が保護者になって九州の雲仙に自分をしばらく置いてくれると言う。やむなく真知子は九州に暮らすことになる。新たな求婚者も現れるが、真知子の気持ちは変わらない。

浜口はある女性とつきあうようになっていた。だが、彼女は彼の母親の目の前で結婚したときの別居を主張し、これを聞いた母親は自分がいかに真知子をこれまでいじめてきたを悟り、九州まで謝りにゆく。ホテルで肺炎になった母親を真知子は献身的に看病してくれたが、離婚の意志は固かった。

春樹は東京で仕事を得るが、外国に出張することになり、別れの前に再び九州の真知子の前に姿を現した。その後真知子は病に倒れたが、母親のこともあって浜口はようやく離婚に同意し、真知子は自由の身となったのだった。

病気は次第に悪化したが、女将のおかげもあって急遽春樹は帰国し、病院に駆けつけた。数寄屋橋の出会いから、ありとあらゆる困難を乗り越えてようやく二人の愛は実ったのである。(第3部・1954年)

この映画や、その前身となったNHKの連続ドラマが、終戦からようやく日本が社会を再び作り上げていこうとする時期に発表されたこともあって、大変な人気を博したことは想像に難くない。筋が多少荒唐無稽でも、ゆるがない純愛ストーリーは戦後の生活を立て直そうという人々の気持ちにぴったり合ったドラマになった。

製作:山口松三郎 監督:大庭秀雄 出演:佐田啓二 /岸恵子 /淡島千景/ 月丘夢路/ 川喜多雄二/ 小林トシ子 / 淡路恵子 /笠智衆 /市川春代 /望月優子/野添ひとみ/三橋達也/大坂志郎

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Pépé le Moko 望郷  2003/04/25 * 2010/04/06

望郷アルジェリアがまだフランスの植民地だった頃。地中海に面した都市、アルジェ外部リンクの一角カスバ地域は世界中のありとあらゆる人種が入り交じる国際都市だった。街は山から海に落ち込み、その傾斜地にはローマ時代から営々と人々が作り上げた建物が迷路や蜂の巣のように入り組み、地元の人間でないとたちまち迷子になってしまうのだった。

だからお尋ね者たちがカスバに逃げ込むと、警察も手の施しようがなかった。特にぺぺ・ル・モコはパリに生まれ、フランスをはじめ各地で強盗を働き、人々の噂になるほどのギャングのボスで、彼がこの町に住み始めてから何とかして逮捕しようとするが、どうしてもうまくいかない。

ぺぺは、忠実な内縁の妻イネスと共に、お気に入りの弟子ピエロや数多くの子分を従えて平和に暮らしていたが、国際手配を受けており、このカスバの街から外に出ることができない。熱血漢である彼はこの暮らしに飽き飽きし、自由な外の世界に出たいと思い始めていた。

警察は地元のスリマン刑事の悠長なやり方に飽きたらず、早速ぺぺを追い込もうとするが失敗に終わる。ぺぺがピエロをかわいがっていることを知り、スパイを使ってピエロをだまし、ぺぺを街の外におびき出そうとするが、ピエロもスパイも命を落とすという悲惨な結果に終わる。

望郷そのころ、パリから富豪のグループ男女4人がカスバに観光に来ていた。その中のひとりギャビーは、ふとしたことからカスバに迷い込み、ぺぺと出会う。二人は目が合ったとたんに恋に落ちた。しかもギャビーは、ぺぺが小さい頃暮らしていたパリ市内の近所に住んでいたこともあって、ぺぺは強烈な望郷の念に駆られる。

二人は再び会う約束をするが、スリマン刑事の策略にかかり、ギャビーはぺぺが射殺されたという偽のニュースを聞かされ、帰国の船に乗る。ギャビーとはもう会うことができなくなると知ったぺぺは、イネスが止めるのも聞かず、街に出る石段を駆け下りていく。

国へ帰る船に乗っているギャビーを追ってぺぺも船に乗り込む。だがあとを追ってきたイネスはペペが国外に行ってしまうことをおそれ、そのことをスリマン刑事に漏らし、ぺぺはあっけなく捕まってしまう。

港を離れる船。甲板に立ち、いっさいの事情を知らないギャビー。ギャビーは恋人というよりは望郷の象徴だったのだ。汽笛のために届かないことを知りながら、ギャビーの名を絶叫するぺぺ・・・(1937年)

Directed by Julien Duvivier Writing credits Jacques Constant Julien DuvivierCast :Jean Gabin .... Pepe le Moko / Mireille Balin .... Gaby Gould / Gabriel Gabrio .... Carlos / Lucas Gridoux .... Inspector Slimane / Gilbert Gil .... Pierrot (as Gilbert-Gil) / Line Noro .... Ine`s / Saturnin Fabre .... Grandfather リスニング;フランス語。せりふの量は多い。カスバの住民は全部フランス語をしゃべっている。

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Jeux interdits 禁じられた遊び 2003/4/29 * 2010/07/12

禁じられた遊び第2次世界大戦中のフランスの田舎。パリからは大勢の疎開者が車や徒歩で農村地帯へ向かっていた。不幸なことに、5歳になるポーレットの両親は、彼女が愛犬を追いかけるのを橋の上までついてゆき、ドイツ空軍の機銃掃射で命を失った。

ポーレットは混乱の中、川辺をさまよい、牛追いの少年ミシェルに出会う。二人はミシェルの暮らすドル家に戻り、彼の両親や兄や姉たちと一緒に暮らすことになる。はじめはうなされていたポーレットは、ミシェルをはじめとしてまわりの家族たちの中で次第にこの家の生活にとけ込んでゆく。

ミシェルの兄の一人は、空襲で興奮した暴れ馬に腹部を蹴られ、血を吐いて死ぬ。ポーレットは、自分の両親の死、愛犬の死と、たて続けに遭遇し、ミシェルの兄の葬儀を見て、死者を土に埋めて弔うことを知る。両親が宗教に関心がなかったせいか、それまで十字架の意味も知らなかった。そこでミシェルと二人で訪れた水車小屋を動物たちの「墓場」として飾ろうとする。

一緒に暮らすうち、ミシェルは愛くるしいポーレットがすっかり気に入り、彼女の望みはできるだけかなえてやろうと奔走する。教会の墓場から十字架を盗み出し、前から仲の悪かった隣の家の人々も巻き込むが、結局ばれて、この「禁じられた遊び」は終わりを告げる。

突然ミシェルの家にやってきた警官はミシェルを逮捕にきたのではなく、ポーレットを孤児院に連れてくるためだったのだ。一瞬の家庭的暖かさを味わったポーレットは再び連れ出され、見知らぬところへ連れて行かれるのだった。戦争で振り回される幼い少女に戦争への強烈な告発が込められている。イエペスによるギターのテーマ曲は、スタンダードになった。(1952年)

Directed by René Clement Writing credits Jean Aurenche (also dialogue) Pierre Bost (also dialogue) Cast: Georges Poujouly .... Michel Dolle / Brigitte Fossey .... Paulette / Amedee .... Francis Gouard / Laurence Badie .... Berthe Dolle / Madeleine Barbulee / Suzanne Courtal .... Madame Dolle / Lucien Hubert .... Dolle, the Father / Jacques Marin (I) .... Georges Dolle リスニング;フランス語。子供たちを中心に、単純な会話、だがいつまでも心に残る。

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野良犬 2003年05月9日 (再)2018/10/04 (再)2024/01/06

野良犬時は、終戦直後。日本の都会は被災者や復員軍人でごった返し、社会は混乱していた。復員列車で帰る途中、リュックを丸ごと盗まれた村上は、この社会に巣くう悪をなんとかせねばならぬと思い、刑事を志願する。

うだるような夏の日、まだ新任の村上は睡眠不足と疲労から、うっかり満員バスの中でコルト拳銃を「ハコ師」に掏られてしまう。警察官が銃を奪われるとは重大責任だ。村上は辞職を考えるが上司に諭され、力の限り捜査をすることを決意する。

村上はピストルを売りつけてくることを期待して、食い詰めたような格好で、戦後の雑踏の中、場末の危険地帯を何日もさまよい歩く。スリ専門の刑事のおかげで、掏ったコルトを流したらしい女は見つかったが、とっくの昔にピストル盗品を扱う組織へと消えていた。

たっぷり10分間、この映画は戦後日本の混乱して猥雑な、だがエネルギーに満ちた街を見せてくれる。ものが豊かになり、同時に生命力の枯渇した現代とはわずか70年しか隔たっていない。

やがてチンピラに声をかけられ、ピストル商売をしている女をあげる。そのころピストルで、ある女性がけがをする事件が持ち上がり、犯行に使われたコルトが、すられたものであることが判り、村上はショックを受けるが、こんども上司のおかげで淀橋署の佐藤刑事を紹介され、彼のもとで捜査を続けることになる。

佐藤のおかげで女の口から、ピストルを手広く扱う本田という男が割れ、野球見物に来たところを見事な策略で捕まえる。だが、肝心のピストルはすでに人手に渡っていた。佐藤刑事は足で捜査する。何十足もの靴を履きつぶして得た経験と勘をもとに、「遊佐」という男の姉、たびたびつきあっていた友だち、そして恋人の踊り子、並木ハルミにたどりつく。

だが彼女は強情で感情的になっており、口を割ろうとしない。そして「遊佐」というのはえらく陰気な男であり、村上と同じく復員列車の中でリュックを丸ごと盗まれていたのだと判明する。そして村上とは反対に悪の道に走っていったのだ。すでに起こしたピストル傷害事件で奪った4万円を使い尽くせば、再びピストル強盗を始めるだろう。あと4発残っている。

予測は当たり、中央線沿線の裕福な家庭の夫人がやはり村上のピストルを使って殺される。あと3発残っている;再び佐藤と村上は並木から情報を得ようとするが、彼女は相変わらず態度を変えない。

自分たちがこんな目に遭うのはすべて世の中が悪いのだという。ショーウィンドーにきれいなものをみんなが欲しがるように見せびらかすのが悪いのだという。村上はそんな彼女に、自分もリュックを盗まれたことを告げる。

佐藤は今にも雷雨のやってきそうな空のもと、丹念に聞き込みを続け、ついに遊佐の泊まっているホテルを突きとめる。だが感づかれ、公衆電話で村上と連絡を取ろうとしていた佐藤は撃たれて重傷を負う。

病院の朝、看病で疲れ果てた村上を起こしたの並木ハルミだった。彼女はついに遊佐の居所を伝えた。高円寺の駅のまわりは、まだ豊かな田園地帯だった。林の中、遊佐を追いかけ、どこかの家からピアノの練習が聞こえてくる中、一発で手を撃たれて負傷しながらも自分の命を省みず飛びかかった村上は、泥まみれになってようやく遊佐を逮捕する。(モノクロ・1949年)➡資料?O???????N

監督:黒澤明 助監督:.本多猪四郎 今泉善珠 脚本.黒澤明 菊島隆三 配役:村上刑事 ....三船敏郎/佐藤刑事 .....志村喬/並木ハルミ ......淡路恵子/ハルミの母 .....三好栄子/ピストル屋のヒモ ......千石規子/桶屋の女房 ......本間文子/スリ係石川刑事 ......河村黎吉/光月の女将 ......飯田蝶子/桶屋のおやじ ......東野英治郎/阿部捜査主任 ................  永田靖/呑屋のおやじ .....松本克平/遊佐 ................  木村功

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生きる 2003年05月16日

生きる東京近郊の市役所に勤める渡辺氏は、もう30年も無欠勤で今は市民課の課長をやっている。市民課というのは市役所の複雑な網の目の中で、いち早く住民の声を取り上げて実行に移すのが仕事なのだが・・・

渡辺はミイラというあだ名が付くほど毎日の仕事を淡々とこなし、ほかの役人と同じように仕事を次々とたらい回しにして、自分たちによけいな仕事が来ないように、まわりから目立たないようにひたすら生きてきた。

その彼に重大転機が訪れる。胃ガンの宣告だ。長くて1年、おそらく半年の命だろう。死刑宣告に等しい自分の運命に、渡辺氏は初めて自分の生き方を振り返って思い悩む。

妻には先立たれ、息子夫婦と同居する渡辺だが、自分の退職金や貯金をあてにしている二人とは距離を置いている。息子にはっきりと胃ガンのことも言えない。兄夫婦ともしっくり行く仲ではない。

飲み屋で知り合った小説家に連れられて渡辺は夜の街を歩く。これまで真面目一本で知らなかった遊びを体験し、残された人生を大いに楽しむしかないと考える。役所を無断欠勤し、同僚や部下は大いに怪しむ。

朝帰りの日、渡辺は市役所の単調な仕事に飽き飽きして辞職願いのハンコをもらいに来た若い女性、小田切に出会い意気投合してつかの間の楽しみを味わう。だが、息子夫婦や兄夫婦は若い女を作ったと勘違いし、ますます辛くあたられる。

だがそれも長く続かない。渡辺は小田切のはちきれるような若さと健康がうらやましくてしょうがない。だが自分の命に短さをただ思い悩んでいるだけでは何も生まれないのだ。

小田切が市役所を辞めたあと、仕事としてやっている子供の喜ぶおもちゃのウサギづくりが楽しくてしょうがないというと、渡辺も自分の仕事の中に、生命を燃焼できるものがあるのだと気づく。

残る人生の生き方に気づいた渡辺はさっそく職場に復帰し、その日から住民の願いであった児童公園づくりに奔走する。それから半年後、渡辺は死んだ。児童公園のブランコにのり、「恋せよ乙女、赤き口びるの色あせぬうちに・・・」と歌いながら、とても楽しそうにしていたという。

葬儀の日、市役所の連中は在りし日の渡辺について話の花を咲かせる。誰が児童公園を作った功労者であるかが話題になる。助役や市会議員の選挙運動の犠牲になったという者。その最中に、児童公園づくりで陳情してきた主婦たちが焼香に訪れる。その本当に悲しむ様を見て、市役所の連中は黙りこくる。

渡辺が無断欠勤の後、突然人が変わったことを振り返り、本人ははじめから自分が胃ガンであったことを知っていたのではないかといぶかる者。

話は市役所の忙しいだけの無気力体制のことに移ってゆく。渡辺が実行力を発揮してどんな妨害にも負けず仕事を押し進めたことが思い出され、全員これからは彼のように働くことを誓い合う。

翌日、いつものように市役所での業務が始まった。新任市民課課長は、住民の陳情に大して「土木課へ!!」とどなってたらい回しもいつもと変わらない。(1952年白黒)

監督 .....  黒澤明 脚本 .....  黒澤明 橋本忍 小国英雄 音楽 .....  早坂文雄 演奏 .....  キューバン・ボーイズ P.C.L.スイングバント P.C.L.オーケストラ 配役 渡辺勘治 .....  志村喬/市民課課員・木村 .....  日守新一/市民課課員・坂井 .....  田中春男/市民課課員・野口 .....  千秋実/小田切とよ .....  小田切みき/市民課課員・小原 .....  左卜全/市民課/主任・斎藤 .....  山田巳之助/市民課係長・大野 .....  藤原釜足/勘治の兄・渡辺喜一 .....  小堀誠/勘治の息子・光男 .....  金子信雄/助役 .....  中村伸郎

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上海グランド 新上海灘 San seung hoi taan 2003年05月22日

上海グランド時は1935年。日本軍が満州へ侵略を開始し、中国各地では抗日運動が激化しつつあった。折から台湾の抗日運動員のひとり、アーハンは、同志と共に貨物船に幽閉され、残酷な拷問を受けていた。

次々と同志たちが、怒り狂った女尋問官に機関銃で殺される中、猛烈な嵐の中を海中に飛び込んだ。彼の運はついていた。彼の目の前には上海のバンド地区がかすんで見えたのだ。

海岸公園に倒れていたアーハンを発見したのは、町の汲み取り屋リクだった。下町のチンピラ仲間はアーハンのピストルを取り上げようとするが、リクは自分の母親に、彼に食事を与えるように頼む。

リクは、上海の町で、何とか頭角を現そうとあがいている。この時期の上海ではギャング抗争が派手に展開し、有望なボスのもとにつけば、何とかなるかもしれない。

たまたま通りかかった黒塗りの乗用車に乗っていた娘、ファン・チンチンに一目惚れしたリクは、たまたま誘拐しようとしたちんぴらのボスを追いかけて彼女を無事助け出す。

家へ帰ってみると自宅が火事だった。ボスを怒らせたためらしい。母親がいない。まず助からないと思っていた矢先、アーハンがリクの母親を担いで炎の中から現れた。

リクはアーハンと兄弟のように助け合うことを誓う。二人は火を付けたボスのアパートに乗り込み、幹部を殺す。リクの名は一躍有名になり、ビジネスとギャング界にのし上がっていく。

ひげを生やし、映画館を経営するほどになったリクだが、ファン・チンチンは今ひとつ自分に気持ちを傾けてこない。それもそのはず、実はアーハンとの間に過去の秘密があったのだ。(第1部)

ファン・チンチンがかつて中国北部を列車で旅をしていたとき、アーハンは日本軍に追われ彼女のコンパートメントに飛び込んできたのだ。わずかな間だったが、彼女はアーハンをかくまい同時に深く愛し合うようになる。

だが追っ手が迫り、二人は多分二度と会えないであろう運命に引き裂かれて別れたのだった。それが上海の町で二人は再び会うことになった。今回もアーハンは追っ手と激しい撃ち合いをして、九死に一生を得た。

リクは、事実を知ってショックを受けるが、潔くファン・チンチンを譲る気持ちになる。ただし彼女を不幸にしたらアーハンを殺すという条件付きで。(第2部)

しかし運命は過酷だった。かつて台湾の抗日のメンバーを陥れ日本軍に引き渡したのは、今では上海の大物のひとりとして実業家として成功しているチンチンの父親キンユーだったのだ。同志たちから身の潔白を証明するように迫られたアーハンは決然としてファンの家に赴く。

アーハンは、激しい撃ち合いの末、キンユーをプールに追いつめた。目の前にはチンチンがいたが、彼女の父親を撃ち殺す。すべては片づいたが、チンチンが以前の快活さを取り戻すはずはなかった。

リクと会ったアーハンは自分から銃撃を仕掛けて自分のピストルは空砲にして瀕死の重傷を負う。チンチンを幸せにできなかったからだ。

リクは何とかしてアーハンを無事上海の町から出してやりたいと尽力するが、ギャングたちは分裂し、リクは、アーハンを殺したと思いこんだ台湾系の若者に撃たれて命を落とす。

アーハンは仲間に連れられて病院に急ぐが、薄れゆく意識の中に、リクやチンチンとの思い出が走馬燈のように浮かび上がるのだった。(1996年)

Directed by Man Kit Poon Credited cast:Leslie Cheung .... Hui Man Keung / Andy Lau .... Ding Lik / Woo-sung Jung .... Ryu So Hwang / Almen Wong Pui-Ha .... Female Assassin / Jing Ning .... Fung Ching Ching / Amanda Lee (I) .... Lai-Man / Hsing-kuo Wu .... Fung King-Yiu / Shun Lau .... Uncle Lau リスニング;広東語

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