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今年見た映画(2013年)
L'homme qui aimait les femmes 恋愛日記 2013/04/05 (再)2023/08/30 原題は「女たちを愛した男」であって、”女”は複数形である。一見、カサノバやドン・ファンのように際限なく女を取り換えてきた男、というように見えるが、どうもそうではない。男ベルトランは目の前を通り過ぎていく女たちの脚線を眺めるのが大変好きで、気に入ればすぐに声をかける。だが女たちはたいていいやだとは言わない。「ナンパ」の名手なのだ。 特にベルトランはハンサムでもないし、かっこいいわけでもなく、会話がうまいわけではない。しかし多くの場合しばらくすると二人はベッドにいる。普通の男にみられるように虚栄心に囚われたり、権力や財力を嵩にきる男でもない。迎える女たちも世間に流されるようなタイプはいない。もちろん断られる場合もある。仕事は、飛行機の風洞実験や船舶の造波実験を行う技師らしい。 中年に至り、自分の自叙伝みたいなものを書きたくなった。毎晩せっせと書きまくったが、清書をしてくれるタイピストが、とても読むに堪えられないといって仕事を断ってきた。それでも頑張って最後まで書き、ある出版社の女性編集者が気に入って、ついに出版されることになったが、車にはねられて息絶える。だが、自分の葬式には昔の女たちが次々とやってきたのだった。・・・資料 上へLes deux anglaises et le continent 恋のエチュード 2013/04/07 (再)2023/10/10 原題は「二人のイギリス娘と大陸(男)」となろうか。全体を通してみれば、恋の研究、つまり人生の勉強になったということになろう。フランスに住むクロードは母親の親友がイギリス人で、アンとムリエルという二人の美しい娘がいた。クロードは英語の勉強を兼ねて、しばらくイギリスにわたり彼らと住むことのなったのだが、当然のことながら、この娘たちに恋の感情が芽生える。だがアンはいち早く察して、妹のムリエルに譲るのだった。だが、クロードとムリエルは一年もたたずに、関係はしぼんでしまった。 やがてアンが彫刻家になるべく、パリにやってくる。クロードは美術評論の仕事で彼女と会い、スイスの別荘で結ばれる。だがアンは恋多き女で、ほかの男とも付き合うのだった。社交的なアンと比べ、内向的なムリエルは、クロードとアンの関係を知ってショックを受けるが、それでもあきらめきれないでいた。だが、姉妹で愛人になるわけはいかない。 アンは結核におかされて死んだ。クロードの母親も死んだ。二人とももはや間を隔てるものはなくなった。教師になるべくブリュッセルにやってきたムリエルはクロードに初めて抱かれるが、彼女はこれでクロードとの恋も完全に終わったと心に決めるのだった。・・・資料 上へ東京家族 2013/04/11(航空機の映画サービスで) (再) 2014/01/26(テレビ劇場) 山田監督は、小津監督の「東京物語」をリメイクしたわけだが、すべてが現代劇に翻案されており、2011年の東日本大震災のことも出てくる。尾道に住む老夫婦が、東京に住む医者をしている長男と、美容室をしている長女、二男のところへ訪れるが、みんな忙しくて、ふたりはゆっくり東京見物もできない。 夫のほうは、昔の友達に会い、深酒をして子供たちのふがいなさを嘆きあう。妻のほうは、二男の部屋に泊めてもらうが、そこで二男のいいなずけと出会い、親しくなる。 妻は、旅の疲れか、東京で倒れ、帰らぬ人となる。葬儀は尾道で行われ、長男と長女が先に帰った後、二男のいいなずけは、残された夫から記念の時計をもらって、東京に戻ることになる。 (再) 2020/07/08 小津監督の「東京物語」のリメイク。舞台は東日本大震災のあった後の現代で、広島の瀬戸内海に浮かぶ島(小津の作品では尾道)から、年老いた夫婦が東京に住む子供たちに会いに来る。医院を経営する長男、美容院を経営する長女、舞台美術に情熱を傾ける次男の三人がそれぞれに暮らしている。 ただ、いずれも東京の生活に忙しくて両親にかまってやれない。それで横浜の豪華ホテルに招待したりするが(小津の作品では熱海)、途中で帰ってきてしまって、その晩宿無しになってしまった二人は、父親がかつての同郷の親友のところに飲みに行くが宿泊は断られ、美容院に酔っぱらって舞い戻る。 母親のほうは次男の部屋に転がり込むが、そこで次男のフィアンセである紀子さんと出会い、彼女を大いに気にいって医院に戻ってくる。だが、妻は旅の疲れのせいか突然倒れた。そしてすぐに死んでしまい、葬儀は広島に戻って行われることになる。葬儀の後、遺された父親は紀子さんを見て、やはり妻が言っていたようにいい人だと気づき、心を開いて形見の時計を贈るのだった。 小津の映画では次男は戦争で死んで、紀子さんがいつまでも独身を守っている。でも彼女がこの両親の心を開いたという点では共通している。小津の作品では東京に住む人間がばらばらになっていることが強調されているが、山田監督の作品ではどの子供たちもそれなりに温かい人間関係を保っているように見える。➡資料 Hitchcock ヒッチコック 2013/04/15 (航空機の映画サービスで) ヒッチコックは、その監督業も油に乗り、人気は上々であったが、次にどんな作品を作ればいいのか悩んでいた。妻の友人が作った脚本も気が乗らない。そこへシャワーを浴びた女性が惨殺されるというショッキングな事件が起きた。これをもとにした本が出版され、周りの大反対にもかかわらず、これを映画化することを決心する。 タイトルは『サイコ』といった。自分は放っておかれて妻は面白くない。男友達との仕事に熱中して、夫婦の間がぎくしゃくする。映画化の仕事は、映画会社に認めてもらえず、ヒッチコックが自前でやることになる。費用はどんどんかさみ、万が一失敗したら、それまでの屋敷やプールなどの資産はすべて無に帰す危険にさらされていた。 最初の試写では評判がよくなく、編集のし直しを余儀なくされた。思案の末、わずかな系列の映画館で、多くの人々をひきつけるキャッチフレーズを放ってみた…・・・資料 上へ大阪に住む堀江青年は、高校のヨット部にいるときから、太平洋をヨットで渡る夢に取りつかれ、卒業後なんとかそれを実行に移そうと必死になる。ところが当時、日本はまったくの鎖国状態で、海外に出ることはもちろん、パスポートさえなかなか取れないのだった。 業を煮やした堀江青年は、密航しかないことを知る。ヨット部の先輩と船を共同で持ったのち、ついに自分の船を買う金をためて造船所に注文する。ありとあらゆる準備を進め、両親や妹の反対や心配をよそに、ついに秘かに出発する。 日本近海では荒れた天気に苦しんだが、太平洋に出ると、自分のペースで進んだ。そして霧の深い風のない日、突然陸が見えた。長い間念願していたサンフランシスコの金門橋が目の前に見えていた。・・・資料 上へ幸福(シアワセ)の黄色いハンカチ The Yellow Handkerchief 2013/05/01: 2021/01/06 東京に住む青年は、失恋し、仕事も辞めてしまう。退職金で新車を買い、釧路行のフェリーに乗り込む。北海道に着くと、同じく東京からやってきた、車内販売を仕事とする少女に出会い、行きずりの二人は北海道を旅することになる。そしてどうしようもない若者だった二人が、人生に一度あるかないかの貴重な体験をして、一気に人生というものを知る幸運に恵まれる。 たまたま男が乗り込んできて、しばらく車に乗せてもらうのだが、青年と少女はその男が暗い過去を持っているらしいことに興味を持つ。たまたま無免許運転で警察に捕まったことから、男が実は殺人で6年ぶりに刑務所を出たばかりだということを知る。 男は九州から流れてきた、元炭坑夫だった。そして実は夕張に、刑務所に入れられたのを機に別れた妻がいた。男はハガキを出し、間もなく到着することを妻に予告していた。だが、妻が受け入れてくれるか、新しい生活を得てすでに引っ越してしまったか、わからない。 青年も少女も、男がぜひ妻に会いに行くようにすすめ、車は夕張市内に入った。自宅のこいのぼりを立てる柱には、目印があるかもしれないのだ。だが男は不安で、途中から戻ろうとする。だが若い二人は彼を励まし、ついに自宅から数十メートルのところまでやってきた。そこからは黄色いハンカチが鈴なりについているのが見えた。妻は待ってくれていたのだ! これを見てわかるのは、この映画の主人公は出所した男ではなく、あの頼りない若い二人であり、観客であるかもしれない。・・・資料 上へOut of Rosenheim バグダッド・カフェ 2013/05/04 ドイツ人とアメリカの人々という、変わった組み合わせ。原題は「ローゼンハイムから出てきて」 ラスベガスの近くの砂漠にバグダッド・カフェがある。その近くで、ドイツのローゼンハイムからやってきた夫婦が砂漠の真ん中で喧嘩別れして、妻のジャスミンはカフェ付属のモーテルに転がり込む。 カフェはさびれていて、コーヒーメーカーがこわれたまま、ろくでなしの夫は家出をし、妻と遊び好きの娘、ピアノを弾いてばかりいて、自分にも幼い赤ん坊がいる息子、そして料理係がいた。 別れるときにまちがって夫のトランクを持ってきてしまい、デブで男装したジャスミンは不思議な外国人として見られていたが、次第に周りに溶け込み、近くに住む画家の老人とも仲良くなってゆく。すっかりカフェの人々と仲良くなる。 夫のトランクにあった、奇術セットをたまたま練習したら、大当たり。連日カフェは大賑わい。だが、ビザがきれ、労働許可もないので、いったん帰国せざるをえなかった。でも再び戻ってきたジャスミンは、ここに腰を落ち着ける素晴らしい方法を提案されたのだった。・・・資料 上へ銀河鉄道999エターナル・ファンタジー 2013/06/29 前作「アンドロメダ終着駅」でわかれたメーテルと鉄郎は、再び会う。メーテルが999に乗って、地球に着陸し、囚人としてひどい目にあっている鉄郎を救出に来たのは、新しい生命体が、地球からこれまでの生命体を追い払うのを阻止するためだった。 最初の臨時停車駅、「蛍の星」で、鉄郎は泊まったホテルの少女に「未来をよろしく」といわれる。そしてそこに現れた敵に、危うく殺されそうになるが、生き延びた代わりに鉄郎たちの到着を知らせなかった、この星と住民は破壊されてしまう。 そしてそのあとに聞かされたのが、太陽が超新星になり、地球が消滅してしまったという知らせだった。絶望に沈む鉄郎に、メーテルはこれから向かう「エターナル終着駅」で、地球を救うすべがあるかもしれない、そして何よりも鉄郎が必要とされていることを告げるのだった。・・・資料 Before Sunrise 恋人までの距離 2013/07/09 原題は「夜明け前」。ウィーンを経由して、パリに向かう長距離列車の中。車内で憚りなく、大声でけんかをする中年夫婦から逃れて、座席を変えたパリの女子大生セリーヌは隣の席に座るアメリカ人の青年ジェッシーとふと言葉を交わすうち、お互いに非常に話が合うことに気付く。 意気投合した二人はウィーンで下車して、翌朝ジェッシーが飛行機に乗るまでの間、デートすることにした。二人の話題は、若者らしい、とりとめのない、また不安で先の読めない気持ちを反映していたが、それまで経験したことのない、人間的なつながりが作られてゆくのが感じられた。 手相占い師に見てもらったり、ドナウ川の岸にいた詩人に詩を作ってもらったり、酒場の主人をあとで送金すると説得して、赤ワインを出してもらったり、「第三の男」で有名な観覧車をはじめとして、ウィーンの街をさ迷い歩く。列車を降りた瞬間から、二人はもう恋人までの距離の圏内にあった。 だが、二人の住む場所はあまりに遠く、長距離恋愛は不可能だった。この夜だけの約束だったが、夜が明けてそのつらい別れの時が来た。相手に住所を知らせることもせず、半年後にウィーンの駅で再会する約束をしたものの、いったいどれだけの実現性があるだろう?続編は Before Sunset ・・・資料 上へ恋人までの距離(Before Sunrise)の続編。前作でウィーンで恋に落ちた二人が、半年後の再会を約束するところで終わったわけだから、観客は何としてもそのあとどうなったのか気になるところだ。実は半年後の再会は実現せず、それぞれあきらめて、ジェシーは結婚を、セリーヌは仕事に打ち込んでいた。 それが、ジェシーが、自分の体験を本にして出版したのが、かなり売れるようになり、パリにもプロモーションでやってきたのにセリーヌは気づき、9年後に二人は再び会うことになった。前回と同じく二人の会話だけでストーリーは進行する。 そして、カフェやセーヌの河船や、自動車の中で、お互いの現実の苦しみや悩みを話すところは、つい昨日ウィーンにいた時と少しも隔たりがない。ジェシーは、飛行機の時間が迫っていることは重々わかっているが、セリーヌの部屋で彼女の歌を聴き、ニーナ・シモンのCDを聞きながら、彼女の部屋から動くことができなくなっているところで映画は終わる。・・・資料 上へTom & Huck トムソーヤーの冒険 2013/07/12 マークトウェィンの「トムソーヤーの冒険」の中で、”ペンキ塗り”からはじめて、恋人のベッキーをまぜながら、”墓場での殺人事件””洞穴での遭難”の3つに焦点を合わせて作られている。中心はハックとの友情だ。 ハックと一緒に死んだ猫を持って行って、疣(イボ)を取るおまじないをしようと深夜の墓場に出かけたところ、ちょうど医者が、ならず者インジャン・ジョーに殺されるところを目撃してしまう。しかも酔いどれのマフ・ポッターが濡れ衣をかぶせられる。ハックは黙っているべきだと主張した、だが、トムは勇気を出して裁判で証言をして、マフを無罪にし、一躍村の英雄になる。 ピクニックで洞穴探検に出かけたトムとベッキーは道に迷い、洞窟内に逃亡したインジャン・ジョーと遭遇してしまう。あやわというところに、村から去ってしまったはずのハックが現われ、トムは命を助けられて、金貨まで発見する。再びトムは英雄になった。・・・資料 上へThe Adventures of Huck Finn ハックルベリーフィンの冒険 2013/07/13 これは、マーク・トウェインの原作から、ジムとハックの出会い、復讐家族との出会い、いかさま2人組との出会いを中心に描いている。トムはまったく出てこない。代わりに奴隷から逃走したジムと、世間の常識に逆らって友情を貫こうとするハックとの間が強調される。 ハックの父親が突然現れて、ハックを森の小屋に監禁したが、うまく自分が惨殺されたように見せかけて、ミシシッピー川に乗り出す。最初に上陸した島には、逃走したジムがいた。二人は筏を見つけて、黒人が自由になれる、カイロの町を目指して川を下る。 復讐によって一族が全滅したり、詐欺師が善良な少女をだまして金を奪おうとしたり、逃走奴隷の首にかかっている懸賞金めあてでジムがつかまったり、岸の上の人間社会は、うんざりさせられるばかり。ようやく解決したのもつかの間、村の未亡人によって、ハックは”文明社会”に連れ帰られる羽目となる。・・・資料 上へThe Day the Fish Came Out 魚の出てきた日 2013/07/30 (再)2023/10/19 内容に即した翻訳は「魚の浮いた日」がふさわしい。世界中にある核爆弾は、現在誰にどのようにして管理されているのか?その危険性も知らされず、いい加減な保管が行われているのであろう。そして悪い偶然が重なった時、大事故が起こる。その寒気を催すような未来を描いたSF傑作のひとつ。 ギリシャの小島、カロス島上空で、アメリカ軍の爆撃機が故障して墜落し、その時に核爆弾を島に落としてしまう。回収のため、特殊部隊が島に派遣されるが、人々に怪しまれないように、リゾート開発の調査に来たことになる。幸い爆弾はみな見つかり、これまで寂れた島だったのが、突如有名な観光地になって、大勢の観光客が訪れるようになった。 ただし、一つだけ鉛の箱が見つからない。特殊部隊は島にはないとあきらめ、海中にも捜索を拡大した。そのころ、島を訪れた考古学者の尻軽娘の助手が、男といちゃついている間に、”金属は何でも溶かす薬”を何者かに盗まれてしまう。 実は、ヤギ飼いが、妻とともにその箱を発見し金塊が入っていると信じて、偶然見つけたその薬を使って箱を開けてしまったのだ。何も金目のものがないと知った夫婦は、その箱を海中に投棄し、茶色い卵のような中身を村の貯水槽にも投げ込んだ…その夜、観光客がパーティで騒いでいるとき、海面には無数の魚の死体が浮かんだ。「皆さん、重要なお知らせです…」という放送がパーティ会場に流れるところで、映画は突如終わる。…・・・資料 上へOur Daily Bread いのちの食べかた 2013/07/31 現代の先進国における飽食社会では、常に安くて大量の食材が供給されなければならない。かつてのように農家の裏庭で細々とブタやヤギを飼っていたのでは、とても巨大なスーパーの要求にこたえることができない。 このため、農業、漁業、牧畜業は大きく姿を変えた。まずこれまでとは桁違いの規模での経営である。そうしないと価格を下げることができない。同時に、その大量生産を円滑に進めるための徹底した機械化である。 この映画では鳥、豚、牛の屠殺、トマトの水耕栽培、その他ありとあらゆる食材生産の現場を、一言の解説もなく、ただひたすら映像でその光景を追っている。このため観客は自分で考え、感じながらその流れを追っていかなければならない。 食卓に並んだ豊富な食材が、いかにして作られているのか、どんなに文明が進歩しても他の命を奪うことによって自分の命を保つという、絶対の自然法則をときにはこの映画を見て思い出すべきなのだ。「We Feed the World ありあまるごちそう」の姉妹篇だといえる。・・・資料 上へThe Bridge on the Rever Kwai 戦場にかける橋 2013/08/01 日本の小中学校の運動会では定番になっている懐かしい行進曲「クワイ川マーチ」の口笛が響き渡る。第二次世界大戦中のタイとビルマの国境近くで、進軍した日本軍はラングーンとバンコクの間に鉄道を敷設していた。斉藤中尉が率いるイギリス人捕虜集団は、クワイ川に橋を架けるように命じられる。だが、イギリス軍の隊長は、将校は労役に就く必要はないというベルサイユ条約を盾にとって、頑として仕事をしようとしない。 斉藤によって小屋の中に監禁されたりしたが、かえって部下たちが作業をサボタージュしたために、工事が遅れ、ついに斉藤は妥協して隊長の要求を受け入れる。これによってようやく仕事が進み始めた。隊長は橋を作ることは敵を利することだとわかっていながら、部下たちに希望と目的を持たせるために、一生懸命仕事に取り組ませたのだった。だが、軍医はその考えに疑問を持つ。 捕虜の中に、アメリカ兵が混じっていて、彼はうまく脱走し、近くの村人に助けられ、セイロン島で傷の回復をはかっていたが、クワイ川の現場に行ったことのあるのは彼一人だったので、イギリスの破壊工作部隊に声をかけられ、仲間とともに再びパラシュートで現地近くに降り立ち、困難な山越えののちに橋の建築現場にたどり着く。 命令は橋を渡ってくる日本軍の列車もろとも爆破すること。準備はスムーズに進んだのだが、当日の朝、川が異常に引いて、爆破装置につないだ電線が丸見えになってしまった。隊長がそれに気付いた。斉藤とともに河原に降り立ち、爆破装置を受け持つ隊員に近づいてゆく…すべてが終わった後で、軍医はつぶやく。「馬鹿な!信じられない」・・・資料 上へVivre pour vivre パリのめぐり逢い 2013/08/06 : 2020/11/23 :2023/12/08 原題は「生きるために生きる」。パリで妻とともに暮らすロベールは、売れっ子の報道記者。カメラマンとともに世界中を回って取材している。妻との間は、やや倦怠気味である。あるホテルで、若いアメリカ娘キャンディスと話をしてちょっとひかれる。さらにボクシング観戦の時に偶然にも近くに座っていたものだから急速に二人の間は発展する。 コンゴに向かう取材旅行で、二人はアフリカ・ケニアに飛び、野生動物の捕獲に参加する。仕事の合間に妻とアムステルダムに旅行する。キャンディスは後を追いかけてきた。ロベールは妻を欺いてキャンディスの泊まっているホテルに出かける。そして帰りの列車の中、ロベールは新しい恋人のことを妻に告白する。 自分たちの間を妻に告げたことをキャンディスに話すと、彼女はいたたまれずニューヨークに戻ってしまった。一人となったロベールはベトナム戦争の取材に派遣され、行方不明となる。幸い無事に戻れたものの、再会したスキー場では妻の誘いで、彼女の友人たちとのダンスパーティに出かけたが、妻の態度は冷たく、ダンスの相手もしてくれない。仕方なくロベールは諦めて帰ることにして、フロントガラスから積もった雪を払いのけた…・・・資料 上へVicky Christina Barcelona それでも恋するバルセロナ 2013/08/08 二人のアメリカ娘、ビッキーとクリスチナがバルセロナにいる知人の家に夏休みを過ごしに来る。堅実派のビッキーは間もなく真面目なビジネスマンと結婚する予定だが、クリスチナは恋の冒険を求めている。そこへ不思議な画家、フォアンがあらわれた。 ドーグは、火のような性格の妻と大喧嘩をして、離婚したばかりの大金持ち。この二人の女に惚れて、自分の住む町に自家用飛行機で招待する。町を連れて歩き、夜はそれぞれをベッドに招待するうち、二人はフォアンにすっかり魅了される。 だが、ビッキーは、少し後悔の気持ちを抱きながらも、婚約者のアメリカ青年と当地で結婚式を挙げ、残ったクリスチナがフォアンと一緒に住むようになる。ところがそこへ自殺未遂をした元妻のマリアが舞い戻ってきて、3人は奇妙な共同生活を始める… だが、夏休みが終わりに近づいた。アメリカ娘は、アメリカ文明に帰るしかない。結局のところ、バルセロナでの自由奔放な生活は、彼女らにとって、”一時的”なものだったのだ。・・・資料 上へMidnight In Paris ミッドナイトインパリ 2013/08/12 作家志望の青年、ギルは婚約者イネスと、その両親とともにパリにやってきた。だが、もともとジルは彼女やその育った環境には合わない人生観を持っていた。イネスが博学なポールと知り合い、パリの名所を巡っているのに、ギルはパリの街をさまよい歩く。 道に迷って、午前零時の鐘が鳴ると、旧式の車が近づいてきて、パーティに行かないかと誘われる。会場はフィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ピカソたちがいた。つまり1920年代のパリにタイムスリップしてしまったのだ。朝になると、再び現代に戻っていた。それが毎夜繰り返され、不審に思ったイゾルの両親が探偵を頼んだほどだった。 ギルは自分の作品を読んで、批評してもらったり、多くの芸術家たちと浮名を流した女とも親しくなった。パリの古本屋で、彼女の著作を見つけ、自分について書いてある部分を発見する。毎晩さまざまな芸術家たちに会い、ギルはすっかりこの町に住むつもりになった。イネスもポールと浮気をして、彼女とも別れる時が来た。そしてポンヌフを歩いていると、コール・ポーターを売っていた蚤の市の女の子と偶然出会う。・・・資料 上へLa Môme エディット・ピアフ~愛の讃歌 2013/08/13 エディット・ピアフの伝記映画。47年の短い生涯を、幼いころと、死の直前とを交互に織り交ぜながら描く。母に捨てられ、娼婦の宿での生活や、父親に連れられての大道芸人での生活、そしてストリート・ミュージシャンとしての出発。 ある日パリの街角で歌っているとき、キャバレーの支配人にその才能を見つけられたのがきっかけで、たちまちのうちにパリの有名歌手の一人になり、それまでの才能に、さらにレッスンを重ねることによって、深みを加えることになった。 しかし、私生活では、子供を産んだのに病気で亡くした。恋人が飛行機事故で死んだ。自らも自動車事故にあい、その時から重症のモルヒネ中毒にかかったりした。最後にはガンになり、体力が衰えているにもかかわらず力を振り絞って舞台に立った。・・・資料 上へ悲しい恋の行き違いの物語。広告会社に勤める吉岡は、タイヤが砂にスタックした時をきっかけに、茅ヶ崎のFM局の女子大生DJ、田中真理子と知り合う。局は田中(♀)、高橋(♀)、小杉(♂)、芹沢(♂)の高校の同級生仲間によって、実質的に運営されている。だが、4人の男女は誰も、相手に自分の気持ちを打ち明けたりしていない。また、田中は近々両親の住むアメリカへ移り住むという。 中継局を国道134号線沿いに並べて、湘南の海沿いのどこからでもこの局の番組が聞こえるようにするという計画に、芹沢たちは夢中になっている。そこへ吉岡が現われ、広告会社のコネを使って機材や看板の設置を始めた。だが、吉岡には田中への下心があるのは明白だし、田中への気持ちを切り出せずにいる小杉にとっては突然のライバルの出現だった。 いよいよ、局が湘南全体にデビューをする7月4日の前の晩になった。だが、そこに思わぬ恋のもつれが…そして、翌日、微弱なFM電波では、当然のことながらトンネル内のカーラジオでは受信できない…。9年後、田中の結婚式の相手は、彼らのまったく知らない別の人だった… 上へ戦前の浅草、大きな映画館の売り子がスカウトされた。名前は田中小春。父親の喜八は、元旅芸人だった。松竹の蒲田撮影所に、新人として入る。そのときに助監督の島田と知り合う。次第に役をこなして成長し、女優としての力量も増してきた。 時は、軍国主義の時代、島田は反戦運動家の友人をかくまったために一時警察で拷問を受けるが、それまで大衆娯楽として軽蔑していた”活動”が人々に生きる希望を与えるものだと気づき、再び撮影所に復帰する。 撮影所50周年記念の一つとして、大作映画”浮草”が製作されることになったが、主役が失踪し、急きょ小春が主役を務めることになる。だが肝心の濡れ場で、監督に叱られ失意に陥るが、父親のなれ初めの話を聞いて、気を取り直し、翌日見事に演技をやってのけ、大きなヤマを乗り越える。・・・資料 上へフランス詩を研究するフンバート教授はアメリカの大学に招かれて教鞭をとり、夏休みをニューハンプシャー州のヘイズ夫人のところに下宿することになる。夫人は未亡人で、その娘はまだ幼いが教授はすっかり惚れ込んでしまった。 娘が夏休みのキャンプに行っている間、ヘイズ夫人の強引な求婚で仕方なく教授は結婚するが、すぐに喧嘩を始め、そのせいなのか、夫人は交通事故で即死する。教授はロリータを引き取り、自分の教えている大学の近くの学校に入れて一緒に住み始めた。 だが、ロリータの行動には何か隠しているところがある。教授は彼女に厳しい門限を設けたり、デートを禁止したりするが、ロリータはいよいよ反抗的になってゆく。学校の心理カウンセラーの忠告で演劇クラブに入って活躍するが、父娘は大げんかの末、しばらくアメリカを車で旅することになる。 だが、その途中に不審な車がついてきたり、ロリータが風邪をこじらして病院に入院すると、病室に男物のサングラスがおいてあったりして、いよいよおかしい。そして深夜、教授のもとにおかしな電話の後、ロリータは病院から連れ去られていた… 3年後、ロリータは結婚し子供を産むから経済的な援助をしてくれと教授に手紙を出す。行ってみると、まともな男と結婚生活を営んでいた。だが、病院から連れ去ったのはニューハンプシャーの時からのロリータの隠れた愛人だった。復讐に燃えた教授は、その男をどこかの古城にいることを突き止め… 教授のまだ幼い少女への愛がていねいに描かれ、しかもそれが猟奇趣味や絵空事ではなく、一つの人生として浮かび上がってくる作品である。・・・資料 上へLes Demoiselles de Rochefort ロシュフォールの恋人たち 2013/08/27 (再)2023/11/27 大西洋に面した港町、ロシュフォールにイベント屋がやってきて、日曜日にお祭りをするという。町の広場のカフェを経営するマダム、その双子の娘たち、そして小学校に通う幼い息子ブブ。ブブはマダムが婚約者との間にできた子だが、二人は別れて10年になる。 双子の姉は作曲と踊りが得意で、町で素敵な男性と出会うが、名もわからず別れる。双子の妹は、大変な美人で子供たちにバレーを教えているが、なんとしてもこの小さな町を出てパリで運を試したい。町には、絵をかく水兵がいた。彼が空想で描いた”理想の女性”はなぜかこの妹によく似ている。彼女はその画家を探し当てようとしている。 お祭りは、代役で急きょ出演したこの二人の活躍で大成功。そしてそのあとに思いがけない出会いが次々と起こった。イギリスやアメリカのいわゆるミュージカルとは、雰囲気が非常に異なっている。「シエルブールの雨傘」とともに、いかにもフランスらしい作品。・・・資料 上へCherchez l'idole アイドルを探せ 2013/09/01 60年代のフレンチ・ポップスの見どころを次々と紹介。 タイル職人のリチャードは、ミレーヌ・ドモンジョの新居の工事を担当しているうちに、女中のヴォニーからダイヤモンドのありかを聞き出し、恋人のコリンヌにそそのかされて深夜の犯行に及ぶ。ところが見つかってしまい、ダイヤは楽器店のエリクソン・ギターの中に隠して、ほうほうのていで逃げ帰る。 ところがそのギターは5台あって、それらはみな当時の有名ミュージシャンによって買われてしまい、行方不明となってしまった。コリンヌとそのモデル友だち、そしてリチャードとヴォニーの二組はなんとかそれぞれのミュージシャンの演奏会場に飛び込んで、先にダイヤを見つけようと必死だが、4台目までどこにも見つからない。5台目でも見当たらなかったのだが…・・・資料 テルマエ・ロマエ Thermae Romae 2013/09/04 ハドリアヌス帝の治世のローマに住む、浴場技師ルシウスは、新しい浴場を作るにあたっての斬新なアイディアがなくて悩んでいた。それが突然排水溝を通って、2012年の日本の銭湯にタイムスリップしてしまう。そこで見聞きしたアイディアをローマに持ち帰り、一躍売れっ子技師となる。だが、自分の能力のせいでないことで今一つ喜べない。 個人用のお風呂、シャンプーハット、などその後2回も3回も日本に飛んで、アイディアを持ち帰り、ハドリアヌス皇帝の浴室まで作って、そのお気に入りとなる。そのたびに、漫画家志望ながら都会での売り込みに失敗し、実家の温泉旅館に舞い戻った女の子、マミと出会う。 マミはこの不思議な男に好奇心を抱き、ローマ時代の勉強から、ラテン語を話せるまでになる。温泉旅館のお湯の中に、二人で飛び込んだらルシウスもマミもローマ時代に飛んでいた。そのころハドリアヌスの率いる軍はドナウ川の北に出没する蛮族の平定に手を焼いていた。 ルシウスは次代の皇帝になるかもしれないアントニウスのアイディアだといって、戦争の現地にマミたちと協力して湯治場を作る。傷病兵たちは、たちまちこれで回復し、無事蛮族を追い払うことができた。マミは日本に戻ってしまったが、ルシウスはハドリアヌスによってお褒めの言葉をもらったのだった。・・・資料 Ginger & Rosa ジンジャーの朝 2013/09/15 (渋谷の映画館で) 米ソの冷戦がはじまった、ロンドンで、産院のベッドが隣同士だった母親から、二人の女の子がほぼ同時に生まれた。ジンジャーは、教師である父親ローランドが大戦中に良心的兵役拒否者で、母親は元画家。両親の仲は良くない。ジンジャーは小さいころから米ソ対立が、核戦争と世界の終末につながるのではないかと恐れている。そして平和運動に興味を示すようになった。 ローザはもっと日常生活のことに興味があって、男との付き合いや化粧に精を出す、ごく普通の女の子だ。父親は姿を消し、母親と暮らしている。それでもジンジャーとローザは親友同士で、年を取るにつれて性格の違いが目立ってきたにもかかわらず、双子のようだった。 ジンジャーの両親は亀裂が深まり、ローランドは家を出て別居を始める。ジンジャーもそのあとを追って同じアパートに住むことになる。そのころからローランドとローザは親密さを増し、ヨットの中で一緒に寝る。ジンジャーは黙ってみているしかなかった。 だが、ローザが妊娠したらしいと告げる、我慢ができなくなったジンジャーは、母親や知人たちに、そんな関係をすべてぶちまける。ショックを受けた母親は自殺を試みて、病院に搬送された。一夜明けて、ジンジャーはローザを許す気になっていた…・・・資料 東京オリンピック Tokyo Olympiad 2013/09/28 オリンピックは開発途上国が、その成長の成果を世界に見せる舞台であるべきで、1964年の東京での開催は時を得たものであった。今と違い、選手はアマチュアであり、学校の先生あり、職工あり、会計係ありで、その顔が大写しにされて、人間の描写が生き生きとおこなわれている。 商業主義はまだ、その大胆な行動を見せる前だったので、選手の着ている服や、看板にも、特定企業をどぎつくアピールしたものは登場しない。日本の選手の活躍はもちろん前面に出ているが、だからといって外国人選手が無視されているわけではなく、マラソンのアベベ選手などは、この映画の中心的人物だったといえる。 当時の日本の人々の服装、顔付、笑い方、泣き方、叫び方などは、今と非常に違っているので、その点に注目しても楽しめるだろう。マラソンの描写では、東京の町が、高速道路ができかけたところなので、高層ビルもなく、小さな四畳半の寄せ集めのような木造アパート群が写っている。…・・・資料 The Devil Wears Prada プラダを着た悪魔 2013/10/20 大学を出たばかりでジャーナリスト志望のアンディだったが、ほんの腰掛として面接に行ったファション雑誌「ランナウェイ」の編集長、ミランダが何を思ったか、アシスタントとして採用してくれる。ミランダは鬼、いや”悪魔”の編集長で、命令は絶対で、立て続けに用事を言いつけるし、家庭内の雑用までさせる。 だが、一つ一つこなしていくうちに、仕事の要領を覚え、アンディはミランダに、一定の信頼を受けるようになった。また、デザイナーのニジェルにファッションの着こなしを学び、それまでの学生くさいカッコウから、一躍変身して注目を浴びる。 パリへの出張は先輩アシスタントのエミリーがゆくはずだったのに、ミランダは代わりにアンディをつれて行くと言い出す。うれしくある半面、毎日の残業、そして恋人の誕生日にも出られなくなる忙しさのため、恋人や大学の友人たちが周りを去ってゆく。 パリに着いて、親しくなった作家と一夜を過ごすが、部屋を出るときにミランダが首にされるニュースを知る。あわててミランダに伝えたが、すでにそれを予想していたので、見事に手を打って事態を切り抜けていた。しかし、自分が押しのけてエミリーの代わりになり、昇進を期待されていたニジェルもミランダの事件で泡を食ってしまったのを見て、ミランダの”人生哲学”を聞き、アンディは何もかも嫌になってしまう。・・・資料 Robinson Crusoe ロビンソン・クルーソー 2013/10/21 17世紀、イギリスを出て世界の海を回っていたロビンソン・クルーソーは、乗っていた船がブラジルの沖合で難破し、一人だけ島に流れ着く。一人で、食料を探し、家を建て、しだいに生活を確立してゆく。だが、誰にも会うことなく28年が過ぎる。 ある日砂浜に大きな足跡を発見する。この島は、はるか遠くの島に住む土人が人食いの祭りをするときに利用していたのだ。あるとき食べられそうになった男が逃走し、ロビンソンは彼を助けてやる。その日が金曜日だったので、フライディと名付け、英語を教え、使用人として暮らし始める。 あるとき砂浜に白人が上陸した。反乱を起こした水兵たちが、船長をこの島に置き去りにしようとしていたのだ。ロビンソンは船長を救出し、フライディは反乱水兵を巧みに自分たちの住居におびき寄せて、生け捕りにする。 反乱水兵たちは一生この島に暮らすことになり、ロビンソンはフライディをつれてようやく故国に変えることができたのだった。この話の魅力は、誰の助けも借りずにサバイバルする人間の知恵やたくましさを描いていることだ。・・・資料 戦後間もない京都に、女子大があった。だがその学校は、何から何まで生徒に抑圧的な学校であった。戦争が終わって世の中は労働運動が高まり、平和主義が広まっていったのに、この学校ではしつけだけに特別重きが置かれ、大勢の生徒が寮生活をしていた。 その寮母、五条も生徒の生活時間から、手紙の検閲まで、生徒の生活の隅々まで管理していた。生徒はみな不満を持っていたが、大部分がお嫁に行くための”箔”をつけるためだったので、大きな運動に盛り上がることはなかった。それでも社会の流れを感じ取って学校で声を上げようという生徒もいた。一方でその動きを学校側に伝える”スパイ”もいた。 新入生の中に、銀行で3年勤めた後、恋人がいるのに、父親がお見合いを強制的にさせるのを嫌って、この学校に入ってきた生徒、よしえがいた。勉強がわからないので、夜遅くまで起きていたいといっても許可が下りない。テニス部の生徒、トミ子は、同郷の男の子に誘われてちょっと試合をしただけで厳しく叱責され、謹慎処分を受けた。 冬休みの間、よしえは郷里の姫路に帰り、親の目をくぐり抜けながらなんとか恋人に会うことができたが、学校の抑圧、父親への恐怖で、神経衰弱気味になり、学校に戻ってからも精神が不安定になっていた。そこにトミ子らが休み中に勝手に外出したことで、違反者はお寺に行かされることになり、ついに不満が爆発し、全校で学則の改定を求める声が広がる。 要求の代表者はみな、処分を受けたが、自分だけ軽かった。それを思い悩んだトミ子は恋人の家に駆け込むが、再び学校に戻り、教室で自殺をしてしまう。周りの人間は責任のなすりつけを始めるが、根本的な解決への道は見えないまま、幕が閉じる。・・・資料 Bonjour tristesse 悲しみよこんにちは 2013/11/05 セシルの母はすでになく、プレーボーイの父であるレイモンドとの裕福な二人暮らし。パーティに明け暮れ、父は常に新しい女を追い求めていた。ある夏、地中海の別荘地では、恋人のエルザをつれて毎日楽しく過ごしていたが、そこへ母の親友であったアンヌが訪れる。 レイモンドはアンヌに魅かれ、簡単にエルザを捨ててしまう。そして二人は結婚すると言い出す。だが、セシルにとってアンヌは口うるさいお母さんになりそうだった。強く反発したセシルは何とかアンヌを追い出す計略を立てる。 その計画は、意外にもうまく実現してしまうが、自分が捨てられたと確信したアンヌは、自分の車を運転して死んでしまう。それが自殺なのか事故死なのかは誰もわからない。ただ、父と娘の心にいつまでも消えない悲しみが残ることになった。 実にシンプルなストーリーだし、そのような筋のメロドラマはいくらでもそこらへんに転がっていそうであるが、このフランソワーズ・サガン原作の小説は、大好評を博した。何か普通の小説と違うところがあるのだ。・・・資料 12Mädchen und 1mann 白銀は招くよ 2013/11/07 原題は「12人の娘と一人の男」。アルプスの、ある村は、のどかで犯罪が起こらないので、駐在所は廃止になり、所長とその助手はそれぞれ退職と転属になることになった。助手がこの地を去ってしまうのを悲しんだ町長の娘が狂言強盗を仕組む。”事件”が起きたので捜査は開始されるのだが… 一方、スキーの腕ではだれにも負けないフローリアンは警察での昇進を約束され、その前にこの事件の手伝いに、山小屋に向かう。そこには12人の娘たちがスキーの練習に来ていて、その中の一人に、フローリアンは恋に落ちてしまう。 ほかの11人に気づかれないように、スキーの教師を務める傍ら、美術品窃盗団を偶然に山小屋に発見し、転倒してスキーを一本流してしまうが、一本足ながら得意のスキーの技で見事逮捕して、恋人とも結婚の約束をする。・・・資料 上へSous le ciel de Paris 巴里の空の下セーヌは流れる 2013/11/12 古き良き時代のパリのある一日の出来事。せっかくの銀婚式だというのに、自分の勤める工場のストライキ中で、家族のお祝いに出られないお父さん、なんども市立病院の試験に落ちて、これが最後だという若いインターン、そしてモデルとしての有望な将来が持ちかけられている、そのインターンの恋人、そして地方から出てきたばかりの彼女の幼馴染で、文通相手との大恋愛を夢見る若い娘、年金生活で金がないのに、たくさんの猫を飼って、エサ代を恵んでもらうために丸一日パリ中を歩き回る老婆、学校の点数が悪くて、近所の男の子とセーヌ川の冒険に出てしまった8歳の女の子、成人の女を見れば刺殺したくなる彫刻家の変質男。 パリの街を舞台に、登場人物たちが一日の始まりとともに活動を始め、平行して描かれるが、その時間の経過とともに、どこかに接点があって、そして最後には大事件が起こる。しかその一日は過ぎて、次の日の夜明けが、新しいドラマが始まるのだ。・・・資料 皇帝(第2帝政)の君臨していた時代のパリ。足の悪いジェルベーズは、内縁の夫ランティエに嫁いで、二人の子供をもうけていたが、女狂いの夫はどこかの女とともに姿をくらました。その後、クポーという屋根職人と結婚し、ナナを産む。努力のかいがあって洗濯屋の店を持つことができたが、クポーは屋根から転落して、それ以降、飲んだくれになる。 店の資金を貸してくれたり、息子のために力になってくれたのが、クポーの友だちで鍛冶職人のグジェーだったが、ゲルベーズは彼にほのかな思いを寄せるようになる。彼女の誕生会の日、行方をくらましていたあのランティエが戻ってきて、クポーは反発するどころか仲良くなり、ランティエを下宿人として迎えてしまう。 だが、このろくでなしの二人を抱え、心配の尽きないジェルベーズの店は次第に客が減り、グジェーは自分の息子とともに新天地を求めてパリを去り、クポーは飲み過ぎて死に、ランティエは、昔からの敵だった女とでき、店も彼女にとられて、ジェルベーズは生きるのが嫌になって、飲んだくれてしまう。しかし娘のナナは元気に外に遊びに出ていく。 ゾラの「居酒屋」の原題は L'Assomoir であるが、この映画の題名はヒロインの名前を使っている。・・・資料 I Giosoli ひまわり 2013/11/21 (再)2022/03/25 ナポリに住むアントニオとジョアンナは結婚して間もなく、戦争が起こり、兵役が嫌で狂気を装ったアントニオは、かえってロシア戦線送りとなる。戦争が終わったが、アントニオの行方は知れず、生存を確信しているジョアンナは一人ソ連に探しに出かける。 ヒマワリが一面に咲くロシア大地の下には無数の兵士たちが眠っていたが、アントニオは奇跡的に地元の少女によって救出され、彼女を妻として娘までもうけていた。ジョアンナは幸せな家庭を持ったアントニオが仕事を終えて列車から降りてくる姿を見て耐えられず、すぐにイタリアに帰ってしまう。 しかしアントニオは、どうしてもジョアンナに会いたくて、イタリアに里帰りする。そしてようやくジョアンナに会うことはできたが、すでに結婚して赤ん坊が生まれていた。戦争が引き起こした悲惨な運命によって、再び生き別れになることになった。 2022年のロシアによるウクライナ侵攻により、この映画は突如リバイバルとなった。資料 原題は「のらくら者」。イタリアの海岸に沿う田舎町に、5人の仲のいい若者たちが住んでいたが、いずれもまともな仕事がなく、いつものらくら過ごしていた。街のお祭りでミスコンテストが開かれ、選ばれた女の子が突然失神する。この5人のうちの一人によって妊娠していたのだ。 親たちによって強制的に二人は結婚させられるが、花婿には仕事がないから、しばらく実家においてもらい、宗教用品を扱う店に勤め始める。だが、もともとプレーボーイだった癖が抜けず、映画館で見かけたいい女について行ったり、その店の奥さんに無理やりキスをしたりして首になってしまう。 脚本家志望の青年は、ようやくドサまわりの俳優に自分の作品を読んでもらうが、どうも見込みがないらしい。もう一人の青年は、自分の姉が妻のいる男と駆け落ちしてしまい、年老いた母親を自分が見ることになる。花嫁の兄は、妹が苦労しているのをハラハラしながら見守っていたが、何事にも消極的で目立たない存在だった。しかし、ある日決心して早朝の列車に飛び乗り、外の世界に運を求めて出てゆく。・・・資料 上へユダヤの貴族、ベン・ハーは、幼馴染のメサイアがローマの護民官としてエルサレムに赴任したので会いに行くが、お互いが占領される側と占領する側にはっきり分かれていることに気付く。新総督のパレードの日、ベンの妹が誤って屋根から瓦を落とし、彼は捕えられてガレー船漕ぎの奴隷にされる。だが、戦争中に司令官の命を助けたことからローマで彼の養子となり、再び故郷に戻る。恋人は待っていたが、母と妹はライ病患者として隔離されていた。ここまで前半、テーマは Hate keeps you alive, つまり”憎しみは人に生きる力を与える”。 後半では、圧巻の四頭立て馬車競争で、ベンが宿敵メサイアを倒す。しかし母親と妹の置かれている状況を知った後は、復讐を成し遂げた後のむなしさの中、ローマにも戻る気も起らず、人生の進む道を見失うが、イエスの処刑を見て、奴隷の時に自分に水を与えてくれたことを思い出し、妻とともに新しい人生の出発点に立つ。・・・資料 上へヒポクラテスたち 2013/12/07 (再)2024/01/19 京都市内の、ある大きな病院に、卒業をまじかに控えた若者たちが、最後の勉強に励んでいる。なかなか国家試験に合格しないものもいれば、高校からすべてトップで来た女の子もいる。妻と二人の子供まで持っている者もいる。また、荻野という学生が同棲していた相手の女の子は妊娠したので近所の産婦人科(後で無免許だと判明)に見てもらったのだが、その後の経過が悪く、故郷に戻ってしまった。 どの科に進むかは、みなまだ決まっておらず、毎日いろんな科での実習をさせられる。救急科では運び込まれた人が、目の前で息を引き取る場面もあった。あと6か月しかない末期胃がんの患者について診断をするように先生に言われたこともあった。あの女子学生は毎日、そしてこれからも人々の師を見なければならないことに耐えられない。 当時の学生運動のあおりは、医学生にも押し寄せていて、医学界や、病院の矛盾に本気で取り組む者もいた。医学生のための寮もあって、そこではたびたび学生たちが、けんか腰になるほどの激しい論争を行ったりしていた。しかし、卒業が近づき、いよいよ国家試験を受け、研修生になる時が近づいてきたのだ。 結局医者にならない者もいた。悩み自殺した者もいた。試験に不合格で次の試験を狙う者もいた。精神状態がおかしくなって、同級生の神経科の研修医に面倒を見てもらっている者もいた。・・・資料 上へSmall Time Crooks おいしい生活 2013/12/12 原題は「ケチな悪党たち」。ケチな泥棒レイは、シャーロックホームズの「赤毛クラブ」に出てくるように、銀行のそばの店からトンネルを掘って強盗に入ろうと企て、仲間を集め、妻のフレンチーを説き伏せる。トンネル作業は失敗に終わったが、カモフラージュのためにフレンチーの始めたクッキー屋が大成功し、夫婦と仲間たちは大会社のトップになってしまう。 ありあまるお金を前に、フレンチーは成金といわれないように教養を身につけるべく画商に家庭教師を頼み、美術館めぐりやヨーロッパめぐりまで始める。だが、レイはそんな”おいしい”暮らしが合わず、下町の中華料理やピザ屋の食事が懐かしい。それまで仲の良かった2人に亀裂が入る。だが、会社は経理士によって横領され、一夜のうちに倒産してしまい、財産はゼロになる。でも、これで夫婦は仲直り。・・・資料 上へとなりのトトロ My Neighbor Totoro 1994/07 (再) 2013/12/30 父親とともに大きな樟(クス)の木のある農家に引っ越してきた、さつきとめいの姉妹は、近くの森にトトロが住んでいることを知る。トトロは子供にしか見えないが、雨降りの日にバス停でネコバスを待つトトロに傘を貸したことから仲良くなる。トトロからお礼にもらった木の実は、庭で芽を出し始めた。 母親は病気で病院に入院しているが、一時退院が遅れたためにめいが収穫したばかりのトウモロコシを届けようと、行方不明になってしまう。どこを探しても見当たらず途方に暮れたさつきはトトロに頼み込み、ネコバスでめいの居所を探し当て、一緒に病院にトウモロコシを届けることができた。・・・資料 上へ人間の残した廃棄物の毒のため、有害な生物がはびこり、その領域、「腐界」は地球上に広がりつつあった。人間は相も変わらず殺し合いをつづけ、風の谷にも敵の軍隊が攻めてきた。その姫、ナウシカは有害な生物でも、オウムという怪物の心を知り、友好的なつながりを持つようになる。 だが、愚かな敵軍は風の谷を乗っ取り、腐界をも焼き払おうとたくらむ。敵に捕まりそうになり、腐界に入り込んだナウシカは実はその地下では、ゆっくりと毒を浄化する営みが行われていることを知る。風の谷が敵に襲われそうになった矢先、子供のオウムを吊り下げて怒り狂ったオウムの大軍は風の谷に突進してゆく…・・・資料 上へH O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(41) © 西田茂博 NISHIDA shigehiro |