フランス映画その5 H O M E > 体験編 > 映画の世界 > フランス映画 > その4 |
||
五月革命の騒ぎを背景に、都会に出ていって暮らす孫や子供たちが、葬式によって田舎暮らしを楽しむ主人公のもとに一堂に会した場面を通して、コミカルなフランス版「東京物語」を描いて見せている。 ミルおじさんはフランスの田舎に暮らす。自分の母親、お手伝いのアデルと3人で、田園に囲まれた大きな家に住んでいた。だが、ある晴れた日、ミルがミツバチの採集にいそしんでいるとき、母親は心臓発作を起こして急死してしまう。 遺体は書斎に安置され、ミルの娘とその三人の子供たち、、孫たちが続々と集まってきた。ところがこの年の5月、パリでは学生と労働者たちによる「五月革命」が突発し、ストライキやデモ行進の波は地方にも波及してきたのだ。 すでにガソリンの販売は制限され、停電も頻繁に起こり、葬式のための食料も買い出しが思うに任せない。そして何よりも、葬式屋までがストライキに入ってしまったのだ。まだ早春とはいえ、遺体を3日以上も置いておくわけにはいかない。 さて、孫や子供たちの最大の関心は言うまでもなく遺産相続。ミルおじさんを含めて3人の相続人に平等に分配するため、すべてを売り払ってしまおうという提案に、ミルおじさんは怒り心頭に達する。しかも弁護士が預かっていた遺言によれば、お手伝いのアデルも相続人に指定されていたため、4分の1ずつに分けることになった。 家の中は大騒動で、食器や絵画や書物が引っぱり出されたが、それはいずれも大した価値のないもので、二束三文で引き取られる運命にあった。孫娘が連れてきたダンサー志望、トラックの運転手の助手も加わり、葬式が延期されたので、みんなは大きな家に一緒に寝食を共にすることになる。 しかも葡萄畑といい、ザリガニの取れる池といい、素晴らしい自然環境である。都会生活に疲れた人々はみんなのびのびとし始めた。そのためすっかり意気投合し、あちこちでカップルが誕生するありさま。レスビアンの娘が、自分の胸をはだけて男に触らせる。遺体を前に、みんなでダンスをするのだった。ついには娘は上半身裸になった。 そこへ近所の人が「革命軍」攻撃のデマを持ってやってきた。おちおちしていると家に火を付けられ殺されるかもしれないと聞かされた、アデルを除く全員は屋外に避難する。 野山で疲れ果て、雨で濡れネズミになった一行は、ようやく犬を連れたアデルに発見され、何ともなかった家に舞い戻る。混乱を極めたあとで、ド・ゴール大統領は政界に復帰した。革命は収まったようだ。庭の大木のもとに墓穴が掘られ、ミルの母親はそこに無事葬られた。 葬式が済むと、参加者はみなそれぞれの家に帰ることになる。お別れの挨拶が済み、家具類が処分されて大きながらんとした家に残されたのは、ミルおじさん一人だった。(1990年) Directed by Louis Malle Writing credits Jean-Claude Carrière / Louis Malle Cast: Miou-Miou .... Camille / Michel Piccoli .... Milou / Michel Duchaussoy .... Georges / Bruno Carette .... Grimaldi / Paulette Dubost .... Mrs. Vieuzac / Harriet Walter .... Lily / Martine Gautier .... Adele / Rozenne Le Tallec .... Marie-Laure / Jeanne Herry .... Françoise (as Jeanne Herry-Leclerc) リスニング;フランス語、大勢の出演者によるさまざまな話題が戦わされる。 haut de pageTouchez pas au grisbi 現金に手を出すな マックスはパリの暗黒街の顔役の一人である。だが、最近は寄る年波もあって引退を考えていた。老後の資金にしようと最後にやった仕事は金の延べ棒を盗み出すことだった。これは成功し自分の乗用車のトランクに入れておいた。 ところが20年来のつきあいであるリトンはどうもへまばかりしている。今回も世間では大騒ぎになっている金の延べ棒の行方を、女関係を通してちんぴらたちに漏らしてしまったらしい。 ちんぴらたちは、リトンを誘拐して金のありかをただそうとしていた。マックスはせっかくの計画がフイになってしまったことを腹立たしく思いながらも、リトンを見捨てるわけにはいかない。腹心のピエロを伴い、金塊を持ち、機関銃を持ってチンピラたちの指定した場所に向かった。 取引自体は無事済んだ。リトンは無事戻ったが、苦労して盗んだ金塊は取られてしまった。帰途につく途中、予想していたことが起こる。ちんぴらたちは2台の乗用車で来ており、残った一台の方が戻ってきたのだ。とっさにマックスは長年の経験から仲間たちに車から降りて伏せるように命令した。 敵は、彼らの車に手榴弾を投げ込んだ。すかさずマックスたちは機関銃で応酬し、敵を皆殺しにした。だがもう一台の車がやってくる。これをまた機関銃で攻撃する。敵の車のタイヤに撃ち込み、車は転覆炎上した。炎の勢いは強く、金塊を積んであるはずだが、車に近づけない。しかも向こうから一般人の車がやってきた! マックスは自分のぶんどり品を完全にあきらめるしかなかった。しかも先の銃撃戦で、リトンは傷ついていた。家に連れ帰って医者に処置をしてもらったのち、自分が事件とは無関係だということを示すため、行きつけのブーシュの店に美女を伴って現れて、悠々と朝食を食べる予定だった。 店では炎上した車に金塊が発見されたニュースでみんなが大騒ぎをしているところだった。マックスは気になってリトンの容態を電話で尋ねる。リトンは死んだ。金も失い、長年の仲間も失った。ジュークボックスで古い曲をかけながらマックスは物思いにふけるのだった。(1954) Directed by Jacques Becker Writing credits Jacques Becker Maurice Griffe Cast Jean Gabin .... Max le menteur / René Dary .... Henri "Riton" Ducros / Jeanne Moreau .... Josy / Dora Doll .... Lola / Gaby Basset .... Marinette / Denise Clair .... Madame Bouche / Michel Jourdan .... Marco / Daniel Cauchy .... Fifi / Jean Riveyre .... Le garçon du Moderna / Paul Frankeur .... Pierrot / Paul Oettly .... Oscar / Delia Scala .... Hughette / Marilyn Buferd .... Betty (as Marilyn Bufferd) / Lucilla Solivani .... Nana / Vittorio Sanipoli .... Ramon リスニング;フランス語 haut de pageイソップに、蟻とキリギリスの物語があるが、これは「懲りない」キリギリスの物語。セーヌ川を中心にしたパリの風景がふんだんに映し出され、バイオリンの演奏は非常に憂鬱な響きだ。主人公が浮浪者になってゆくシーンは目を覆う。観客を喜ばせることが第1のハリウッド映画では絶対にできないだろう。 独身でものぐさな、30代過ぎの自称音楽家、ピエールはパリの自分のアパルトマンで朝寝坊をしているときに電報配達にたたき起こされた。電文は、叔母の死を告げていた。叔母は大金持ちで自分と従兄弟の二人に大変な財産が転がり込むはずであった。 すっかり気をよくしたピエールは、雑誌社パリマッチに勤める友だちやらその女友だちやら、友人をかき集めて一大パーティを開く。ただし自分の持ち金はないから記者の一人に5万フランを前借りした。 友だちは多くみんな親切だが、ピエール自身は怠け者で、まともに働く気がないから、今度の相続の話に有頂天になっていた。パーティで酔ったあげく自分は獅子座の生まれで、金星と相性がいいからと銃を持ちだして空をめがけて発砲したりした。 パーティの後、バカンスの季節がやってきた。友人たちはみな仕事に励んだり、バカンスに出かけたりしていった。ピエールと言えば、叔母の遺言は従兄弟だけに財産が送られ自分には一銭ももらえなかった。しかも自分の住んでいたアパルトマンは売りに出され、部屋を退去しなければいけない。 はじめのうちは友人に借金をしたり、ホテル代を踏み倒したりしていたが、ついにホテルも追い出され友人たちも仕事やバカンスでパリからいなくなってしまうと、ピエールは本当に困ってしまった。食べる物もなく、仕事を見つける気もなくただパリの街をさまよい歩く。 市場で盗もうとして危うく捕まりかけたり、親切な女主人に9フランのパンを6フランで売ってもらったりしたが、野宿を重ね2日、3日とするうちに空腹と疲労でほとんど動けなくなってしまった。しかも彼にはそこら辺の浮浪者や乞食のような生活力さえ持っていない。 もしセーヌの岸辺で親切な浮浪者に出会わなかったらそのまま行き倒れてしまったかもしれない。この浮浪者の乳母車に乗って二人はカフェの前でちょっとした芸をしたりして小銭をかき集めた。 そのころ、財産を受け継いだピエールの従兄弟は街道で不慮の事故死を遂げる。公証人はピエールにその相続権を認めたが、浮浪者になって以来まったく行方不明である。友人たちはようやく、あるカフェで芸をしているピエールたちを発見した。 ぼろぼろになった服を着てすっかり髭面になったピエールに相続のことを告げると、それまでの惨めな様子はどこへやら、突然威勢よくなったあげくみんなにおごってやるぞとわめきはじめた。(1959年) Directed by Eric Rohmer Writing credits Paul Gégauff (dialogue) Eric Rohmer Cast: Jess Hahn .... Pierre Wesselrin / Michèle Girardon .... Dominique Laurent / Van Doude .... Jean-François Santeuil / Paul Bisciglia .... Willy / Gilbert Edard .... Michel Caron / Christian Alers .... Philippe / Paul Crauchet .... Fred / Jill Olivier .... Cathy / Sophie Perrault .... Chris / Stéphane Audran .... La patronne de l'hôtel / Jean Le Poulain .... Le clochard リスニング;フランス語 haut de pageSous les toits de Paris 巴里の屋根の下 青春の甘酸っぱい物語はハッピィエンドであってはいけない。それは観客におもねるだけだ。人生の真の姿を何時までも見る人の心に焼き付けるには、少し悲しい終わり方をしたほうがよい。「ラ・ボエーム」のような戦前の巴里の雰囲気があふれた佳作。 アルベールはパリの下町で流行歌を広める歌手だ。今日も盲目のアコーディオン弾きに伴奏を頼み、歌好きの人々に「巴里の屋根の下」という歌を教えていた。楽譜と歌詞の書かれた紙を1フランで売ることによって生計を立てている。 群衆の中に出没するスリの被害を助けたことから、アルベールはルーマニア出身の娘、ポーラと知り合いになる。だが、彼女にはすでにビルという男友達がいるらしい。 その夜も親友のルイと居酒屋で飲んでいるとフレッドと連れ立っているポーラが現れた。アルベールはその時はあきらめたものの、ルイと別れて一人で街角に佇んでいると、ポーラが泣きながら店から出てくるのが見えた。フレッドに部屋の鍵を取られて帰れないというのだ。 アルベールはその晩、彼女を自分の部屋に泊めてやる。ベッドが一つしかないから床の上に寝たりでいろいろもめたあげく、ようやく朝が来た。友人が一人やって来て旅に出るから大きくて重たいカバンを預かってくれという。 ポーラとすっかり仲良くなったアルベールは彼女に結婚を申し込む。彼女は承諾して自分の部屋に戻りにもつをまとめてやって来ると、アルベールは警察に引き立てられられていくところだった。あの大きなカバンの中には銀製品が詰まっていたのだ。 再びひとりぼっちになったポーラはルイに慰められ、次第に彼が好きになってゆく。本当の泥棒が捕まり、アルベールはようやく拘留から釈放される。だが、部屋にビルから、ポーラから手を引けさもないと・・・という内容の手紙が差し入れられていた。 ビルはスリたちのボスであり、停車場でビルとアルベールは決闘をする。ポーラの知らせで駆けつけたルイは、混乱の中でアルベールを助け出し、スリたちはみんな警察に検挙された。 ようやくアルベールはポーラと晴れて一緒になれると思いきや、ポーラはルイのもとに駆け寄る。自分のいない間に親友にポーラを取られてしまったアルベールは・・・(1930年) Directed by René Clair Writing credits René Clair Cast: Albert Préjean .... Albert, a young street singer / Pola Illéry .... Pola, a Roumanian girl / Edmond T. Gréville .... Louis, Albert's friend / Bill Bocket .... Bill, The Big Boss / Gaston Modot .... Fred, a purse thief リスニング;フランス語・サイレント映画ではないのだが、セリフが少なく音楽中心の構成。主題歌はシャンソンのスタンダードナンバーになった。 haut de pageチャップリンの「モダンタイムス」を見た人は、その共通点に気が付くが、フランス式の物語の流れが、アングロサクソン風とは大きく異なることにさらに驚くだろう。モダンタイムスのテーマは労働疎外であり、未来への希望であるが、この映画はあくまでも自由を得ることの難しさが中心になっている。 ここは監獄の中。囚人たちは毎日木馬のおもちゃづくりの単調な労働に耐えている。誰もが早く自由を得たいと願っている。同室のエミールとルイも作業場で金具を失敬して、毎日窓の鉄棒に刻み目を入れている。 ある夜、ようやく窓が壊れ、ふたりは刑務所の庭に出た。だがルイが塀を乗り越えたところで看守に見つかり、エミールは「おまえは先に行け」と叫んで、再び捕まってしまった。ルイは何とか脱走に成功し、人々の中に紛れ込む。 それからのルイの生活は順調だった。当時はやり始めた蓄音機の製造を手がけ、彼が社長として設立した会社はどんどん繁栄して、大勢の従業員を抱える大会社になってしまった。 エミールはようやく釈放されたが、働くところもなく野原でぼんやり寝ていたところを警官に浮浪者として捕まえられ、ルイの大工場で無理矢理働くことになってしまった。中はまるで監獄と同じだった。流れ作業の中、一人一人はわずかで単調な繰り返しの仕事を受け持ち、監視員が睨んでいるのだ。 あたまにきたエミールはきちんと仕事をこなせず工員たちと騒ぎを起こすが、そこへルイ社長が現れた。ルイはびっくりしてエミールを別室に呼び、金を渡して脱獄がばれないようにする。だが、エミールは密告をする気はない。代わりに自分が惚れてしまったこの工場の女性社員と結婚したいから何とかしてくれとルイに頼み込む。 ルイの力でその女に会わせて貰うが、すでに他に好きな人がいるらしい。二人は昔の仲を思い出して、会社の幹部のひんしゅくを買うほど大いに飲む。そこへルイが脱獄囚だと気付いたヤクザたちがやってきて、ルイに口止め料を要求する。何とか退散させたが、おそらく警察に伝わるのは時間の問題だろう。 ルイは今度、労働者を使わない完全自動の工場を完成させたところだった。工員は釣りでもして遊んでいればよい。祝賀会の会場には刑事の姿もある。ルイはこの工場の完成後は社長を引退して、ほかの仕事を始めると宣言した。 また捕まってしまっては元も子もない。ルイはエミールと共に、金をあきらめて放浪者の道を選ぶことにした。金はなくとも女房ももらえなくとも、自由だけは得られるのだから・・・(1931年) Directed by René Clair Writing credits René Clair (story) Cast: Henri Marchand .... Émile / Raymond Cordy .... Louis / Rolla France .... Jeanne / Paul Ollivier .... L'oncle (as Paul Olivier) / Jacques Shelly .... Paul リスニング;フランス語 haut de page不肖の養子を持った女を描く。実の子でなくとも小さいときから育てた子供は大人になっても、騒動を起こしてもやはりかわいいのだ。1924年、ここは南仏のニースの町。夫はカジノを経営し、妻のルイーズはミモザ館という宿屋兼下宿屋を経営していた。 ルイーズは家賃の取り立てや選択に追われる毎日だったが、夫婦の間には子供はなく、ある懲役囚から5年前に預かったピエールという少年がいた。ピエールは算数が得意で、友だちとの間でバクチのまねごとなどをしているから、ルイーズは彼の将来を心配している。 ピエールにとって初めての聖体拝領でお祝いをしていた日、刑務所を予定より早く出所した父親が訪ねてくる。ルイーズにとっては別れはとても辛かったが、実の父親に子供を返さないわけにもいかない。 それから10年後。父親は死に、ピエールは成人してパリに住んでいた。ルイーズたちに度々手紙をくれるのは、金の無心をしてくるからだ。最後の手紙に病気だとあったため、心配になったルイーズは単身、パリに向かう。 彼の住むアパルトマンに行ってみると、ちょうどヤクザから暴行されて大けがをしてかつぎ込まれてきたところだった。ネリーというボスの女に惚れ込み、ヤキを入れられたのだ。車のセールスの腕はまずまずだが、ちょくちょく賭博に関わり、仲間からはバカラと呼ばれていた。 ピエールの将来を心配したルイーズはニースに戻って暮らすように説得する。ネリーはロンドンに連れ去られ、金もなくなったピエールはひとまずミモザ館に落ち着くことに決めた。ニースでセールスの仕事を始め、ルイーズたちもひとまず安心するはずだった。 ところがボスのところから逃げてきたネリーがミモザ館に転がり込んだのだ。大喜びするピエールだったが、浪費癖と遊び癖のひどいネリーとの間に溝が次第に生じ、ルイーズの彼女を見る目は当然冷たい。 ネリーはもとのボスが迎えに来たこともあってミモザ館を出て行く。ひとり残されたピエールは自暴自棄になって車の売上金をカジノでみんなすってしまい、どうにもならなくなった。それを見ていたルイーズの頭にあることがひらめいた。小金を持って夫のカジノのルーレット場へ向かったのだ・・・(1935年・モノクロ) Directed by Jacques Feyder Writing credits Jacques Feyder / Charles Spaak Cast:Françoise Rosay .... Louise / Paul Bernard .... Pierre / Lise Delamare .... Nelly / Raymond Cordy .... Morel. リスニング;フランス語 haut de page4話からなる、さまざまなパリ娘の生態。他の都市の娘たちと比較してみるのもよいが、この4人はまったく性格が違っておりながら、実によく共通点が見えている。これを探すのも観客の楽しみの一つ。 第1話 エラは、パリの劇場のエンターテイナーだが、北部の町に自分を採用してくれるというプロデューサーに騙されたあげく、出演の時間に遅刻しそうになり大慌て。サン・ラザールの駅で乗り込んだタクシーにはすでにエリックという男の先客が乗っていたが、それにお構いなく運転手に劇場に向かうよう命令する。 エラは、遅刻した理由をいとこであるエリックの妻の葬式に出たことにしてもらい、リハーサルに出る。彼女はロックンロールに合わせて見事に歌い踊る。エリックはそれを見て感心する。それはそのはず、彼はアメリカからやって来た大プロデューサーだったのだ。 エラはスカウトされ、ハリウッドに出て売り出すことになった。今ではこのパリ娘はエリックの夫人になっている。 第2話 アントニアは、夫をこよなく愛する妻だ。ある日二人でゴルフに出かけると、昔の恋人クリスチャンに出会う。三人での再会に、夫は何か心配になるが、帰りのシャワー室で、クリスチャンがほかの男に、アントニアは感じない最低の女だというのを聞いてちょっと安心する。 そのことをうちに帰ってアントニアに話をしたが、最低の女とは憤懣やるかたない。クリスチャンが泊まっているホテルを訪れると、一緒に寝る。クリスチャンは、アントニアがいい女になっていることに感心し、自分に惚れてしまっているのだと思いこむ。だが、アントニアは事が済むとさっさと帰ってしまう。 日曜日はゴルフのコンペ。夫とクリスチャンは優勝争いをすることになった。クリスチャンは何度もアントニアに誘いを入れるが、彼女は少しも応じない。それどころか、この間のベッドのことを口にして最低の男だとこき下ろす。ショックを受けたクリスチャンは完敗し、アントニアは優勝カップを持って夫と一緒に仲良く帰る。 第3話 フランソワーズは結婚してサンフランシスコに住むが、夫との生活に倦怠を感じ、親友ジャクリーヌの住むパリへひょっこり舞い戻ってきた。ジャクリーヌは、フランソワーズに男を見る目がないことやのぼせ上がりやすいことを注意した後、自分の恋人であるミシェルは決して浮気もしないと自慢する。 たまたまその夜はジャクリーヌはバイヤーとの食事で外出することになり、ミシェルがやってきてフランソワーズのおもりをすることになった。ミシェルはフランソワーズの小悪魔的な肢体に惹かれてしまい、レストランから自分の家に向かう。フランソワーズは誘惑に成功して二人はベッドの中に。 約束の時間を過ぎても迎えに来てもらえないジャクリーヌが自分でやってきて、二人の間の出来事を知る。親友同士は罵り合うが、フランソワーズは、アメリカの夫からかかってきた電話をとって、今すぐ帰ると言っている。おかげでミシェルとジャクリーヌも元のさやに収まりそうだ。 第4話 高校生のソフィーは恋に燃える母親と暮らしているが、恋人の熱烈な手紙を偶然に拾ってしまったのをいいことに、クラスでいつも男関係を自慢している少女たちに一泡吹かせようと計画を立てる。 (本当はいないのに)秘密の恋人がいると吹聴し、夜に秘密のアパートであっているというものだから、級友たちは簡単に引っかかって偵察に来る。芝居が危うくばれそうになったので、ソフィーは窓から抜け出して屋根沿いに逃げるが、ある窓から、泣いている青年の姿を目にして、窓から入って行く。 ルイというその青年は明日がギターコンテストなのに、棹(さお)が折れてしまったので泣いていたのだ。ソフィーは自分が練習をあきらめたギターを貸してあげると申し出る。ルイは大喜び。翌日ギターを大切に抱えてコンテスト会場に向かう。教室では、みんな興味津々。でもソフィーはそのことを心の奥にしまって幸せな気持ちになるのだった。(1962年) Directed by Marc Allégret Claude Barma Writing credits Marc Allégret (segment) Jacques Armand (segment) Cast: Dany Saval .... Ella (segment "Ella") / Dany Robin .... Antonia (segment "Antonia") / Françoise Arnoul .... Françoise (segment "Françoise") / Catherine Deneuve .... Sophie (segment "Sophie") リスニング;フランス語 haut de pageEt Dieu... créa la femme 素直な悪女 原題は「そして神は・・・女を創造された」である。ヒロインの性格をずばり説明した日本語の題名がよいか、聖書の創世記の中におけるアダムとイブの物語の冒頭の方が、より中身を表しているかは議論のわかれるところだ。とにかく主演のブリジッド・バルドーは、小悪魔的な魅力を画面いっぱいにふりまく。 南フランスの港町。船大工をする三人の兄弟とその母親が、海辺に面したドックで細々と暮らしている。近辺で豪華なヨットを乗り回す中年過ぎの実業家エリックは、このドックの敷地に目を付け、ここにホテルを建てようと、売却を兄弟に迫るが長男アントワーヌは先祖代々の土地だからといってはっきりと断った。 そのころ、ようやく孤児院から出してもらったジュリエットが町に戻ってくる。思ったことは即実行し遊び回り仕事も裸足でやったりするものだから、近所の評判ははかばかしくない。誰も彼女が生娘だとは信じていない。アントワーヌはある日彼女と知り合ったが、まともにつきあう気はない。一緒に連れて行くという空約束をして、翌朝仕事先の町に、彼女を置いたまま旅立ってしまった。 心では惚れていたのに置いてきぼりにされたジュリエットは怒り心頭に達し、次男ミシエルとつきあい始める。二人は深い仲になり、ついにまわりの大反対を押し切って結婚してしまった。だが遊ぶことが大好きなジュリエットは、夫との平凡な生活に幸せを感じることはむずかしい。それでも食べることやレコードを聴くことに慰めを見つけて毎日を送っていた。 エリックもひそかにジュリエットに惹かれてはいたが、まずは何とかしてドックの土地を買い取りたかった。里帰りしていたアントワーヌは、自分が社員になることを条件にようやく売却に応じる。自分の性格を良く知っているジュリエットは、かつて自分を棄てたアントワーヌがこの土地に居着くことを望まなかった。エリックにも頼み込んだのだが、当分は兄弟はそろって一緒に暮らすことになった。 ある日ミシエルがマルセイユに商用で出ている間に、ジュリエットはモーターボートを勝手に持ち出したがエンジンが火を噴いて、漂流しはじめた。家にいたアントワーヌは海岸から泳いで船にに向かい、燃えて沈もうとするボートから彼女を間一髪で助け出した。 ジュリエットは砂浜で自分を救ったアントワーヌに自然に身体をゆだねてしまった。家に帰ったジュリエットは自分のやったことを後悔し頭が混乱し家を飛び出した。一部始終を知った母親は、ジュリエットは誰とでも寝る女と思っているから、帰ってきたミシエルに早く彼女とと別れることを勧める。 ジュリエットが酒をあおっている酒場にミシエルが向かうとそこにはエリックもいた。興奮したミシエルは踊り狂うジュリエットに向かって発砲するが、弾はエリックの腹をかすった。アントワーヌの運転でエリックは知り合いの医者のところに向かう途中、アントワーヌをどこか遠くの場所に赴任させることを約束する。一方ミシエルは思いきりジュリエットを殴ったが、彼女はそれでなぜかほっとしたようだった。(1956年) Directed by Roger Vadim Writing credits Roger Vadim and Raoul Lévy Cast : Brigitte Bardot .... Juliete Hardy / Curd Jûrgens .... Eric Carradine (as Curd Jurgens) / Jean-Louis Trintignant .... Michel Tardieu / Jane Marken .... Madame Morin (as Jeanne Marken) リスニング;フランス語 人類が犯した犯罪は、それを克明にとどめ、次世代に語り継がなければいけない。そのためには真実を伝え、醜い部分や悲惨な部分を隠すということがあればその試みは水泡に帰してしまう。 このような仕事に携わる者は、後世の人間が人間の歴史が続く限りその記録を見てゆくのだという重大な責任を負う。日本の戦争についてはきちんと物事のあらゆる面から記録する努力が為されているだろうか?日本の場合には都合の悪いところや悲惨な場面を平気でカットする制作者がいる。 この映画は、アウシュビッツをはじめとするユダヤ人強制収容所の記録である。今では廃墟となった、収容所の住宅、監視塔、そしてガス室や火葬場が荒れ果てた雑草の中に埋もれている。これはカラー写真で撮影されている。 一方、ユダヤ人狩りで貨車に乗せられた彼らが収容所に到着し、最期を遂げるまでの様子は、それまでに記録された写真を載せている。こちらは白黒写真である。収容所での生活、重労働、略奪と助け合い、監視人の不正と搾取、劣悪な生活条件が示される。 やがて「処分」が決まり、より効率的なガス室や焼却装置が作られた。ガス室の天井には、逃れようとする人々が必死であったことを示す爪の跡が残っている。あまりに多くの人間を処分したので、戦争が終わったときまでに火葬が間に合わなかった。 殺された人々の身につけていたものはことごとく利用された。女の髪の毛は毛布となり、皮膚も使われた。人体実験のために数多くの身体が医者たちによって研究対象となった。 ナレーションは、シンプルに詩のように語られる。それは聞く人々自身に想像をさせようとしているかのようだ。語りの最後では、このようなことがこれからも起こることが暗示される。たしかに21世紀は、まるでこんな悲惨な事件が起こったことを忘れたかのように絶えず戦争が続いてゆく。(1955年) Directed by Alain Resnais Writing credits Jean Cayrol Cast: (in alphabetical order) Michel Bouquet .... Recitant/Narrator (uncredited) / Reinhard Heydrich .... Himself (behind Hitler) (archive footage) (uncredited) / Heinrich Himmler .... Himself (with Hitler) (archive footage) (uncredited) / Adolf Hitler .... Himself (views parade) (archive footage) (uncredited) / Julius Streicher .... Himself (makes speech) (archive footage) (uncredited) L'Annee derniere à Marienbad 去年マリエンバードで 難解な映画だという評判があるが、2回目に見るとなぜかストーリーが自然に入ってくる。男と女とその夫以外はほとんど語らず身動きしないという設定も「くどき」を中心にすえている以上、実に自然な表現の仕方なのかもしれない。 ある豪壮な館(やかた)風のホテル。内部はクラシックな彫刻と太い円柱が並ぶ、迷路のような廊下が巡り、まるでベルサイユ宮殿のような造りである。外は典型的なフランス式庭園で、コーン型の樹木が列を作り、その森ははるか視界の彼方まで続いている。 一人の男がそのホテルの中にいる。彼はちょうど一年前、この場所である人妻をくどき、寝室を共にした。彼は女に一緒にこのホテルを発つようにとうながしたが、彼女は夫とすぐ別れる決心がつかず、一年待ってくれと言った。そして今男は再びこの女に会い、約束を実現しに来たのだった。 だが、女は一年前のことなど知らないという。だがそのまなざしには完全な拒否の色はなかった。男はホテルの内部や庭園で一年前何があったかを一つ一つ克明に女に言って聞かせる。ホテルの客のこと、庭園にあるシャルル3世とその妻の銅像のこと、誰にも負けない賭博師である彼女の夫のこと、彼女のほほえみや沈黙の瞬間など、男はそれは正確に覚えていて女に語る。 去年、彼女は自分のホテルの部屋のドアを半開きにして男を待っていた。そのことを彼女は今になってなかなか認めたがらない。去年の夏は寒くて庭園の池が凍っていたなどと見え透いた話をしたりする。もうこれ以上自分を追い回さないでくれと言ったりする。 だが、ついに彼女は陥落した。最後まで夫のことが気になる彼女はもう一年待ってくれなどと言い出したが、深夜、夫が演劇鑑賞から戻ってくる前に彼女は男に手を取られてこの館をあとにしたのだった。(1961年) Directed by Alain Resnais Writing credits Adolfo Bioy Casares (uncredited source: 1940 novel The Invention of Morel) Alain Resnais Cast: Delphine Seyrig .... A/Woman // Giorgio Albertazzi .... X/Stranger // Sacha Pitoeff .... M/Escort/Husband // Francoise Bertin .... Un personnage de l'hotel 1913年頃の南フランスの片田舎。地平線の向こうまで広がる小麦畑の中に小さな村がふたつあった。ルブラックをガキ大将とする一方の村の子供たちは、隣村の子供たちと何かにつけて仲が悪く、いつも戦争ばかり。 この間も彼らから「フニャチン」とよばれ、はじめはなんだかわからずようやく悪口だとわかったのだった。学校が終わるとルブラックを先頭に直ちに「戦闘態勢」にはいる。ところが今回相手方のガキ大将を見事捕まえた。ルブラックは部下たちに彼を木に縛り付け、ボタンを全部ナイフで取るように命じる。 相手方のガキ大将は誇りを傷つけられ、泣いて帰って復讐を誓う。そして数日後、相手方の巧みな戦略でルブラックが今度は捕虜になってしまった。ボタンを全部取られてうちに帰ると父親が激怒し、寄宿舎(少年院の代わり?)に入れてしまうと怒鳴って殴りつけた。 母親の言葉にヒントを得たルブラックは、まだ寒いのに部下たちに素っ裸で隣村の連中と戦うことを提案する。ねらいは的中し、敵を撃退して勝利したが、鼻風邪や咳をする者が続出した。それでルブラックは隠れ家を造り、ボタンをたくさん買い込んで蓄えておけばいいと提案した。 みんなは賛成し、マムシや狐やキノコを集めてきてそれを売り、ボタンを買う資金とした。立派な隠れ家ができあがり、これで戦いの準備は万全となり、みんなでお祝いのパーティを開いている。そこへトラクターがつっこんできた。相手方のガキ大将が父親から借りてきたのだ。あえなく隠れ家はつぶされルブラックたちはボタンを取られてさんざんな目にあう。一方トラクターはそのあと故障して動かなくなってしまった。 誰が隠れ家のことを密告したのか?仲間の一人が裏切ったのだ。みんなからリンチを受けて、その少年は村に泣いて帰った。その晩はどこの家でも子供たちが親から折檻されて泣き叫ぶのが聞こえた。ただルブラックだけはこれで寄宿舎行きが決まったも同然だからそんなことになるよりは森の中に隠れる。 だが、追っ手はしつこい。犬に追われ、最後にはよじ登っていた木が切り倒されて、あえなくルブラックは寄宿舎行きとなった。寄宿舎の整然と並ぶベッドの中で、うちしおれるルブラック。ところが何と目の前には、トラクターを壊したためにここに送られてきた相手方のガキ大将が立っていたのだ! 原題は「ボタン戦争」。行進曲のような楽しいテーマソングと共に、2度と帰ることのない、のどかな時代の少年たちの生き生きした姿を描く。ガキ大将を中心に、自分たちで創意工夫を凝らし、一つの社会を作ってしまう子供たちの「生きる力」のすごさを見事に描いている。(1962年) Directed by Yves Robert Writing credits Louis Pergaud (novel) Yves Robert (screenplay) リスニング;フランス語 ゲンズブールによる、ギター独奏が非常に印象に残り、ドヌーブが次々と纏ってみせる華麗な衣装やファッション・ショーのモデルたちはウンガロがデザインしている。 マノンはだれもが振り返る、絶世の美女だが、その振る舞いには魔性が秘められていた。成田空港からファーストクラスのスカンジナビア航空に搭乗しようとしたとき、ふと彼女と知り合った若い記者、ジャンは金もないのに思わず自分も航空券をファーストクラスに換えてしまう。あとで編集長にこっぴどく叱られることになるのだが。 ところでマノンは、デグルーという大金持ちといっしょに旅行中だった。だが、何となくジャンに惹かれたマノンはパリに着くと、ジャンのタクシーに乗り込んでしまう。ジャンは自分に忠実であることをマノンに要求するが、彼女は神出鬼没、いったいどこの男とつきあっているか皆目分からないのだった。いったんはジャンを捨てたように見えながら、わざわざ取材中のジャンをストックホルムに訪ねてきたりする。 実は、彼女には弟がいて、彼がマノンの行動を影になり日向になり助けていた。そのわけはデグルーからの金が目当てだったのだ。姉弟はおかげで豪勢な生活を楽しむことができた。ジャンはそのカラクリをうすうすと気づき始めるが、一方マノンとのつきあいは、多額の金とエネルギーを必要とし、おかげで編集長からクビを言い渡される。 無一文になったのに、ジャンはどうしてもマノンとまともな関係を持ちたいと、デグルーとの腐れ縁を何とか断ち切る方法を考えていた。ニースにデグルーをおびき寄せたとき、寝取られていることを心配したデグルーは、密かに盗聴装置を持ち込んでいた。 それを知ったジャンは、わざとマノンに自分への愛の告白を盗聴器の前で大声でしゃべらせ、デグルーは自分が寝取られたことを完全に悟る。せっかくの金蔓を失ったことでジャンに罵りのことばを投げるマノンであったが、もうどうしようもない。二人は裸足でパリにヒッチハイクして戻るしかないのだ。(1971年) スタッフ 監督: Jean Aurel 原作: Abbe Prevost 脚本: Jean Aurel / Cecil Saint Laurent 音楽:Serge Gainsbourg 衣装(デザイン): Emaniel Ungaro キャスト(役名) Catherine Deneuve (Manon) Sami Frey(Des Grieux)Jean Claude Brialy(Jean Paul) Elsa Martinelli(Annie)Robert Webber(Ravaggi)Paul Hubschmid(Simon) この作品を一見して感じることは、これが寅さんの男はつらいよシリーズによく似ていること。なぜならば20世紀初頭のパリも昭和の葛飾柴又も共に下町の人々の人情に満ちあふれているからだ。最後は安っぽいハッピーエンドではなく、未来への希望を残して終わる。 ここは、サン・マルタン運河沿いにある、下宿と当日の泊まりを兼ねた北ホテル。女将さんと夫の二人が中心になり、養子、使用人、近所の人たちが集まるにぎやかなところだ。 ある日、深刻な表情をした若い二人連れが泊まりに来る。ピエールとルネの二人は食い詰めて部屋で心中をするつもりでいたのだ。ピエールは、ルネの胸をピストルで撃ったところで、向かいの部屋にいる商売女レイモンドのヒモになっているならず者のエドモンドに発見されてしまう。 だが、彼は黙ってピエールを逃がし、幸いルネも一命をとりとめた。ピエールはその後死にきれず警察に自首する。ルネは自責に苦しむピエールを刑務所に面会に通い、何とか二人の間を修復したいと願っている。 ルネは退院後、北ホテルにあいさつに来た。自分がホテルの男に輸血で救われたことや、親切な女将のすすめで、しばらくこのホテルで仕事を手伝うことになった。彼女があまりに別嬪なので、ホテルに出入りする男たちはみな彼女にくびったけだ。 エドモンドもその一人で、南仏にレイモンドと高飛びする計画を中止して、北ホテルに居続けることになる。ピエールはかたくなな態度をとり、それに不安を感じたルネはエドモンドの誘いを受けて、過去を捨てて二人でスエズ運河の町、ポートサイドに逃げる気持になる。 だが、いったん船に乗ったもののどうしてもピエールを忘れることができず、ルネはやはり北ホテルに戻ってしまった。ようやくピエールの気持も和らぎ、彼の釈放の日が近づいてきた。 パリ祭の夜、エドモンドは北ホテルにやってきた。ルネが船から下りてしまったことは少しも咎めることなく彼は紳士らしく最後の別れのあいさつに来た。ルネは北ホテルに別れを告げ、出所したばかりのピエールと新しい門出を目指すのだった。(1938年) Director:Marcel Carne Writers:Jean Aurenche Eugene Dabit (novel) Cast Annabella ... Renee / Jean-Pierre Aumont ... Pierre / Louis Jouvet ... Monsieur Edmond / Arletty ... Raymonde Le Charme discret de la bourgeoisie ブルジョワジーの秘かな愉しみ 南アメリカのミランダ国からフランスにやってきている大使ドンは麻薬に密輸に絡んで大儲けをしているが、一方大変なパーティ好きで、妻とともに、テブノー夫妻とその妹アリスの主催する夕食会にたびたび出かけている。 とりたてて筋があるわけではないが、ドンは自国からのテロリストや警察、軍隊などに命を狙われているらしく、しょっちゅう殺される不安から夢でうなされたりする。 テブノー夫妻には、料理係の女がおり彼女が見事な料理を運んでくる。庭師は病気でクビになったところだが、昔自分の両親を殺された司祭がこの仕事を引き受け、偶然に病気の男が実はその犯人だったことを知る。 テブノー夫人とアリスがレストランで友人と食事をしていると、知らない中尉が突然現れて自分の話を聞いてくれという。自分は小さい頃義父によって実の両親を殺され、その復讐として義父を毒殺したことをいかにも得意気に話して聞かせるのだった。 舞台はほとんどがこのグループの食事のシーンに限定される。それぞれがまとまった話のようであり、お互いに脈略はなく、それでいて何か殺される不安がみなぎっているような場面づくりである。実際に殺される場面が実は主人公たちの夢であったことが何度もある。 こんな映画表現もあるのだ。「去年、マリエンバードで」と同じく初めて見る人にはとまどいを引き起こすかもしれないが、そんなことを気にしないで見続けていると結構そのおもしろさが伝わってくるのだ。映画は必ずしも筋を忠実に追った起承転結である必要はないようだ。(1972年) Director:Luis Bunuel Writers:Luis Bunuel (written by) Jean-Claude Carriere (written by) Cast:Fernando Rey ... Don Rafael / Paul Frankeur ... M. Thevenot / Delphine Seyrig ... Mme Thevenot / Bulle Ogier ... Florence / Stephane Audran ... Alice Senechal (as Stephane Audran) 裏切りがテーマ。世の中には良いことをしている集団の中でそれを破滅させる裏切りもあれば、悪いことをしている集団の中でそれを破滅させる裏切りもある。 フランスのある刑務所でのできごと。ガスパールは妻とのつまらない口論の果て妻が脅すために持っていた猟銃が暴発し、彼女の肩にけがをさせてしまった。判決は殺人未遂。この時代には20年ぐらいの刑期が待っていた。 ある日彼は別の部屋に移される。そこには4人の男たちが入っていた。彼らはとても気分よくガスパールを迎えてくれた。しかも囚人には珍しく段ポールの箱づくりという労働を自ら進んでやっていた。 実はそれには訳があって首領格の男は脱獄の名人で今回も箱づくりは穴掘りのためのカモフラージュだった。部屋の床の板をはずすと石の板が現れた。看守の目をかすめながらそれをうち砕くとその下にぽっかりと穴があき地下室に降りることができた。 地下室の鉄格子をはずすと通路に出たが壁沿いにあった扉はパリの下水道に通じていたのだった。だが下水道は水の流れる溝を残してセメントと石で塗り固めてある。男たちは交代でその壁に穴を開け始めた。 合い鍵を作り、時間を知るために診察室からちょろまかしてきたグラスと吸い殻入れの砂を使って砂時計をこしらえた。金属の棒をツルハシ代わりに、そしてどこかから手に入れたカナノコで次々と金属を切ってゆく。 男たちの幾夜にもわたる苦労は実りついに壁が貫通した。地下下水道をたどって行くと、刑務所の外にあるマンホールに出た。道路から頭を出すとタクシーが通ってゆく!自由の世界が目の前なのだ! いよいよ明日脱出決行と言うとき、ガスパールは所長の部屋に呼ばれる。妻が告訴を取り下げたというのだ。その知らせを聞いてもあまりうれしくなさそうな顔をしているガスパールに所長が心配して相談に乗ってあげようと申し出た・・・(1960年) Director:Jacques Becker Writers:Jean Aurel (screenplay) Jacques Becker (dialogue) Cast ; Marc Michel ... Claude Gaspar (as Mark Michel) / Jean Keraudy ... Roland Darbant / Philippe Leroy ... Manu Borelli / Raymond Meunier ... Vossellin/Monseigneur / Michel Constantin ... Jo Cassine Des Gens Sans Importance ヘッドライト 日本語のタイトルは、長距離トラックの運転手が主人公なのでヘッドライトとしたようだ。ところがフランスの原題は「取るに足らない人々」である。仕事に追わた貧しい庶民の悲しい一場面を描く。 ジャンは二人の男の子と娘を抱えトラック運転の重労働に毎日従事していた。稼ぎを得るため祝日さえ家に帰らないから妻はいつも不機嫌で愚痴を言っている。そのためかジャンはボルドーへ向かうドライブインでクロチルドという若い娘に出会ったときすぐに夢中になってしまった。 クロチルドは小柄で美しかったが親に疎まれ、仕事はなかなか見つからず孤独な生活を送っていた。ドライブインでの仕事もいつまで続けられるかわからなかった。初老になっているジャンだったがこの娘は彼にすっかり入れ込んでしまった。 だがある日偶然にジャンの一家はクロチルドをレストランで見かけてしまう。ジャンの生意気盛りの娘はジャンが前にいた会社から転送されてきた手紙を勝手に開封しクロチルドが妊娠していることを大声で読み上げてしまう。 家にいられなくなったジャンはクロチルドを家畜輸送車に乗せて南仏へ向かう。だがクロチルドは堕胎の手術の後遺症で300キロの道のりをトラックの運転席に乗ってゆくのはとても無理だった。彼女の容態は急変しジャンは救急車を呼ぶ。霧がひどく救急車の到着は遅れた。朝の日が射す頃クロチルドはもはやこの世の人ではなかった。 今でもジャンはボルドーへの街道を通るたびにいつものドライブインに立ち寄り、彼女のことを思い出すのだった。(1955年) Director:Henri Verneuil Writers:Serge Groussard (novel) Henri Verneuil ... Cast; Jean Gabin ... Jean Viard / Francoise Arnoul ... Clotilde Brachet / Pierre Mondy ... Pierrot Berty / Yvette Etievant ... Solange Viard / Dany Carrel ... Jacqueline Viard / Nane Germon ... Mme Cussac 元ボクシング選手、アンリ・フォールは字が読めないのだがヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の大ファンだ。というのも自分の一生がジャン・バルジャンに似ている気がしていたからだ。彼の父親は19世紀の終わりの日に奉公していた伯爵を殺したというぬれぎぬを着せられ、牢獄に閉じこめられ2回目の脱獄の時に命を落とす。そして体を売ってまで裁判の弁護士費用を捻出しようとしていた彼の妻は夫の死のニュースを聞いて自殺する。 息子アンリはボクシングの才能を認められ1931年に引退したときは小金を貯めて引っ越し会社を始めていた。第二次世界大戦が始まり迫害されパリを追われたユダヤ人弁護士アンドレとバレリーナの妻エリゼ、二人の娘サロメの三人をスイス国境まで送り届ける仕事を引き受ける。 サロメの将来を考えた夫婦はアンリに頼んで途中にあったカトリックの修道院に彼女を預け、製材所で亡命するユダヤ人たちと合流するがこれがナチスの罠で彼らは一斉に銃撃された。エリゼは捕虜になりドイツ人将校の情婦になることを拒否してポーランドの収容所に送られる。アンドレは重傷を負ったが近くの農場の夫婦に助けられ九死に一生を得る。 一方アンリは自分を親ナチスであるペタン政府の拷問から救ってくれたならず者たちと手を組みドイツ軍やペタン政府への強盗に参加する。やがて連合軍がアンリのふるさとであるノルマンジー地方に上陸することになった。アンリの活躍でドイツ軍の堡塁(ほうるい)を破壊し一躍戦後の英雄となった。 そこへサロメが自分の両親からの手紙がいっこうに来ないことを心配してアンリの元にやってくる。やがて終戦。ポーランドからエリゼが無事戻ってきた。だがアンリはかつての強盗仲間の争いに巻き込まれ再び投獄されてしまう。そこへアンドレも戻ってきた。命を助けてくれた農婦の狂った恋のため長い間地下室に幽閉されていたが夫婦が殺し合いをしたためにようやく地上に出ることができたのだ。アンドレの弁護のおかげでアンリは釈放され市長となり、サロメはアンリの旧友のところにいたマリウスという青年と結婚式を挙げて大団円となる。振り返ってみればアンリの一生はあのジャン・バルジャンとそっくりであったのだ。(1995年) Director:Claude Lelouch Writers:Victor Hugo (novel) / Claude Lelouch Cast; Jean-Paul Belmondo ... Henri Fortin/Jean Valjean / Michel Boujenah ... Andre Ziman / Alessandra Martines ... Elise Ziman / Salome Lelouch ... La fille Ziman (as Salome) / Annie Girardot ... Thenardiere 1942 / Philippe Leotard ... Thenardier 1942 / Clementine Celarie ... Catherine/Fantine / Philippe Khorsand ... Le policier/Javert / Ticky Holgado ... Le gentil voyou/Kind Hoodlum / Rufus ... Thenardier 1830/1990 / Nicole Croisille ... Thenardiere 1830/1990 ボルドーの近く、ジロンド川の流れる地方都市。溶鉱炉会社社長の妻、アンヌは今日もまだ幼い息子をピアノレッスンに連れてきていた。教師が何度言っても、息子は言うことを聞かない強情な子だった。”モデラート・カンタービレ”は普通の速度で歌うように弾くのよ、と何度いわれてもそのとおりにしない。 だが息子は馬鹿なのではなかった。母親と一緒にいるときはごく普通の子だった。問題はアンヌの焦燥感だった。お金に困らぬ生活をして豪邸に住んでいながら、子供を連れての散歩ぐらいしか生活のリズムがない。 その日、レッスンの最中に突然、女の悲鳴が聞こえた。アパルトマンの下の階にあるカフェで女が男に、おそらく恋のもつれから殺されたのだ。様子をうかがいにいったアンヌはそのカフェでショヴァンという、自分の夫の溶鉱炉で働く労働者と親しくなる。ほかに聞く相手もいないものだから、アンヌは彼にさらに事件の情報を知らせてくれるようにと頼んで再会を期す。 カフェで女が一人ワインを飲んだりすれば、当然人目を引くが、アンヌは気にも留めない。そして何度か逢引をショヴァンと繰り返す。ジロンド川を横断するフェリーに乗って対岸で逢ったこともあった。アンヌは自分の生活のむなしさがこの恋によって埋めることができると信じ、ますますのめりこんでいくが、ショヴァンにしてみればはじめは軽い気持ちで引っ掛けただけだら、だんだん重荷になってきた。 やがて、二人の仲は街のうわさになり、ショヴァンはこの町に居づらくなった。自宅でパーティが開かれた夜、アンヌは女主人の役をほおり出して、店を片付けた後のカフェに向かう。ショヴァンは待っていたが、翌日この町を去ることを告げる。アンヌはそのショックを受け止めることができない。悲痛な声で泣き叫ぶと、カフェのカウンターにうずくまるだけだった。探しに来た夫が車に乗せて帰るまで。(1960年) Director: Peter Brook Writers:Marguerite Duras (play) Gerard Jarlot (adaptation) Cast;Jeanne Moreau ... Anne Desbaredes / Jean-Paul Belmondo ... Chauvin / Pascale de Boysson ... Bar's owner / Jean Deschamps ... M. Desbaredes / Didier Haudepin ... Pierre リスニング;フランス語 題名は英語だが、フランス映画。パリの街に、恋人のできない青年、アレックスがうろついている。彼は映画の台本を書くことが志望らしい。彼は親友に自分の恋人を取られてしまったばかりだ。自分の部屋に戻っても自分の心のむなしさはどうしようもない。 一方、ミレーユという、もう一番いい時期が去った女が、やはりパリの街に暮らしている。恋人と一緒に暮らしているものの、彼はミレーユにうんざりして口さえも利いてくれない。彼女はタップダンスの練習をして気を紛らわせているが、やはり孤独感はどうしようもないのだ。 アレックスは、ふと手に入れた名刺のメモから、あるパーティに参加してみる。そこにはミレーユが来ているはずだった。親切な女主人のおかげで台所でミルクを飲んでいると、ミレーユがやってきた。二人は話し込み、お互いに極めて孤独であることを知る。 真夜中が過ぎて、二人はいったん別れるが、気になったアレックスは彼女のアパルトマンに向かう。ドアの向こうには風呂場の水が出しっぱなしになっていて、ミレーユは手にはさみを持っていた・・・(1984年) Director:Leos Carax / Writer:Leos Carax (writer) / Cast (Cast overview, first billed only) Denis Lavant ... Alex / Mireille Perrier ... Mireille / Carroll Brooks ... Helen リスニング;フランス語 haut de page |