助動詞編 |
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スペイン語やフランス語を学ぶと、動詞の活用形の複雑さに泣かされた人も少なくないでしょう。接続法、条件法、過去未来、などさまざまな名前の下に動詞の語尾が変化します。ところが英語では不定形のほかに、現在、過去、過去分詞、ing形しかありません。このわけは、助動詞がたくさん使われているからです。英語における助動詞は、主語と動詞の間におく記号として急速に発展を遂げました。 仮定法では、主節(だろう、かもしれない、とおもわれるなど)に would/could/might をつかい、話者の意志(はずだ、はずがない、ちがいないなど)をあらわし、目的(するために)を表す接続詞 so that/in order that のあとの節には can/will/may を入れるなど使用範囲を広げてきました。おかげで動詞の使用法が著しく単純になったのです。また、助動詞”もどき”も現れました。be going to/have to/be able to などがその例です。さらに、これらに tend to/hesitate to/fail to なども加えてしまうと助動詞と一般動詞の境界線があいまいになってしまいます。なかには need や dare のように動詞と助動詞の両方の用法があるものもあります。 問題は数少ない”真正の”助動詞に多くの機能を持たせたために一つの助動詞がたくさんの用途、意味を持つようになってしまったことです。用途に応じて助動詞を大量生産するべきか、一つの助動詞に何役も担わせるべきかという選択で、英語は準動詞の場合と同じく、後者を選んだのです。したがって文章の中に助動詞が出てきたときは、まず正確にその使われている状況を正確に把握しなければなりません。単なる単語の外形だけでは判断は禁物なのです。 たとえば、He could swim. はその話が過去の出来事であり、泳いだ具体的な状況(川とかプールとか)がはっきりしていれば、過去形の助動詞として「泳ぐことができた」とすることができますが、それまでの文脈の流れが過去のことではなく、現在、泳げるようにがんばっている状況であるときには、これは仮定法過去の助動詞として「泳げるだろう・泳げると思われる」となります。その他、 would, must, should, などが特に、このような厄介な問題が常に付きまとうことを心に留めておいてください。 助動詞を単語別ではなく、使用状況によって分けるとすると次の5種類が考えられます。 (1)状況説明;客観的事実を説明するのに役立つ表現です。 「可能=できる can/be able to できた could (was*were able to)」「過去の習慣・状況=したものだ used to 」「過去の動作習慣=したものだ would 」「否定の意志=どうしても・・・しない will not どうしても・・・しなかった would not 」など。 (2)相手への伝達;相手に向かって述べることによって何らかの影響を及ぼすことが考えられる場合です。 「許可=してもよい can / may 」「命令=しなければいけない must (have to)」「禁止=してはいけない must not 」 (3)話者の心的態度;外的状況に対して自分の主観的な見方を表現する場合です。もちろん、そのことを相手に伝えて影響を及ぼすことも可能ですが、黙って一人で心の中で考えていても一向に差し支えないことが特徴的です。助動詞の最も本来的な使用法といえます。現在や未来の状況に対する態度の場合は<助動詞+動詞原形>です。これに対し過ぎ去った出来事に対する態度の場合は<助動詞+ have p.p. >です。 「必要=必要がある need 」「義務=すべきだ should/ought to 」「可能性=かもしれない、ありうる may/can 」「断定的=はずがない、ありえない cannot 違いない must 」「」 (4)想像的世界;いわゆる仮定法に入る範疇で、助動詞を現在形の代わりにわざと<助動詞過去形+動詞原形>を用い、過去形の代わりにわざと<助動詞過去形+ have p.p. >を用いる方法です。「仮定法過去=だろう would できるだろう could かもしれない might 」「仮定法過去完了=しただろう would have p.p. できただろう could have p.p. したかもしれない might have p.p. 」 (5)特定接続詞内の節;いくつかの接続詞はある特定の助動詞を要求します。それは現在に至って不必要になったり、省略されたり、動詞原形に置き換えられたものもあります。「目的;するために so that / in order that S can/will/may 」「要求・願望・必要などの内容を表す節; that S should (または動詞原形のみ)」「条件の強調;万が一・・・なら if S should 」「譲歩;・・・であっても though/no matter wh-/wh-ever S may (省略可能)」「否定目的;しないように lest S should (または動詞原形のみ)」「 この通り、一つの助動詞がこの5分野にまたがって使用されているのですから、慣れないものにとっては判定に極めて慎重にしなければなりません。この解説は助動詞を”横割り”にして考察したものです。この下の部分は他のどの英語の参考書でもやっているように、個別に”縦割り”で解説していきます。 can の用法は4つぐらいに分類しておくのが便利です。それ以上の細かい分析は辞書に任せるとして、実際に用いられれている状況に準じて考えてみます。
「能力」は be able to にきわめて近い意味になります(ただし過去形の場合は少々違う)。 「許可」は、かなり偉い人の場合には may を使うのに対し、can はもっと日常的な状況で用いられます。 「可能性」とは、確率がフィフティ・フィフティぐらいであって、決して断言できるほどでない場合を言います。 「断定」は I am sure の気持ちが込められており、話者の確信が入っています。ただし can が受け持つのは否定と疑問(修辞疑問)だけであって肯定は、must が受け持ちます。 must の用法は3つあります。ただし、肯定の場合は文脈を見なければ、どちらの場合か判断に苦しむ場合が少なくありません。
「義務」を他の意味に誤解されないためには、have to を使うのが一番です。過去形の had to が使えることもありますし。その他強さに応じて、should, ought to, had better, need などを使い分ければよいのです。 「断定=・・・にちがいない」が話者の確信を示す、 must のメインだといえましょう。can のところでも述べたように、これは肯定専用です。 「禁止」は must not と、否定によって生まれます。同様に、should not, ought not to, had better not, need not もそれに近い意味が生じています。要注意なのは、not have to は禁止ではなく、ほぼ need not の弱さになってしまっていることです。 注;よく引き合いに出される must not go と not have to go とを比較してみると、前者は not の位置が must のうしろにあるために go に強いつながりを持ち、「行かないことがなければならない」という”禁止”の意味になり、後者は not の位置が have to の前にあるために have to そのものと強いつながりを持ち、「行かなければならないことにはならない」という”不必要”の意味が生じているのがわかります。may の用法は2つあります。一つは”許可”をあらわす「・・・してもよい」であり、もう一つは話者の”推量”を表す「・・・かもしれない」ですが、前者は can によって代行されることが多く、さほど用例がありません。ですから多くの場合は推量を示していると考えていいでしょう。 したがって、may well も推量の意味を含んでおり、過去形にした might も仮定法としての意味、つまり非現実的な意味合いを帯びた上での推量が示されています。 いうまでもなく、will のもっとも主要な用法は”未来”を示すことですが、かつてのイギリス英語のように”単純未来”、つまり人間の意志とは無関係に起こる出来事と、”意志未来”、つまり人間の意思、希望、想念が含まれる出来事との厳密な区別はなくなっています。ただし、if 節の中では本来現在形を使うべきところで、この will を使っている場合、明確な意志であると考えていいでしょう。また、Will you / Won't you のような you を主語とする疑問文の場合、<依頼・勧誘・命令・指示>の意味が生じますが、これも意志のあらわれと見ていいでしょう。 未来の出来事であることは、その文に含まれる next year とか tomorrow などの単語によって容易に推定することができますが、どう考えても未来の出来事だと思えない内容の場合には、will の新しい意味が生じます。 Boys will be boys. / Accidents will happen. / Oil will float on water. などの例文の場合、あらかじめ明確な未来の文脈がない限り、現在における話と考えられますから、本来なら現在形で書いてもよかったものにわざわざ will をつけたのだから、<傾向・習性・能力>などを強調しているに過ぎないと考えられます。 また、Tom will be downstairs now. などという場合には、もちろん習性をあらわしているとは考えられず、推量、つまり may に近い働きをしていると考えられます。このようにしてみると will は、文脈に非常に左右されやすい助動詞だといえます。 助動詞でやっかいなのは、はじめから過去形がない場合、助動詞そのものを過去形にする場合と、助動詞のあとに来る原形のところを have + p.p. (完了形)にする場合とまちまちだということです。助動詞のそれぞれの意味によって、異なります。 しかし、下の表にまとめてみると、助動詞+ have p.p. の場合には「話者の見解」が現れている場合だということがわかります。(例)He must have been ill. 彼は病気だったに違いないーこれは明らかに、話者( I )の意見です。have p.p. はその内容が過去のことだったことを示しています。 これに対し、常に助動詞の後が原形のものは、助動詞自身が過去になろうとなるまいと、「できる」「しなければならない」「必要である」というように単なる「描写」に終わっています。
*印は、「時制の一致」によって過去形になることがあることを示す。 普段は同じように意味で使われていますが、「過去形」になると、助動詞と、単なる形容詞表現との違いが出てきます。下の違いでわかるように、助動詞とは、「話者の主観」が混じってくるものです。これがさらに「仮定法」へとつながります。
could は、このように過去形として「・・・できた」の意味が生ずるのは、「昨日」とか「先月」のような明確に過去を表す状況の場合だけで、時間が現在の文脈の中で使われるときは「仮定法」となります。その場合は「(何か条件がそろえば)泳げるだろう」という意味になります。 I wish I could swim! 泳げればいいのになあ。 He could be a father. (その気になれば)父親にだってなれるのさ。 SHOUD と OUGHT TO と HAD BETTER NEED USED TO DARE SHALL© 西田茂博 NISHIDA shigehiro |