元明天皇が710年、平城京を造営して以来、奈良の町は、都市計画、荒廃、神社仏閣の成立と衰退、近代都市への変身、と目まぐるしく変わってきた。1000年以上にわたるこの変化の集積が現在の奈良である。その痕跡は、街角に、路地に、人の訪れないひっそりした山間部に発見することができる。
それらを目撃したければ、歩くしかない。時速4,5キロのスピードなら、周囲のものをあまり見逃すこともなく捕まえることができよう。しかも、巨大な京都の町と比べ、奈良はずっとこじんまりしている。今回(2020年10月26日~30日)の歩きはその最初のものである。
信貴山・斑鳩
29日の出発はJR王寺駅・近鉄新王寺駅とした。午前中は信貴山、午後は法隆寺へと向かう。(➡は公共交通機関、➡は徒歩を示す。)
(01)近鉄新王寺駅➡近鉄生駒線➡信貴山下駅➡奈良交通バス➡信貴山門バス停➡朝護孫子寺境内➡空鉢護法堂➡迷い道➡信貴山バス停➡ケーブル跡ハイキング道➡信貴山下駅
(02)JR王寺駅➡JR法隆寺駅➡法隆寺前交差点➡法隆寺境内➡法輪寺➡法起寺➡コミュニティーバス➡法隆寺前交差点➡JR法隆寺駅
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GPS軌跡 |
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「信貴山(シギサン)」は信仰の山だ。生駒山と同じく、奈良県と大阪府との境にある連山の一部で、どちら側からもアプローチできる。信貴山下駅から奈良交通バスで急坂を登る。途中の高校までは“元気な“高校生ですし詰めだったが、それを過ぎると閑散とした車内で、そのまま終点の信貴山門に達する。コロナと平日が重なり、人がいないと思っていたが、さにあらず。次第に高齢の男女が集まってきた。ダム湖にかかるこの「開運橋」を渡ると境内に入る。 |
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「信貴山(シギサン)」地図 |
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開運橋の東には「信貴大橋」が見える。さっきバスで渡ってきたところだ。 |
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なんといってもここの名物は張り子の大寅であろう。聖徳太子が「物部守屋(モノノベノモリヤ)という豪族を攻めた時、寅の年、寅の日、寅の刻に毘沙門天が現れたのが起源なのだ。 |
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だからこのお寺、朝護孫子寺(チョウゴソンシジ)の中心人物はこの聖徳太子なのだ。 |
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毘沙門天の祀られている本堂まではまるで迷路のようだ。大小の寺院や神社、その他の施設が連なり、ちょっと気を許すと自分がどこにいるのかわからなくなる。本堂からそれまで歩いてきた道を見下ろしてみた。 |
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毘沙門天には観光客より、参拝客が絶えずやって来る。この本堂の地下には「戒壇」があり、そこを一巡できた。真っ暗な中を、右手を壁に押し付けながら進むのである。外は京都の清水寺のように眺めがよい。この後、山頂にある「空鉢護法堂」に達した後、戻ればいいのに、「奥の院」という看板に惹かれ、山を行けども行けども見つからずついに迷子になってしまった。GPSがなかったら、大阪府のほうまで歩いて行ったかもしれない。何とかもと来たバス停にたどり着く。「信貴山バス停」は廃線になったケーブルカーの駅だったのである。かつては生駒山のケーブルとともに客でにぎわっていた。そのケーブルの軌道あとは今では急坂のハイキングコースになっていて、そこを下って信貴山下駅に戻ったのである。 |
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「信貴山(シギサン)」パンフレット |
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信貴山下駅前広場に飾られている、かつてのケーブルカー。 |
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いったん王寺に戻り、JR関西本線で「法隆寺駅」で降りて、まっすぐ北に進む。始めは普通の焦点のある街並みだが、それも「法隆寺前交差点」までだ。その交差点のそばのソバ屋で、タケノコ入り蕎麦をいただく。 |
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交差点から先は雰囲気が一変して、数件のお土産屋とのどかな田園風景が広がる。途中は松並木。 |
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かつて法隆寺は訪れたはずだが、今は何も記憶がない。南大門にやってきた。 |
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中門のうしろにあの「五重塔」が見える。 |
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五重塔はこちらの角度からのほうが美しい。 |
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「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」との正岡子規の有名な句はここに石碑になっていた。だがこの石碑はすっかりすり減り、周りに説明する立て看板もなく、小さな池(鏡池)のほとりに立っているだけなので、観光客は気にも留めないで通り過ぎる。私だけだ。ガイドブックの助けも借りず、たまたま見つけてよかった! |
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斑鳩の里に来たからには「三塔」を見ていかねばなるまい。適当な交通機関もなく、ただひたすら田園の中を歩くのだ。秋の象徴、コスモスの花の向こうには「法輪寺」の三重塔が見える。 |
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そして最後はこじんまりした境内の「法起寺」。日本最古の三重塔だ。さて、こんなに田園奥深くまで来てしまって、どうやって戻ろうか?もと来た道を行けばいいのか?幸いこの地区のコミュニティーバスの停留所が法起寺のそばにあった。一日たった2本なのだが、運良く15分も待たずに100円で法隆寺前交差点まで乗れた。ラッキー!!! |
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「法起寺」パンフレット |
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「法起寺」拝観券 |
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