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第13章 副詞のはなし

  1. 副詞とは何か・どこにかかるか
  2. 副詞句を作る前置詞・準動詞(英)と助詞(日)
  3. 副詞節を作る接続詞(英)と接続助詞(日)
  4. 前置詞(英)と格助詞(日)を比較する

形容詞と副詞は“分業”しあっています。それぞれ名詞と、名詞以外とに専門の相手を決めているのです。形容詞とは違ったルールが英語でも日本語でも、副詞には設定されています。

副詞とは何か・どこにかかるか

はじめに

<副詞>というものは形容詞とよく対比されます。形容詞がつねに名詞との関係を念頭においているのに対し、副詞は名詞以外の単語と結びつきを持っていることが特徴的です。形容詞は相手になる名詞との結びつきを示すために、日本語では連体形、英語では名詞の前後におかれた位置や関係詞によってわかります。一方副詞は、日本語では「名詞+後置詞(助詞)」と「連用形」が活躍します。英語ではさまざまな語との結びつきを持つために特別な記号を持たず、そのため活用などはなく、位置も比較的自由に決まってしまいます。

例文1;それらは以来、市場においてきわめてわずかではあるが一貫した地位を占めている。They have had an extremely small but relatively consistent place in the market since then.

例文2;それらはわずかではあるが一貫した地位を占めている。They have had a small but consistent place.

例文3;それらは地位を占めている。They have had a place.

副詞は日本語でも英語でも、修飾することが主たる任務ですから、文の中では必須の要素ではなく、逆に真っ先に取り除くことのできる語でもあるわけです。たとえば主語と動詞の間にはさまっている副詞などもそれを取り除いたからといってその文の構造が崩れるわけではありません。むしろ贅肉がとれて中心の骨格部分が見えてきます。

例1から副詞的要素を取り去ると、例2のようになります。ですから長くて複雑な構造を持った文の場合、副詞部分をほかの部分と選り分けることによって、文全体の方向が見えてくる場合も少なくありません。これでさらに形容詞を抜くと例3のようになり、なにを言いたいのかよくわからなくなりますが。

一般に、単語としての副詞は動詞をもっとも頻繁に修飾します。これは名詞と同様、重要な要素である動詞もさまざまな説明を必要とするからです。次に重要なのは文全体に対する修飾、そしてそれによって他の文との結びつきを明らかにする働きです。これには「しかしながら however 」とか「だから so 」などが有名です。

英語における副詞は辞書、特に英英辞書をていねいに参照することによって個々の働きを理解できることが多いですが、<副詞句>の場合、一定のルールによって示されています。英語では4種類、つまり<準動詞Ving / Ved / toV >と<前置詞+名詞>の組み合わせがこれにあたります。日本語では動詞のあとに「・・・ので」「「・・・と」などの<接続助詞>をつけることによって副詞句にあたる働きをさせますし、<名詞+格助詞>の組み合わせは英語の前置詞の場合とよく似ています。

英語では<副詞節>というものも存在します。これは時や条件などを表す<接続詞>のあとに主語(助動詞+)動詞・・・を加えたものです。準動詞の場合と比較すると、主節の主語と異なっていてもかまわないし、英語での時制や仮定法を表すのに大活躍する助動詞をつけることができる点が副詞句とは異なっています。文が複雑にはなりますが、その分だけ明確さが増すわけです。

なおすでに述べたように、、英語の<接続詞>と日本語の<接続詞>は同じものではありません。前者に働きが近いのは<接続助詞>であって、後者は「そして」「しかし」「また」など、文のはじめに置かれる”独立語”であり、これは英語では however, therefore, so など、文と文の間の流れを示す副詞に該当します。

日本語での厳密な意味での<副詞節>は存在しません。というよりは、<副詞句>と<副詞節>は”融合”してしまっているといったほうがいいのかもしれません。それはすでに述べた接続助詞が英語における接続詞の代わりを果たし、主語が主節と異なる場合でも「彼女ガ通れるように(私は)よけましょう」にあるように、「・・・ガ」を使うことによって新たな主語(英語流に言えば<意味上の主語>)を問題なく示すことができるからです。しかも文末表現の「・・・マショウ」などによって時制や話者の意志やムードなどを示すこともできます。

どこにかかるかー副詞による修飾の問題点

例文1;3人の学生が図書館で勉強している。

例文2;学生が3人、図書館で勉強している。

日本語では副詞を置く場所は英語以上に自由です。ですから不注意に作られた文章ですと、いったいどこにかかっているのかよくわからないものまであります。例1のように「三人」という数詞が「ノ」によって、うしろにある名詞を修飾している場合には問題がないが、しばしばこの「3人」がその位置を離れ、例2のように「学生が」のあとにくる場合があります。

このような場合には、どんな名称をつけることもできましょうが、「学生が図書館で勉強している」という基本部分は不変であるところに「3人」が勝手に入り込んだということで”副詞的性格”を帯びたのだと考えることもできます。ただしその解釈はいろいろあって、たとえば「3人で」の「デ」が省略されたのだという考え方もありましょう(それならそうで副詞句だともいえます)。これらのもっとも納得のいく結論はいずれ、日本語学者たちが明らかにしてくれることでしょう。

どんな種類があるか

例文3;彼は慎重にダイヤルを回した。He cautiously turned the dial.

例文4;どうやら、彼が出かけるのを止めることはできないようだ。Seemingly, there is nothing we can do to stop him from going out.

例文5;彼女は私よりずっと背が高い。She is much taller than I.

例文6;彼はめったに会議に出席しない。He seldom attends the meeting.

すでに述べたように、副詞は自身の部分を取り除いても、文全体が破綻することはないわけです。例3では、「慎重に」がそれにあたります。「あわてて」「いそいで」「ゆっくりと」などはみな<様態(情態)>を表しています。物事が行われている様子や動きなどを表すもっとも基本的なタイプの副詞です。

例4では「どうやら」が副詞ですが、日本語では必ず、文頭に出現します。英語の場合は必ずしも文頭とは決まっていませんが、特定の動詞やその他の品詞を修飾するというよりは、文全体の雰囲気(ムード)や前文とのつながりをあらわすはたらきをしています。「残念ながら unfortunately 」「幸運なことに fortunately 」などがあり、これらは英語では<文修飾副詞>と呼ばれるものに該当し、日本語では<陳述副詞>などと呼ばれたりします。

例5の「ずっと」は比較表現の前についています。「とても」と同じく、動詞や形容詞の強さや大きさの度合いを示しており、<程度副詞>と呼ばれます。日本語では、本来副詞ではありますが「もうちょっとだ」のように、最後に「・・・ダ」につけてまるで名詞のように使うこともあります。また「なぞがはっきりした」のように「・・・スル・シタ」をつけて動詞化することもあります。

回数の多少を表す副詞は「頻度副詞」と呼ばれ、これは英文法で考えられている分類です。「時々 sometimes 」「しばしば often 」「いつも always 」などは日本語でもはっきりと、程度や様態と区別されている一群です。

日本語における副詞の位置の寛容性

副詞の位置は英語でもそうですが、入れる場所がはっきりと規則で決まっているものは少なく、かなり話し手の気分によって変わってくるようです。日本語の場合には、そのルールはほとんどないに等しく、単に「読みやすい」「わかりやすい」だけで決まる場合が少なくありません。つまり話し手や書き手の上手下手に左右される部分が大きいということです。

たとえば、「日本語でうまく該当する表現がないために」のなかの「うまく」を文頭に持ってきて、「うまく日本語で該当する表現がないために」としてもとがめられることはないですね。どうやら日本語では副詞をそれが修飾する動詞のそばではなく、文頭にもってくるのが好まれるようです。そうすると修飾関係が見えにくくなり、最初に現れた副詞の持つムードの振り回されやすくなります。英語では副詞が動詞を修飾する場合においては、動詞の前後、助動詞や be動詞のあと、などとほぼ決まっています。

否定とのかかわりあい

英語でも日本語でも否定文を作るときの副詞の役割は非常に大切です。多くの場合、否定語と副詞が特別な<呼応>関係を持っているのです。

例文1;それはまったくわかりません。I cannot understand it at all.

例文2;それはほとんどわかりません。I can hardly understand it.

例文3;それがすべてわかるわけではありません。I cannot understand all of it.

例文4;どんなにやってもそれはできない。I cannot do it in any way.

例文5;どこにもそれは見つからなかった。I cannot find it anywhere.

例文6;めったに買い物に行きません。I seldom go shopping.

例1では「まったく・・・ない」の組み合わせで<完全否定>をあらわしています。それに該当するのが英語の「not + at all 」です。程度の<弱否定>の場合は「ほとんど・・・ない」がつかわれ、not の代わりの hardly がその役割を果たします。

<部分否定>は例3に見られるように「(すべて)・・・なわけではない」の組み合わせが考えられます。英語の場合、形容詞・代名詞タイプの「 not + all/every 」、副詞タイプの「 not + always/necessarily 」の使い分けがあります。部分否定はいいかえれば、一部肯定(ある部分は・・・である)のことですから、他の表現も考えられます。

否定につく副詞の性質は例4のように<方法 in + ...way >、例5のように<場所 where >、例6のように<頻度>としてあらわれることがあります。日本語でも英語でも否定の性質はある特定の表現分野に限定することも可能なのです。

頻度や程度を表す副詞

英語では、単語としての副詞の中に一連の特徴を持ったものがあります。肯定から否定まで連続的に並べることができますし、これらは文中の位置が共通しています。

例文1;一度も合衆国に行ったことがない。I have never been to the Unites States.

例文2;彼は些細なことで腹を立てることが多い。He is often angry at trifle things.

例文3;助けてくれて大変ありがとう。Thank you very much for your help.

例文4;彼女は私よりずっと背が高い。She is much taller than I am.

例文5;彼女が病気だなんてまったく知らなかった。I little knew she was ill. / Little did I know she was ill.

回数を表す語は once, twice, three times などがあり、これらも副詞の働きをしています。代表的な頻度副詞には always, often, sometimes, seldom/rarely, never があり、しかもこの7つの位置も一般動詞の前、be動詞のうしろ、have動詞のうしろ、否定の場合に文頭にくれば倒置などと決まっています。これらは肯定、否定とそれぞれはっきりと分別されています。

代表的な程度副詞には much / some / a little / barely / hardly /rarely / little / not があり、これらは頻度副詞ほどの共通性はありませんが、very を伴うものもあれば、頻度副詞と同じく、否定の場合は文頭にくれば倒置を起こしたり、動詞や形容詞についてさまざまな修飾をおこなったりします。

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副詞句を作る前置詞・準動詞(英)と助詞(日)

英語の場合は、<副詞><副詞句><副詞節>の3種の形をとり、特に副詞句には<前置詞+名詞>と共に、準動詞である<to不定詞><現在分詞><過去分詞>の4種類があり、それぞれが機能を分業していますので、両国語をつきあわせるときには、その区分についての考慮が必要です。また、単語としての副詞は、単独で辞書に載っている副詞のほかに、形容詞に ly をつけたり、一部の時をあらわす名詞 (yesterday, today, tomorrow など)が転用されたりします。

これに対応する日本語では、単独の副詞のほかに、イ形容詞の連用形(遅い→遅く)、ナ形容詞の連用形(きれいな→きれいに)、動詞のテ形(急ぐ→急いで)、時の名詞(昨日、今日、明日)、数量詞(「お茶を一杯飲んだ」の「一杯」の部分)などの形でも表されます。そしてたとえば、様態のデ格(ひとり→ひとりで)のような助詞によるもの。日本語での副詞的表現のための助詞はさまざまな種類がありますが(「接続のことば」の章参照)、いずれも名詞のあとに続けることですべて共通しています。

前置詞+名詞

例文1;人々は村に住んでいる People are living in a village.

例文2;彼は1975年(に)東京にやってきた He came to Tokyo in 1975.

例文3;彼女は私をとがめるような目つきで見た She saw me in a blameful way.

例文4;彼らはその運動を確立しようとしたがだめだった They tried to establish the movement in vain.

(1)(2)(3)では「ニ」や「・・・デ」があらわすところを<前置詞+名詞>が場所、時間、様態などを示しています。ところが、(4)での in vain では副詞句ながら<結果>をあらわしていて、直訳すると「むなしくその運動を確立しようとした」となってしまい、このままでは日本語でうまく該当する表現がない特別なものです。

<前置詞+名詞>は文頭、文末におくことができますが、やっかいなことに、主語の名詞の直後におくと形容詞句だと思われてしまうのです。

例;People in a village fell ill. ある村の人々が病に倒れた。( in the village は形容詞句)

また、目的語の直後においたときは、副詞句なのか形容詞句なのかを文脈で判断することになります。( apples の前にある冠詞の有無が手がかり)

例;They ate apples in the village. 彼らはその村でりんごを食べた。( in the village は副詞句)They ate the apples in the village. 彼らは村にあるりんごを食べた。( in the village は形容詞句)

こういう場合、前置詞を in からほかのものに取り替えるなどして明確化をはかる必要が出てきます。

to 不定詞

例文5;私はフランス語を勉強するためにパリへゆく。 I go to Paris to study French.

例文6;お会いしてうれしいです I am glad to see you.

例文7;そんなことを言うなんて彼はきちがいに違いない He must be crazy to say such a thing.

例文8;彼の事務所に行ったが外出して不在だった I went to his office to find him out.

(5)(6)(7)(8)はそれぞれ「・・・するために」(行動+目的)、「・・・して」(感情+原因)「・・・とは・・・なんて」(判断+理由)、「~して・・・した」(行動とそれに続く自然な結果)などとよばれ、英語では<to不定詞の副詞的用法>が担当します(原則として主語が共通で、時間的にも連続している状況において、動詞にtoをつけて主文のあとにおくことになります)。それぞれの働きは主節との組み合わせによって生じた文脈で決まりますが、いずれの to不定詞も”弱い because ”としての意味が基本になっています。

分詞

例文9;雑誌を読みながら彼女は火の前に座っていた。 She sat before the fire reading the magazine. (←She was reading / read the magazine.)

例文10;遠くから見ると、その建物は立方体のように見える。 Seen from a distance, the building looks like a cube. (←The building is seen from a distance.)

例文11;大いに驚いたので彼は立ち上がれなかった。Greatly surprised, he could not stand up. (←He was greatly surprised. )

例文12;列車はその駅を出て正午には東京駅に到着する。 The train leaves the station, arriving at Tokyo at noon.(←The train arrives at Tokyo at noon. )

「・・・しながら」(同時進行)「・・・すると」(条件・共時)「・・・ので」(軽い理由)・・・して(成り行き、予定通り)などは<分詞構文>が担当します。原則として主語は共通です。主文と内容的に密接しており、あいまいな論理関係しか存在しないものに限られます。現在分詞か過去分詞にするかという問題があり、共通の主語をたてたときに能動態になるか、受動態になるかによってこれらを使い分けます。文頭、文末、 SVの間に挿入など、その位置は比較的自由です。

<わかりますか?>次の日本文の副詞句部分「」は英語にしたとき、分詞が適当でしょうかそれとも to不定詞が適当でしょうか?

(1)彼は「たくさんある靴を踏まないように」そっと歩いた。

(2)彼らは「新聞を読みながら」朝食をとる。

(3)「疲れたので」早く寝た。

(4)「その結果を知って」彼女は失望した。

(5)「さよならも告げずに部屋を出ると」、私はまっすぐカフェに向かった。

解答例

(1)<否定目的>をあらわしているので不定詞が適当。ただしいきなり不定詞の前に not をつけることはできず、so as not to か in order not to のようにする。例;He walked softly so as not to step on shoes all around him.

(2)<同時進行>なので、分詞が適当。ただ、問題なのは「食べながら読む」と「読みながら食べる」との違いである。それぞれの場面を想像してみよう。例;They have breakfast (while) reading a newspaper.

(3)<(弱い)理由>なので分詞が適当。tired が形容詞なのでその前に being が省略されていると考える。例;Tired, I went to bed earlier.

(4)「知る」ことが「失望」の<原因>となっているので不定詞。例;She was disappointed to know the result.

(5)話の流れが<成り行き>として描かれているので分詞が適当。ただし、「出る」の行為が完了した後に「向かう」が引き続いて起こるため、<分詞完了形 having p.p. >にするのが望ましい。例;Having left the room without saying good-by, I walked directly to the cafe.

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副詞節を作る接続詞(英)と接続助詞(日)

すでに述べたように日本語では副詞句と副詞節は融合しています。日本語の接続助詞の中には、英語での副詞節(理由・譲歩・条件・様態・時など)に使われる接続詞に該当するものがいくつかありますが、その位置関係に注目してみましょう。

例文1;「雨が降っているので試合は中止だ The game is called off because it is raining./ Because it is raining, the game is called off. 」

日本語の文章では、「雨が降っているので」と「試合は中止だ」の二つに分離することができます。前者は中止することの<理由>を表しています。例1での理由を表す接続助詞は「・・・ノデ」ですが、それは理由になる文の最後についていることに注目しなければなりません。「雨が降っている」だけでは単なる一つの文ですが、最後に「・・・ノデ」がついてはじめて理由を表すことになります。

これを because it is raining と比較してみますと、It is raining だけならただの文、ところが前に接続詞 because がつくと、これが<理由を表す副詞節>ということになります。 ですから文につく接続のための語の位置は日英まるで逆なわけです。これは次項に述べる前置詞と助詞(後置詞)の位置関係が逆なのと共通しています。

副詞節というのは先頭に接続詞がついている限り、中心になる文<主節>の前に置いたりうしろに置いたりすることも可能です。日本語でも「試合は中止だ、雨が降っているので・・・」とか「試合は中止だ、なぜなら雨が降っているからだ」などの多様な表現があります。これらも英語ではほぼ because に相当します。どの形を用いるにしても「主文」の部分と「理由」の部分とを意識して正しく使い分けている必要があります。

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前置詞(英)と格助詞(日)を比較する

格助詞は「接続のことば」でも述べたように、後置詞の一種です。「ヲ格」「ニ格」「カラ格」「デ格」「ガ格」などがあり、その複合形の「デハ、ニハ、カラハ」なども存在します。まずは副詞句において、前置詞と格助詞の似ている点、まったく違っている点にそれぞれ注目する必要があります。

例文1;「飛行機で沖縄に旅行しました I made a trip to Okinawa by plane. 」

ここでは「飛行機で」の「・・・デ」と「沖縄に」の「ニ」に注目します。いずれも名詞の後に来て<方向><手段>などの副詞的表現を示しています。

英語の場合には格助詞の働きのうち、副詞句や形容詞句を受け持つのが前置詞です。その位置は格助詞とはまったく逆で名詞の前につけ、例1ではそれぞれ「by....」「to...」となっています。

例文2;イタリアから手紙が来た。I got a letter from Italy.

例文3;イタリアからの手紙 a letter from Italy

日本語では、「・・・カラ」だけでは例2のように副詞句になりますが「・・・カラノ」というように「ノ」を追加すれば、例3のように形容詞句も作れます。英語では適当な前置詞が見つかれば、そのまま名詞の後に直結してできあがりで、形容詞句か副詞句かは全体の構造しだい、というシンプルな構造になっています。

ところで格助詞は前置詞と違い、副詞的表現だけでなく主語や目的語を示すのにも用いられます。このため日本語では主語や目的語までも、副詞のような扱いを受けているといっても過言ではなく、主語や目的語が不可欠であるという英語での絶対性が感じられません。ということは、適切な使い方の格助詞がひとつの名詞のうしろについている限り、その組み合わせは文中で比較的自由に置き換えることができることを意味します。

たとえば「彼はフランス語を話す He speaks French. 」をあげてみましょう。ここでは「彼は」は<主語>、「話す」は<動詞、ただし他動詞か自動詞かはあらかじめ決まっていない>、「フランス語を」は<目的語>と名づけることにします。これらを利用して、「彼は+話す+フランス語を」や「フランス語を+彼は+話す」などというように、多少不自然な文体であることを我慢すれば、全部で6通りの組み合わせが可能です。

また、日本語では一つの格の働きを複数の格助詞が受け持つことがあります。「彼はフランス語が話せる He can speak French. 」は「彼はフランス語を話す」から変形したものと考えられます。したがって、「フランス語が」の「ガ」は「フランス語を」の「ヲ」と同じ格(目的格)となりますので注意が必要です(「接続のことば」の項参照)。

同様に、「彼はフランス語に興味がある He is interested in French. 」をとりあげてみると、「彼はフランス語を話す」の語順に当てはめて考えれば「フランス語に」の「ニ」も目的格を示していることがわかります。

このため、「ヲ」「ガ」「ニ」はいずれも格助詞として究極的には目的格を示すことができることがわかります。そしてそれぞれが異なったニュアンスを表現しているのです。これらは英語でもやはり目的語として働いているのがふつうです。speak のあとの French はもちろん目的語ですし、interested in の後は前置詞の目的語として French がついているのです。

このように、英語の前置詞は副詞句と形容詞句を作るだけなのに対し、日本語では格助詞が活躍する範囲ははるかに広く、形容詞句と副詞句も含めて名詞のかかわるところすべてに顔を出しているのです。

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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